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第11話 憤る主人公

 

  Side:星野



 午前中の授業が終わり、昼休みになった。


 私はいつものように、かず君と葵ちゃんと机を合わせて座り、リュックから作ってきたお弁当をとりだした。


「はい、これかず君の分〜」


 そう言って手渡したけれど、かず君はブスッと不機嫌そうな表情を浮かべたまま、お弁当の包みを開こうともしない。


   そう言えば、今日は他の休み時間中もほとんど喋らなかった。


 どうしたんだろう。

 お腹が痛いとかかな。

 だったら保健室に連れて行ってあげないと。


「かず君どうしたの〜? お弁当食べないの〜? もしかしてどこか具合いでも悪いの〜?だったらーー」

「お前なんで朝あんなやつとたのしそうに話してたんだよ」


  私が心配して声をかけると、かず君はそれを途中で遮ってまるで詰問するように強い口調で尋ねてきた。


「え? あいつって⋯⋯もしかして吾妻君のこと〜?」

「ああ、そうだよ。他のクラスのやつらもあいつがちょっとイメチェンして見た目がましになったからってチヤホヤしやがって」

「一樹、あなたまさか彼に嫉妬してるの⋯⋯?」


 葵ちゃんが呆れた表情で冷めた視線をかず君に向ける。


 図星だったのか、かず君はギッと奥歯を噛み締めて悔しがる素振りを見せると、必死に反論した。


「そんなんじゃねーよ。俺はお前らを心配して言ってやってるんだ。葵も仲間に入ってお喋りしてたみたいだけど、ホントに分かってんのか? イメチェンして、ちょっとばかり見映えが良くなったっていっても、相手はあの不良の吾妻なんだぞ? 警察沙汰まで起こしたことがあるって噂されてるようなやつと仲良くしようなんてどうかしてる。何か起きてからじゃ遅いんだぞ? 葵も前は不良は大嫌いだって言ってたじゃないか」

「ええ、その気持ちは今でも変わってないわ。真面目に生きている人たちが、ごく一部の心無い不良たちのせいで理不尽に虐げられるなんて馬鹿げてるもの」

「だったら吾妻とはもう関わらないようにしろよ」

「それはできない相談ね」

「なんでだよ」

「今の彼は不良じゃなくて真面目な善人だもの。過去の自分を恥じて前向きに変わろうと努力している人を私は応援してあげたいわ」

「なんでそんなことがお前に分かるんだよ。変わろうとしてるのだって、実はフェイクで、裏では良からぬことを企んでるかもしれないだろ」

「言いがかりも良いところね。努力して輝いている彼よりも、疑心暗鬼に振り回されて八つ当たりしている今のあなたの方が、私の目にはよっぽど醜く映ってるわよ」

「なんだと!」

「ちょっとかず君、やめてよ!」


 それまで二人が言い争うのをオロオロしながら見ていた私だったけど、激昂して葵ちゃんに暴力を振るおうとしたかず君の腕を掴んで、必死に止めようとした。


「言葉で言い負かされたからって暴力に訴えようとするなんて最低ね。まさにあなたが嫌っている不良の行為そのものよ」

「くそっ!もういい!」


 かず君はそう捨て台詞を吐くと、勢い良く席を立ち、そのまま教室を出て行った。


「かず君⋯⋯」


「陽菜が愛情込めて作ってあげたお弁当をほったらかしにして行くなんて呆れたものね」


 葵ちゃんが冷め切った口調で罵る。


「私はしばらくの間、一樹とは距離を置くことにするわ。陽菜、あなたも自分の身の振り方について少し考えてみた方が良いわよ」



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