第30話 星屑との邂逅
一緒にテレビ出演して、星野ともかなり仲を深めることができた。
これでヒロインの三人全員と、下の名前で呼び合う関係になったわけだし、攻略は順調だと言える。
ただ、ここから恋愛関係に進むには、何かきっかけが必要だろう。
そのためのイベントがこの先控えていたはずだけど、どんな内容だったかな⋯⋯。
午後九時を少し過ぎた頃、自室のデスクに座り、そんな風に物思いに耽っていると、机上に置いていたスマホが通知を知らせるバイブ音を鳴らした。
手に取って画面を見て確かめると、紗耶からレインのメッセージが送られてきていた。
紗耶:怜人先輩、こんばんわ。今時間ありますか?
レイ:ああ、ちょっと考えごとしてただけだからな。
紗耶:それじゃあ、お伝えしたいことがあるんですけど、先週末に『カキヨミ』に投稿した私の新作恋愛小説である『星屑との邂逅』が、なんと恋愛部門で週間1位を獲得したんですよ!
普段感嘆符なんて使わないのに、よっぽど嬉しかったんだろう。
レイ:おお、それは凄いな!
紗耶:過去最高の評価です! これも怜人先輩が色々と意見を出してくれたおかげです。本当にありがとうございました。
レイ:俺もいい結果が聞けて嬉しいよ。
紗耶:ただ書籍化のオファーをもらうには、まだまだ評価の伸びがほしいですからね。これからも終盤に向けて作品をブラッシュアップしていかないといけません。
レイ:意識が高いな。でも現状に満足せずに、向上心を持って取り組むのは大事だもんな。頑張れよ。
紗耶:はい。それで今一つ大きな悩みがあって、物語の結末で、主人公とヒロインの関係をどうするかで迷ってるんですよね。
レイ:中盤までの展開では、主人公とヒロインは両片思いの状態だったよな。
紗耶の新作恋愛小説である『星屑との邂逅』は、こんな感じのストーリーだ。
ある日の夜、天体観測好きな高校生の少年が、夜空に一筋の流れ星が落ちるのを見る。
そして、その翌日に学校で、主人公のいるクラスに一人の転校生がやって来る。
その少女は、どこかミステリアスな雰囲気を醸し出して孤高の存在となったのだけれど、ある日、たまたま屋上で主人公とその少女が二人きりになった時、「私はあなたがあの日の夜に見た流れ星なの」とその秘密を明かされる。
それから二人の距離はだんだん縮まっていきーーというのが、現在投稿されている中盤までの流れになっている。
紗耶:はい。そのままラストまで引っ張っていって、そこで主人公が満を持してヒロインに告白するんですけど、その後、それを彼女が受け入れて二人が固く結ばれて幸せになるのか、彼女の衰えていた異能の力が回復して、涙ながらに主人公を拒絶して故郷の星に帰ってしまうのか、その二択で迷ってるんです。
レイ:そうか⋯⋯紗耶はこの作品は、『かぐや姫』をモチーフにしたって言ってたよな?
紗耶:はい、そうです。
レイ:『かぐや姫』では、最後にかぐや姫は迎えが来て月に帰ってしまうわけだけど、俺はあの結末、寂しい終わりかただから、あまり好きじゃないんだよな。
紗耶:ということは、怜人先輩としては、主人公とヒロインは幸せに結ばれて欲しいということですか?
レイ:ああ。やっぱり俺は、どんな物語でもハッピーエンドが好きだな。
紗耶:そうですか⋯⋯。
レイ:まあ俺の意見は参考程度にとどめておいてくれよ。大事なのは、作者の紗耶がどうしたいかだからさ。俺はどちらを選択しても、その意思を尊重する。
紗耶:分かりました。まだ完結までは時間がありますから、よく考えてみますね。




