おばあさんとまゆの五月の花かご
むかしむかし、小さな村のはずれに、おばあさんと孫のまゆちゃんが住んでいました。
まゆちゃんは小学校二年生で、好奇心いっぱいの女の子。
おばあさんは優しくて、昔話や自然のことをたくさん知っていました。
五月のある晴れた朝、おばあさんがまゆちゃんを呼びました。
「まゆ、今日は特別な日だよ。五月の花かごを作りに行くんだ」
まゆちゃんは目をキラキラさせて、「花かご? どんなの?」と聞きました。
おばあさんはにっこり笑って、「五月の花にはね、幸せを呼ぶ魔法があるんだよ。一緒に森へ行こう」と答えました。
二人は手をつないで、近くの森へ出かけました。
森は五月の緑に輝き、鳥のさえずりが響いていました。
おばあさんはまゆちゃんに、花かごに必要な花を教えてあげました。
「まず、すずらん。白くて小さくて、優しい香りがするよ。これは『希望』の花」
まゆちゃんはすずらんを見つけて、そっとかごに入れました。
次に、おばあさんが指さしたのは、薄紫の菖蒲の花。
「これは『勇気』の花。どんな時も強く立ち上がる力をくれるよ」
まゆちゃんは菖蒲を摘みながら、「私も勇気欲しいな! 学校の発表、ドキドキするもん」と言いました。
おばあさんは笑って、「大丈夫、まゆならできるよ」と頭をなでました。
最後に、二人はたんぽぽの綿毛を見つけました。
「これは『夢』の花。風に飛んで、遠くまで願いを運ぶんだよ」とおばあさん。
まゆちゃんは綿毛をふーっと吹いて、「大きくなったら、絵本を作る人になりたいな!」と叫びました。
おばあさんはうなずき、「その夢、きっと叶うよ」とつぶやきました。
家に帰ると、二人は集めた花で小さな花かごを作りました。
すずらん、菖蒲、たんぽぽの綿毛が、色とりどりに輝いていました。
おばあさんはかごをまゆちゃんに渡し、「この花かごはね、まゆの心の宝物。希望と勇気と夢を、いつも忘れないでね」と言いました。
その夜、まゆちゃんは花かごを枕元に置いて眠りました。
夢の中で、すずらんが歌い、菖蒲が剣のように光り、たんぽぽの綿毛が星になって空を舞いました。
まゆちゃんは目を覚ますと、なんだか心がぽかぽかしていました。
それから、まゆちゃんは学校の発表会で大きな声で話せたり、絵本のアイデアをノートに書き始めたりしました。
おばあさんはそんなまゆちゃんを見て、そっと微笑んでいました。
五月の花かごは、まゆちゃんの心に、ずっと魔法をかけ続けたのでした。
おしまい。
VTuberをやらせていただいています、言乃葉 千夜と申します。
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