魔王
「臙脂くん。交代してよ迎撃大臣」
魔王城行きの馬車の中寝っ転がったまま黒が言う。
「いや、俺そういう気分になれなくて」
臙脂のやつ、まだ引きずってるのか。女々しいヤツめ。
「あれ、臙脂くんの友達じゃないでしょ。同種ってだけじゃん。種族じゃなくて人を見て友達になったんでしょ」
「……確かに、その通りだわ」
黒がダラダラしながら普通のことを言うと臙脂は立ち上がり馬車から飛び降りる。とほぼ同時に馬車へと戻ってくる。空を見上げるとバラバラになった魔種が降ってくる最中だ。
「はっや、さすが人類最強」
「昔の話だけどな!」
これはすごい。黒の言葉で臙脂が元気を取り戻した。俺もちょっとちゃちゃを入れてみる。
「こないだ負けて、攫われたけどな」
「負けてねーよ。小便してて反撃できなかっただけだし。それに思ったんだよ攫われた方が楽に魔王に会えるんじゃないかってさ」
臙脂は調子よく返してくる。こうなればもう安心だろう。最高のエンドロールに一歩近づいたぞ。上々だ。
あとは人種の今後の問題だ。
どうしたものか。何も思いつかない。魔王を生きてることにするとか。さすがに無いか。




