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冒険者

「登録ですね! ありがとうございます! 最近は魔王軍が力を増してきているので叩き上げの方の登録は大歓迎です!」


受付の女性は元気よく手続きを進めていく。黄色を基調とし、胸元がガバッと開いたメイド服のようなものを着用している。豊満な胸の形成する谷間が惜しげも無く男性冒険者たちの視線に晒される。ちなみに隣の受付は青い衣装だ。


「悪いけど、俺達こういうのは初めてなんだ……」

「そうでしたか。大変失礼しました。でも、新人さんも大歓迎ですよ! それではお名前をお願いします!」


気まずい、俺は視線を落とさないよう注意しつつ受付と話を進める。受付は書類に筆記する用意をしながら返してきた。


『冒険者組合の受付の採用基準に胸のサイズがあるらしいよ』


いつだったか、随分と昔に聞いた噂を思い出す。


「G・ブラックです」

「ブラックさんですね!」


となりで大人しくしていた相棒が言うと受付は笑顔を絶やさず視線で俺にも名乗れと促す。


「レイだ」


俺はなるべく平静を装い端的に告げる。なんたってこんな年になっても谷間のひとつでドギマギしなきゃいけないんだ。クソ。


「承知しました! それではこの水晶に手をかざしてください」


受付は名前を書き込んだカードの上にゴトッと水晶を置く。ガサツだ、と思うが荒くれの揃う冒険者組合、このくらいが調度良いのだろうか。


手をかざすと水晶とカードがうっすらと青く光る。おそらく対象者の魔力を利用しているのだろう。


「はい、結構です! カードをどうぞ」


受付は水晶をずらすと、カードを手に取り直接手渡してくる。俺の方が近いのに律儀なことだ。


腕に圧迫された谷間が強調される……見ない見ない。


「ブラックさんもお願いします!」


受付はブラックにも同じように作業を促す。


ブラックは俺と同じように水晶に左手をかざす。しかし水晶からもカードからも光が発せられない。一瞬の沈黙。


それはそうとこいつ、全く胸を見ている気配がない。鎧兜で顔は見えないが。女好きとまでは言わないが、興味が無いわけでも無いだろうし気を使ってる素振りも見えない。


「あー、おっけーです! カードどうぞ」


受付は言う。


水晶にもカードにもなんの変化も起きなかったが、なんかオッケーらしい。本当か。後で偉い人に怒られても知らないぞ。


その後簡単にクエストのシステム等の説明があり、そんなこんなで俺達は冒険者になった。

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