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人殺しの人助け

街を出て他の街を探しにルイとローラは馬車に揺られていた。

「電車もバスもあるわけねぇよな、あっても運賃すら持ってないか」

「あのー」

 ローラはルイに対して何かを聞きたそうな顔をしていた。

「なんだよ」

「ホントに4人もの人を殺したんですか?」

「あぁ、そうだよ」

「酷い人ですね」

「喧嘩売ってるのかお前は、だいたい街に来た兵士も人殺しみたいなもんだろ」

「何を言ってるんですか?この世界で人殺しなんて存在しませんよ?」

「街を襲いにくる奴らがいるのにか?」

「人々全てがゼウス教徒かティフォン教徒ですが、人殺しに対してはどちらの宗派も自らの命をもって償うべきとなっています。四人もの人を殺しておいて平然と生きているあなたが異常なんです」

「そうかよ、女に乱暴するのは良くて殺すのはダメだってのか。変わんないと思うけどな」

そんな話をしていると馬車が脚を止めた。

「着きましたよ、ここがセントグランです」

「ありがとうございました!お金は…」

「いえ、お代は結構です。しかし、先ほどの話が耳に入りました。二度と私とは関わらないでください」

 そう言い放つと馬車を引く老人は消えていった。

 ルイが不服そうな顔をしているとローラはルイを連れて宿屋に向かった。


「ここはセントグランというどちらの宗派も混在している非戦闘エリアです」

「ここで戦うとどうなるんだ?」

「人殺しのように扱われます」

「なるほど、良くわかったよ」

 宿屋に着くとローラはこの世界の説明をしてくれた。この世界ではゼウス教とティフォン教の争いが常に続いている。魔物のような存在はおらず、人と人との戦争である。なのに人の命を奪う者がいないのはこの世界にある「膜」という概念のおかげらしい。人に対して攻撃をすると直接身体には当たらず膜という存在に当たる。膜が破れた者は1日ほど動く事ができなくなり、膜が破れた者を攻撃する事は禁忌とされている。

「つまり俺は膜が破れた奴に4回トドメを刺した事になるわけね」

「そうじゃないんですか?」

「あー…そうゆう事でいいよ」


ルイの指先が震えた(緊急ミッション ローラを救え 成功報酬+3日半と30000G 失敗−2日)


「なんだよこのミッション、ローラを救えも何も目の前にいるじゃねぇか」

「何を言ってるんですか?」

「お前、これ見えないのか?」

「何を言ってるんですか!一人で何か言ってて不気味ですよ!私は寝ます!」

「あぁ、悪い」

 (ゼウスタイマーは俺にしか見えないのか)

 ルイは残り少ないタイマーの文字を見たが、とりあえず眠った。


 翌朝、宿屋には1通の手紙が置いてあった。

「人殺しと一緒にはいられませんさようなら」

ルイは溜息をついた。

「何がローラを救えだよ、寝込みを狙って消えやがって」

ルイは何か思うところがあった。

「最初の街はどうなったんだろうか」

宿屋を飛び出してセントグランの入り口に戻ると昨日の馬車を引いていた老人がいた。

「おいアンタ!今朝俺といた女がどこかに行くの見なかったか?」

「ワシと関わらないでくれと言ったはずじゃが…はぁ、これが最後じゃぞ」

老人は遠くの方角に走る馬車に指を差した。

「東の方の小さな街の人達が攫われた修道女を救いに来たと言って眠ったままの彼女を乗せて走っていったわい」

「サンキューじいさん!この馬一頭借りていくわ!」

「おい待て貴様!もう関わらないでくれと言ったはずじゃぞ!」

老人の言葉に耳を傾ける間もなくルイは遠く離れた馬車に向かって馬を走らせた。




 ローラは草原の中で目を覚ます。そこには以前いた聖堂のある街の人々がいた。

「あれ?皆さんどうしたんですか?」

ローラの問いに答えずに怒りの顔を露わにした男と女が刃物を突きつける。

「お前のせいで街はなくなったんだ!」

刃物はローラに向けて振り下ろされた。ガラスの割れるような音がする。膜が破られた。

「すいません、何のことですか?」

ローラは怯えながら聞くが、誰も聞く耳を持たない。

「お前が黙ってティフォン兵に犯されてればよかったんだ!今までそうやってきたのに人殺しを味方につけてゼウス様の顔に泥を塗りやがって!」

ローラは今気づいた、ルイは騙されてティフォン兵に弄ばれそうになっていた私を救ってくれたのだと。

「そんな…あの人が」

膜が破られているローラに向かって女は刃物を刺した。

「痛い!痛い!やめてください!」

この世界で流れることのない血が流れた。

「お前のせいだ!お前のせいだ!」

視界が薄れていく中、力を振り絞りローラは叫んだ。

「酷い事言ってごめんさい!ルイさんごめんなさい!助けてくれたのに気づかないでごめんなさい!」

「コイツ、修道女のくせに人殺しに謝罪なんて!私も死ぬからコイツだけは殺す!」

「助けて…」


「オイ」


ローラの目の前で刃物を持った女が吹っ飛んでいった。

「何やってんだお前は」

ローラの目の前には馬に乗ったルイがいた。

「ルイさん!」

残りの人間を片付けるのに時間はかからなかった。

膜の割れる音が5回ほどすると刃物を持った女を見捨てて5人ほど逃げていった。

「さてと、お前はそう簡単に許さないからな」

「待って!お願いします!この女は好きにしてもいいから…」

全てを言い切る前にルイは女の顔に蹴りを入れた。

「もうやめて!膜はもう破れたから!これ以上すると死んじゃう!人殺し!」

「あぁそうだよ、俺は四人も人間を殺してるんだ。それが5人になっても構わねぇよ」

女が落とした刃物を拾い、振りかざす。

「やめてください!」

ルイの腕をボロボロになったローラが抑えた。

「お前、何するんだ!」

「ルイさんは悪い人じゃない!確かに四人もの人を殺しているかもしれませんけど理由があったはずです!お願いです!これ以上はやめてください!」

「離せよ!俺は人殺しだぞ!」

ローラを振り解いてもう一度刃物を女の方に向けて突き刺した。

「もういい、次俺の前に現れたらもう少し左にナイフが逸れるからな」

女の顔の真横にナイフは突き刺さっていた。

恐怖のあまり失禁している女を無視してルイはローラを抱き抱える。

「ほら、馬には乗れるか?帰るぞ」

 ルイは自分の服を破きローラの流れる血を止血した。

「ルイさんごめんなさい、私のこと二度も助けてくれたのに酷いことを」

「大丈夫だ、俺はお前がいないと困るからな。ついてきてくれる奴を見捨てない」

「無理やり連れてったくせに」

「え?そうだったっけ?」

ルイはこの世界に来て初めて表情が緩んだ。


 ルイの指先が震えた(ミッション成功+3日 30000G)残り4日10時間


「はぁ?何で半日減ってるんだよ」

 下の項目を読むと窃盗−12時間と書いてあった。

「ルイさんこれなんですか?」

「あぁ、さっきの奴らの金」

「窃盗はゼウス様の教えに反します!やっぱり悪い人だ!」



ゼウスタイマー残り4日10時間

 


 

 

 

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