顔合わせ
胃が痛い。
嫌な予感がする。
弱小ではあるものの冒険者パーティのリーダーになって半年後近いが、未だにクエストの前日は胃が痛くなる。元は幼なじみ四人で結成したパーティだったが恋愛関係でゴタゴタがありリーダーが離脱してしまったため僕がリーダーを引き継ぐことになったわけだ。
冒険者は儲かるしカッコイイが常に危険と隣り合わせだ。依頼の調査ミスで難度以上の危険あるかもしれない。もしメンバーを死なせてしまったら。そうでなくとも大怪我をして人並みの生活を送れなくなってしまうかもしれない。どんなアクシデントに見舞われるか分からない中、リーダーとしてメンバーを守りつつ依頼を達成できるのか。今まではたまたま運良く順調に依頼をこなせてきただけで本来の実力はまだ新人と同程度かもしれない。ただでさえ不安が絶えないのに明日は新人パーティと合流し、そのリーダーを務めなければいけない。重圧に耐えきれない。胃が。
僕はいつも通りに不安に包まれながら眠りについた。
「Eランクパーティ夜の雫のリーダーやってますラッツです。隣がスラン、こっちの女の子がニルです。これからよろしくお願いします」
僕は失礼の無いよう、それでいて距離を置きすぎないように注意しつつ挨拶をした。隣の二人も僕にならい頭を下げる。
初対面の人と話すのは緊張する。
「俺はレイだ」
「ブラックです。よろしくね」
今回一緒になった二人。一人は骸骨柄のマスクをしていること以外は見た目普通の冒険者だ。少々軽装すぎる気もするが魔法の実力次第ではこんなものかもしれない。実際結構な魔力を感じる。気がする。
もう一人は全身板金鎧で持ち物はランス一本のみだ。近接戦闘メインだろうか。こちらの、ブラックさんの方が気さくそうではある。旅支度をしていないようだが、大丈夫だろうか。
「今回のクエストでは僕がリーダーを努めさせてもらいますが、大丈夫ですか」
ランク等の関係上だと思うが組合の方からリーダーをやるように言われている。
「問題ない」
レイさん、ちょっと怖い。先が不安になってきた。
新人パーティと一緒になるって聞いてたけど、どう見ても熟練者だし、愛想悪いし、もう一人は顔合わせで顔隠してるし、長期のクエストなのに旅支度無しだし……
まずい、考えるほど不安が増してくる。
不意に右手が温もりに包まれた。
僕の不安を察したのかスランが手を握ってくれていた……いや、ありがたいよ。一瞬で不安が消えたからね。でも、出来れば左手の方がよかったかなぁ、なんてね。
思いつつ左に視線を向けるとニルはブラックさんに夢中だ……確かに珍しいけどさ!
なんか、もうどうでも良くなってきちゃったぞ。
「依頼人が合流するまでもう少しありそうですし、今回のクエストの段取りをしておきましょうか」




