異世界転生男子高校生の日常(番外)
異世界に転生した男子高校生4人、王子に高位貴族に生まれ変わりました。でもやっぱり元高校男子!4人でわちゃわちゃ日々を過ごしています。
「アルフレア殿下、おはようございます」
「殿下、おはようございます!」「おはようございます」「・・・・」「・・・」・・・・
大勢の学生が一人の少年に我先にと挨拶をする中。
「ああ、皆もごきげんよう」
見目麗しい美貌の少年はにっこりと笑い、手を少し持ち上げて軽く振れば、きゃあと歓声が上がる。女子に混じって男も頬を染めている。
殿下と呼ばれた少年の名はアルフレア・ボゥ・ザーフェス、ここザーフェス王国の王太子である。
彼ら学生がいるのはザーフェス王国にある学園、ローズガーデンゲート。
13歳から18歳までの男女が通う寄宿学校だ。ほとんどが貴族の子息令嬢で、平民階級はたった5人。
だが平民と侮るなかれ、この5人は超大金持ちの商人と、勇者の子孫だ。末端貴族や貧乏貴族よりも力は強く、高位貴族とも縁が強い。
その中でも勇者は建国当時の王家に尽くした旧家で、王家も一族に恩赦として貴族階級を贈ろうとしたが断られた。
『この国の王族が地に伏したとき、我らはこの国を見限ろう』
つまりは、だ。『こいつだめだわ〜』な王が現れたら国から逃げるからな〜って事だ。
平民ではあるが、勇者の称号は名前に付いている。一族の首領と後継の名に『サージュ』と。
なのでこの少年の名は『メイヂ・サージュ・アウン』なのである。学友や知り合いには『サージュ』で呼ばれている。
知り合いでも年嵩の者には『若サージュ』『若サー』と呼ばれていたりする。
勇者の一族は貴族称号は蹴ったが、500年前に広大で肥沃な土地を頂いたので、勇者の力を使って葡萄を育て、ワインを生産して大金持ちになった。
このワインは勇者パワーで生産しているせいなのか、滋養強壮にも効くと評判である。元高校生の暮らしていた世界の『養●酒』みたいな・・いや、勇者パワーでこれの十倍以上の効果がある、らしい。知らんけど。
その効果バツグンのワインは、毎年王家にも贈られていて、『王室御用達』の看板を掲げる事を許可している。
さあて、この勇者クンの話はここまでだ・・・
王国ではお酒は18歳までは禁止とされていて、アルフレアはもうすぐ18歳の誕生日を迎える。
アルフレアの誕生日の晩餐会で、飲酒の儀式を持って解禁となる習わしである。
学友のリーンブルグは先月、ワッツは5月、オニールは7月に誕生日を迎えて酒解禁となっていた。
「いよいよですぞ〜〜、お酒が飲めますぞ〜〜〜」
誰が話しているかといえばアルフレアだ。前世でも『ですぞ』キャラでなかったのに、転生していつの間にやら『ですぞ』『ですな』と話すようになった。転生7不思議その1だ。
「え?お前、酒初めてなん?俺なんかこっそり12の時に飲んじまったぜ〜?」
いつもはキリッとクールなリーンブルグも今は前世仕様。この世界では高価な品、クリスタルリネットゥ・・メガネのことだ・・をきらりと光らせている。こんなにハンサムなのに。
「「「不良!不良がいるわーーー!!!」」」
残る3人がピーチクパーチク騒ぐ。
「なんだよなんだよーぅ、お前らも飲まなかったのかぁ?」
「飲んだ。15の時!」
とワッツ。オニールはてへぇと頭を掻きつつ。
「7歳の時に飲んで怒られちった!」
「「「さすがオニールん!!!お前が勇者だ!!!」」」
と、仲間3人が讃えた。
「でもアルフ様は飲んだことないのか?」
「アルフ様は厳禁言うたでしょお〜〜?その呼び方はナタリィ(婚約者と言うか嫁)オンリーですからーー!・・場内では飲みたくても飲めないっちゅーねん。メイドも侍女も侍従も執事も目を光らせているんだぞ?無理ゲーより無理!」
「「「そうだよなー。あの侍従の目を眩ませるなんて、王様でも無理だもんなぁ〜〜」」」
そしてぎゃはははと4人で笑った。
超絶美麗に転生した4人。だが、中身は元男子高校生。
いつもはキリッとカッコつけているけど、たまには元の男子高校生に戻りたくなるんですぅ〜!
そう、今更の説明となるが、彼ら4人は異世界転生者。
ゲーム大好き男子高校生は、交差点で信号待ちしてたところ、突っ込んできたトレーラーに吹っ飛ばされてお亡くなりになった。
はっと気がついたらあら不思議!ゲーム世界に転生してた!!
4人で攻略してたゲーム『ローズガーデン・ゲート』の世界に!!
ついでに自己紹介・・・
アルフレア・ボゥ・ザーフェス(17) ザーフェス王国王太子で嫡男(大谷静)
リーンブルグ・カーン(18) カーン公爵嫡男(河田宗介)
ワッツ・ビルホース(18) ビルホース侯爵嫡男(竹中穂積)
オニール・セイクリッド(18) セイクリッド辺境伯嫡男(灰崎辰雄)
ゲームの力を意識して『人生』の攻略中である。
だって4人にはゲームなんかじゃないから!リアルだから!積んだら人生終わりだから!!
死ぬ前に必死で婚約者ルートを模索していた4人だった。ヒロインはビッチ、『魅了』で強引に彼らのハートを奪って、婚約破棄をさせる。彼らにとっては害悪でしかない。
そもそもゲームをプレイする時、自分の化身・・プレイヤーキャラを選ぶ時に見た婚約令嬢が自分の好みど真ん中だったから、彼らはポチーーと決定ボタンを押したのだ。
なのでヒロインエンド、ハーレムエンドは却下!ただただ婚約者エンドを目指した。
が。やはりというか・・
彼女たちは悪役令嬢枠で、何をしても断罪しか待っていなかった。
軽いモノなら神殿や教会で幽閉、牢獄に収監、国外へたった一人放逐、事故死、暗殺、そして処刑。
冗談ではない。
こんなに可愛い、綺麗、愛おしい彼女らに降りかかる恐ろしい出来事に、4人は黙っていなかった。でもバタフライエフェクト?知らんけど。
『何回やっても何回やっても』以下略。何度彼女らの不幸に涙を流したか・・
この世界では絶対に!!嫁を守る!!
ってな感じで生きています。
本日は、オニールの城滞在で使用している街屋敷でわあわあ騒いでいる。
もうすぐアルフレアの誕生日、なので儀式前にお酒を嗜んじゃおう!ってなワケだ。
だって怖いじゃん?
初めて儀式で飲んで、下戸で顔真っ赤でゲロ吐いたら困るじゃん!からみ酒体質とか、泣き上戸だとか、カッコ悪いとこ見せちゃったら!!
婚約令嬢も来るんだよ?いいとこ見せたいじゃん?
なのでこっそり試し飲みをしようとしたんだけど・・
なんかゾワッと背中がサブイボ!気配に気づいちゃったよ!!
「殿下・・・」
「「「「ひえっ!!!!」」」」
4人はどこから出たのか酷い声を上げました。
ぎぎぎ、と音が出そうな首で振り返ると・・いましたよ!王城の侍従と執事が!!
まあおわかりでしょう。
4人はこっぴどく叱られちゃった!
それから結果、儀式ですが・・
水で薄めたお酒をかるく2〜3口含むだけで終了でした!そうだよね!格好つけなきゃいけないもんね、王族だもんね!
婚約者ナタリィは来月18歳です。
アルフレアはニヤッと笑いました。
彼女のお酒・・水で薄めないで、そのまま飲ませて・・うふふふ。
この作戦は成功しました。
あの侍従と執事が見逃すわけがない・・という事は・・・
まあ、嫁と仲良くなるのは良きことかな。
アレがどうなっていようが構いません!
嫁が最優先!!
では本編に戻りましょうか・・・
end
この話は連載中『異世界転生男子高校生』の番外です。よければ連載も読んで欲しいのココロ。
『異世界転生男子高校生』https://ncode.syosetu.com/n1542hq/
追記>>あら!若サー本編に再登場!あの同級生、最初はただの名無しモブだったんだけど、この話書いてから出したくなって、本編に出しちゃった。