弱いけど
「復帰か。無理すんなよ!」
今日、初めて話した相手は20代半ばくらいだろうか、無精髭にボサボサの金髪、筋肉質な大柄な男だった。話すのが初めてだったこともあり素っ気ない感じで一言二言言葉を交わすだけになってしまったが、まぁこんなものだろう。なんだか本隊の人達が馴れ馴れしくなっている。僕の休んでいる間にみんなで仲良くなったらしい。
「レイさん!」
朝からでかい声で呼ぶな。って目をされたけどお礼は言わなければいけない。
「昨日は本当にありがとうございました。このご恩はきっと、必ず返します!」
「あぁ、気にするな。気張りすぎるとまた怪我するぞ。気楽にいけ。それで仕事はきっちりやれ」
言いながらレイさんは持ち場に行ってしまった。
カッコイイ。
「あ、スラン。ごめん、昨日は迷惑かけたね」
「大丈夫だよ。まさか将軍が出るなんてね。初日からバタバタだったね」
え、ゴブリン将軍!?
「そうらしいよ。成り立てだってレイさんが言ってた」
声に出てた。スランが返事をしてきた。そうか、強いわけだ……
「誰が、倒したの?」
聞きたいような聞きたくないような気分だ。
「ブラックさんの牛」
スランは真顔で端的に分かりやすく教えてくれた。
そうか、僕は牛以下のゴブリン将軍以下かもう強いのか弱いのか分からなくなってきちゃったな。いや、分かるけど。弱いけど。
「大丈夫? ラッツ。顔色が良くないよ」
スランに心配されてしまった。大丈夫。自分の弱さを痛感しただけだから。
強くならないとなぁ。
とりあえず空いた時間があったらブラックさんにも話を聞いてみよう。




