優しい匂い
家事を終え、うたた寝をしていたらいつの間にか夕方になっていた。
起きると、私に布団がかかっていて傍で侑君が私を包む様に抱きしめながら寝ていた。
優しくて、心に安心を与えてくれるそんな匂い……時折この温もりに涙が止まらなくなる。
不安、寂しさ……そんな感情を取り払って安心と泣いてもいいんだよと諭してくれる感じ。
私に無いものを補ってくれる人が居たんだって教えてくれた。
また、ポロポロと涙が零れ落ちてく……。
私は、侑君の頭を撫でて"私を見つけてくれてありがとう"と呟いた。
侑君が起きないようにそっとベッドから降りてコーヒーを注ぎベランダに出た。
「……空が綺麗……上なんて見ること無かったからなぁ……」
自嘲を零し、コーヒーをすすった。
上を向けば、罵られるんじゃないかと怖かった。もう……上を向いて進めるはずなのに。
「なら、これからいつでも空見たり前向いて生きてばいい。傍にいつも居てやるから泣きたきゃ思いっきり泣いて泣いて俺と一緒に笑お」
後ろから声が聞こえて振り向くと少し寂しそうだけどフワリと笑ってる侑君がいた。
"起きたら凛梨が居なくて焦った"と話してくれた。
「疲れてるんだろうなって思って、そっと抜けたの。ごめんね」
「あぁ、疲れてるけど凛梨が作った夕食と寝顔みると癒される」
「それ、ちょっと悪趣味なんじゃ……」
あまりまじまじと見られたくないな……。可愛くないから。
「俺が見たいと思うから見てんだよ。いつも夕食作ってくれてありがとうな、元気ではたらける」
「んーん、侑君が残さず食べてくれて私も幸せだしこちらこそありがとう!それと……さっきの言葉とても嬉しかった。"泣きたきゃ思いっきり泣いて泣いて"って言葉……」
「本音だからな、俺の。そこに俺がいるなら俺も幸せなんだよ……」
自分の隣に誰かいる。それは温もりと幸せを分け合えるということ。
侑君はそれをちゃんと教えてくれる人。
「…………侑……」
「……え……」
ふふっ……びっくりしてるし少し顔が赤い。
「ずっと、君付けで呼んでたから……ふと呼び捨てで呼んでみた」
「……っ、すごい嬉しいっ」
真っ赤な顔で私に飛びついてきた。
初めてだな、こんな侑を見るのは。
もしかしたら甘えたかったのかもしれないと思った。
下を向いているといつも暗いまま、上を向けば……綺麗な空と景色。




