地下
「臙脂を探すぞ」
黒にとりあえずの目標を告げ、城の中へと進んで行く。
臙脂の居場所は地下牢か魔王の元の二択だろう。なんで地下の牢かって。牢と言えば地下だろう、地上にあったんじゃ格好がつかない。魔王の元にいる可能性を考慮している理由は一つ、黒の異常な戦闘力故だ。俺が魔王なら絶対に人質を用意する。まぁ、意味無いんだけど。
「ねぇ、この先、能力制限して行こうと思うんだけど。どうかな」
この阿呆、ここに来て舐めプか。流石に吃驚だ。
「特質と能力と技能と魔法関連禁止で行こうと思うんだよね」
それではもはや一般人以下だろう。
「お前なぁ、臙脂が攫われてるんだぞ。早く助けなきゃ殺されちまうかもしれねえってのに、やめておけ、この阿呆」
俺は阿呆を諌めた。
「じゃあさ、どっちが早く臙脂くん助けるか勝負しよ」
黒が呑気に言ってくる。が、面白い。最近戦闘は黒任せだったし、久々に暴れてやるとするか。
「勝ったらどうするよ」
俺はノリノリでそう言ってやると黒はニコニコで答える。
「魔王とサシバトル。舐めプあり」
全然うれしくねえから断った。
「じゃあさ、灰が勝ったら炎熱系旧式魔法㊙術式改を教えてあげる。ビーッと出てボワッとなるやつ」
これは嬉しい。前から教えろと言っているのに頑なに秘匿している術式だ。
旧式の魔法は術式を組まないうえ大気中の魔素を使用せず体内の気だけで発現する。それを黒という男は誰でも使えるように術式に起こして見せたのだ。本来超感覚的な魔法現象故使えるやつがほぼ居ない。というか黒以外に使えるやつを知らない。いくらエネルギー効率が悪くてもあの威力は魅力的だ。
「完成しているやつ全部よこせよ」
俺は欲を出す。が、黒はそんな些細なことを気にするタマじゃない。
「おっけ!じゃあお前どっち方面行く」
俺は黒の問いに簡潔に答える。
「地下だ」




