支えたい気持ち 郁side
1時間ぐらいして、お風呂から足音が聞こえてきた。
スウェット姿の凛梨が戻ってきたのだ。
「……中村くん、上がりました。ありがとうございます」
「…………ん、布団敷いといた。」
どうしたら、凛梨は自然と笑うだろう……あの時の笑顔を俺はまたみたいと思った。そう思ったら口走っていた。
「凛梨お前、お前は笑顔が似合うんだから笑え」
あいつは少し戸惑ったような顔をしていた。それもそうだろうな。ごめんな、こんなの俺のワガママだ。
けど見たいんだよ……お前が笑うところを。
「え……そんな、笑えと言われても急には無理ですっ」
「ゆっくりでいい、今ここにアイツらは居ないんだから」
アイツらと言うのは、凛梨の家族の事だ。
何をされてきたかなんてコイツの顔を見れば分かる。
凛梨はびっくりした顔をしていた。話してないしな……
俺はいつも後悔していた。もう少し早く声をかければと。
「っ……!?な、何で家族の事まで……」
「言ったろ、お前の事前から知ってたって。だから家族と一緒の時も見かけるんだよ」
「そ、ですか……」
泣いてもいい、辛いなら辛いとそう口に出して頼って欲しかった少しでも心に余裕を与えたいから。
……ふと凛梨の方を見た。俺は今どんな顔をしているんだ……こんな顔を見たいわけじゃないのに。情けない。
「……気にかけてた、けど声をかけて迷惑かける気がして。ごめんもっと早く……声かけるべきだった」
「そ、そんなこと……ないです!わた、しはっ……すご、く 助かった……」
あぁ……良かった。声を掛けてと思っていたら、不意に
凛梨が抱きしめていた。
「っ!?り、凛梨?」
「……中村くん……これからもし、大丈夫なら一緒寝たい……」
凛梨の優しさが体を伝って分かってくる、それと同時に辛かったんだろうなとも伝わってくる。
「ぇ……」
「無理なら……大丈夫です。ごめんなさい……」
だけど俺はまだ風呂に入ってないから、"いいよ、けど先にシャワー浴びてくるから"と伝え待ってもらった。
数分して、お風呂から出て凛梨の元へ向かった。
「お待たせ、今日はお互い疲れてるだろうから寝よう。おいで凛梨」
凛梨の気持ちを汲んで今日から一緒に寝ることにした。おやすみ凛梨。