世界の果ての正体
滝だ。海に滝がある。
魔王城付近まで来た俺達は浮遊術式を使って城をスルーし、海の上をしばらく進んでみた。結構な高度を飛んでいるから見えたのだろう。
海に滝があった。それもデカい円状のだ。海に巨大な穴が空いていると言った方がしっくりくる。
「アビス」
黒がとんでもないことを呟く。
ちなみにだが、黒は現代魔法を使えない。体質で大気中の魔素に干渉出来ないためだ。故に俺が飛ばしてやっている。なんならあの大穴に放り込むことだって出来る。やらないけどな。もっとも黒なら死にはしないだろうが。
「低空から見たら確かに世界の果てだね」
短めの赤髪を雑にかきあげながら臙脂が言う。
おそらくその通りだ。これを初めて見たやつは船か何かで来たのだろう。下からでは穴とは気づけないほどの大きさだ。
いくつか疑問が浮かんだが、今は確かめないでおく。その方がいい気がした。
「良かったな黒。これが世界の果ての正体だ」
俺は言いつつ思う。正体なんて一切分かってないけどね。
帰りに魔王城に寄ると内部は魔王軍連中で満ちていた。魔王を討伐するまではほぼ誰もいなかったというのに、どうなっているのか。行きは上空を飛んで行ったので気づかなかった。
俺達は普通に囲まれていた。




