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第12話 嘘で塗り固めて

 

 Side:一樹



「クソッ!」


  ムシャクシャした俺は、そう悪態を吐きながら、給水塔から伸びているダクトを蹴り上げた。


  鈍い痛みが爪先に返ってくる。その痛みがさらに苛立ちを加速させる。


 ここは周囲をフェンスで囲まれた屋上の一角。

 本来なら屋上は、生徒の立ち入りが禁止とされているのだけれど、屋上に通じるドアの鍵が壊れているため、教師の目を盗んでここで昼食を摂るカップルなんかもいる穴場スポットだ。


  しかし今日は他に誰もいないようで、屋上には時折吹く風の音が鳴るだけだ。


「皆して吾妻吾妻って⋯⋯あんな不良のどこが良いってんだよ⋯⋯どうせその内ボロが出てまた元通りになるに決まってる⋯⋯ああ、それにしてもムカつくな⋯⋯陽菜はあいつと仲良さげにしてるし葵ははあいつの肩を持ちやがるし⋯⋯あいつのせいで何もかも上手くいかねぇ⋯⋯吾妻⋯⋯あいつ死ねば良いのに⋯⋯」


  俺が吾妻への呪詛をまき散らしていると、屋上のドアが開いて、二人の男子生徒が姿を現した。


「あれ、誰かと思えば一樹じゃーん」

「マジだ。こんなとこに一人で来て何してたんだ?」


  そう声をかけてきたその二人は、俺のゲーム仲間である上島と川田だ。


「お前らか⋯⋯ちょっと苛つくことがあってここで頭冷やしてたんだよ」

「お前もか? いやー実は俺らも同じでさ。クラスの女子たちがあの吾妻のことをイケメンだなんだって褒めちぎってばっかりいやがって、聞いてるだけでイライラしてきたから、ここに避難してきたってわけ」

「お前らのクラスでもなのか⋯⋯」

「なんであんなやつがチヤホヤされるんだろな。前までは怖がって避けてたくせに、ちょっとイメチェンしたからって急に手の平クルーだもんな。女子って皆馬鹿ばっかりなんかな。見る目なさすぎ。あんなのただの雰囲気イケメンでしかないだろ」

「それな。そういや一樹、例のお前が付き合ってるっていう彼女たちの反応はどうなんよ。もしかして浮気されてたりとか」


  上島のそのからかい混じりの言葉を聞いて、俺は返答に困った。


  こいつらには以前、ついノリで陽菜と葵と付き合ってるって言っちゃったんだよな。


  この国は一夫多妻制だから、二人と同時に付き合ったりしていても何の問題もないけど、実際にはあいつらとは仲の良い友人止まりだ。

  もちろん二人とも美少女だから、義妹の紗耶とも合わせて、ゆくゆくは三人と付き合いたいなんて考えているんだけれど、断わられて関係が気まずくなるのが怖くて、中々一歩を踏み出せずにいる。


  それにさっきはついカッとなったとは言え、葵と言い争って手まで上げようとしちまったし、そのうち仲直りはできるだろうけど、しばらくは様子見だな。


  それにこっちから謝るっていうのも何か面白くない。


  だって俺は、間違ったことは何も言ってないんだから。


  うん。将来尻に敷かれないためにも、向こうが折れるのを待った方が賢明だな。


「まああいつらも少しは興味持ったみたいだけど、浮気はされてねえよ」

「そうだよな。あの二人はお前にぞっこんって話しだったし」

「ホント羨ましいよなー。あの可愛い星野さんの手作り弁当を毎日食べられるんだろ? 俺も一度でいいから美少女の作った弁当を食べてみてーよ」

「そんなに食べたいなら食べさせてやろうか?」

「え? い、いいのか?」

「まあ一度だけなら、あいつを誤魔化すのも簡単だろうからな」

「ま、マジかよ⋯⋯さすが一樹! 神!」

「その代わり今度ゲームでレアアイテムが出たら、優先的に俺のものな」

「ああ、それくらい安いもんだって!」

「良かったなー川田。こんなチャンス人生でもう二度とないかもしれねーぞ」

「ああ、できるだけゆっくり味わって食べることにするよ」

「そうしろそうしろ」


  そんなくだらない会話をしながら俺たちは笑いあった。


  良かった。こいつらのおかげで、さっきまでの沈んでいた気持ちがだいぶ上向きになった。


「ところで一樹。お前彼女たちと付き合い始めてからもう結構経つだろ? 関係の方はどこまで進んだんだよ。そこんとこ聞かせてくれよ」

「おおっ! それは確かに気になるところだな。で、どうなんだよ。さすがにキスくらいは済ませてるよな」

「あ、当たり前だろ。キスどころか毎週のように二人のどっちともヤリまくりだよ」


  自慢話ができて気分が良くなっていた俺は、ついノリでそんな口からでまかせを言ってしまった。

 もちろん二人とはキスもまだどころか、手を繋いだことさえない。


  「うほっ! マジかよ。あの美少女たちが乱れるとこなんて想像もできないな!」

「くぅーっ! 羨ましすぎるぜおい!」

「悔しかったらお前らも早く彼女つくるんだな」


 と俺が上から目線で言ったその時、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。


「ん? お前ら以外にも誰か屋上に来てたのか?」


「風でドアが煽られて勝手に閉まっただけだろ」


「そんなことより、さっきのエロ話の続きしようぜ。それで初体験の時はどんな感じだったんだよ。やっぱゴムは使ったのか?」


「ああ、そうだな。さすがに避妊はちゃんとしておかないとな」


  その後も俺は、二人からの問いかけに、嘘だとバレないように、持ちうる性知識を総動員させて答えていった。




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