英雄(チャンピオン)
「ブラックさん、お疲れ様です。」
野営の準備が整ってから僕はブラックさんに声をかける。正確には野営の準備が整って、探し回ったあげく疲れて一息ついていたらブラックさんがやってきたので、こちらから声をかけたのだ。
この人、野営の準備をサボって魚を捕っていたらしい。でっかいランスの先にそこそこの大きさの魚が4匹刺さっている。
「おつかれー、魚たべる?」
「いえ、結構です。すみません、聞きたいことがあるのですが」
ブラックさんに魚を食べるか聞かれたけど、そんなことより話したいことがいっぱいある。
「そっか。じゃあ」
「ちょちょっ、待ってください。聞きたいことがあるんです」
何この人。一瞬でどっか行っちゃいそうだったんだけど。
「昨日のゴブリン将軍なんですけど、ブラックさん、の牛が倒したって聞いたんですけど……」
なんか聞きづらい。
「そうみたいだね。左が騒がしかったから前から回したんだけど、役に立ったみたいで良かったよ」
意外としっかりした人なのか。
「いたのが将軍で良かったよ。こんな場所にはいないだろうけど、皇帝とかだったらウッシーも危なかったかもしれないからね」
ブラックさんは多分笑いながらそう言っているが、僕死にかけてるんだよな。ゴブリン将軍ってそんなザコだったかな。ゴブリン皇帝と同レベルの牛を従えてるってことは、やっぱり強いんだよな。武器は近接メインみたいだし……頼んでみようかな。
「ブラックさん、僕に修行をつけてください!」
「いいよ」
二つ返事だった。




