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第29話 テレビ撮影

 

 星野に相談を持ちかけられてから数日が経ち、その間、テレビ出演に際しての注意事項等をネットで調べながら準備をし、休日となった今日、ついにテレビ撮影が行われることになった。


 撮影場所である美容院『AURORE』には、朝からカメラや照明、レフ板等の撮影機材が盛り込まれ、スタッフ達が撮影のための準備に忙しく動いている。


 本来なら今日は営業日のはずなんだけど、特別に午前中だけ貸切りにしてあるようだ。


「二人とも、気持ちの準備はできた?」


 撮影が始まるまで、待合所で待機していた俺と星野の元に一人の女性がやって来て声をかけた。

 彼女が、星野を気に入ったという番組のディレクターである。

 名前を加納皐月(かのうさつき)といい、年齢は38歳のアラフォーで独身。

 ベージュのパンツスーツをビシっと着こなし、まさに仕事ができるバリキャリといった感じで、俺の母さんにちょっと似ている印象を受ける。


「はい。と言っても俺はただ座ってちょっと会話するだけなんですけどね」

「それでもテレビに映るって思ったら緊張するでしょ〜。私なんて既に手汗でびっしょりだよ〜。て撮影中に手が滑って変なところ切っちゃうかも〜」

「ええっ!? それは勘弁してくれよ。出血でもしたらスプラッタな映像になっちまうぞ」

「あはは。それだけ冗談が言える余裕があるんだったら大丈夫そうね」

「加納さん、撮影準備が整いました」


 三人で会話していると、スタッフが告げに来た。


「それじゃあ、そろそろ撮影をはじめましょうか。二人とも、よろしくね」


 そうして俺達はスタンバイし、撮影が始まった。



 ──────



「はい、オッケーでーす。お疲れ様でしたー」


 スタッフのその言葉で、1時間強程の撮影は締めくくられた。


「いやー、良い絵がとれたわ。二人とも、自然体でとても雰囲気が良かったわよ。素人なのに、会話で一度も噛むこともなかったしね」

「いやー、内心一杯一杯でしたよ」

「私もカットだけで精一杯で、何話したかは全然覚えてないよ〜」

「あら、謙遜しなくても良いのよ。私二人には、芸能界でもやっていけるだけの可能性を見たもの。何より二人とも画面映えするイケメンと美少女だからね。どう? あなた達さえ良ければ、私のツテを使って芸能事務所に売り込んだりもできるけど」

「いえ、その申し出はありがたいんですけど、俺には他に将来の夢がありますので」

「私も美容師になる以外は考えられません〜」

「そう。まあ仕方ないわね。この番組も、若者の夢を応援するって趣旨だし、無理強いはできないわ。でももし気が変わったらいつでも言ってね。名刺を渡しておくから」


 そうして無事にテレビ撮影は終わり、それから数日が経った日の夕方。


 テレビで、『アオハルの輝き』の放映が始まり、俺と星野は、俺の家で一緒にそれを観ていた。


 麻衣も一緒に観たがっていたけれど、部活があるためあえなく断念し、録画で我慢することになってブツブツと愚痴っていた。


「うわー、何かテレビの画面に自分が映ってるのを観るのって、凄く恥ずかしいね〜」


 リビングで、テレビの前のソファに俺と並んで座っている星野が、赤らめた顔を両手で隠す。


「違和感がハンパないよな」

「私変じゃない〜⋯⋯?」

「心配しないでも、いつも通りの美少女っぷりだぞ」

「び、美少女だなんて〜⋯⋯もう、からかわないでよ〜」


 星野が頬を膨らませて、ポカポカと二の腕を叩いてきた。

 全然痛くなく、こそばゆいだけだけど。


「何だよ、この前ディレクターの加納さんにも散々褒められてたじゃないか」

「大人の女の人に褒められるのと、同年代の男の子に褒められるのは全然違うよ〜」

「そういうもんか?」

「そういうものなんです〜」


 そんな風にじゃれ合いながら番組を観て、十五分程で放映は終わった。


「俺の出番、思ったよりも短かったな」

「私のインタビューに多く時間を割いてたみたいだね〜。おかげで顔のアップが映っている時間が長くて余計恥ずかしかったよ〜」

「まあ主役は星野なわけだからな」

「でも、テレビ撮影されながらカットするなんて経験、そうそうできるものじゃないからね〜。スキルアップにも繋がったと思うし、これで夢にまた一歩近づけた気がするよ〜。だからありがとうね吾妻君、今回無理な頼みを引き受けてくれて〜」

「俺は星野の夢を応援するって決めたからな。その助けになることなら何でもするよ」

「⋯⋯ねぇ、吾妻君、葵ちゃんや紗耶ちゃんみたいに、私のことも、下の名前で呼んでくれないかな。私吾妻君ともっと仲良くなりたい」

「分かったよ、陽菜。これで良いか?」

「うん。私も吾妻君のこと、怜人君って呼んでもいい」

「ああ、好きにしてくれ」

「それじゃあ怜人君、これからもよろしくね〜」

「おう」




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