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99 主人公より主人公







昨晩は豪華で豪勢な夕食を満足いくまで堪能したネイト一行は朝を迎えていた。

昨日昼寝をしていたネイトは一番早く起きた。


「なんで、全員で寝てるんだ…」


昨日遅くまでネイトの部屋で酒盛りという名の女子会をしていた仲間達は仲良くベッドで寝ていた。

約一名、ケイトだけはソファで酒瓶を抱きながら寝ていたが。


ネイトはとりあえず今日から受けた依頼に行く為、ライザだけ起こして朝食を食べた。


「ネイトさん!起こしてくださって構わなかったのに…」


食堂にやってきたカーラが抗議したが


「昨日も起こしたから悪いと思ってな。それに気持ちよく寝ていたから起こすのは憚られたんだ」


ネイトの言葉を聞いて俯いてしまった。


「俺達は王城に行ってくる。昨日も言っていたがバザーの準備が出来たら王城へ行けば、護衛の騎士達が待っている事になっている」


「はい。お気をつけて」


カーラはネイト達を見送った。






王城に着いたネイト達は近衛騎士に案内され、中庭に案内された。


「王太子殿下をお連れしますので暫くお待ちください」


王太子を指導する立場になったネイトに対して、敬語で話す騎士。


「ライザ。来るまでする事もないから始めよう」


「うん。わかった」


ネイトとライザは稽古を始めた。

暫くすると騎士と王太子と思われる黒髪の年頃の人物が現れた。

手を止めたネイトは


「王太子殿下ですね。私はBランク冒険者のネイト・スクァードと申します」


「ルーベルト王国王太子のトーマス・ヴガッディ・ルーベルトだ。ネイト殿だな。剣聖の噂は聞いている。よろしく頼む」


小国家連合王国内では王族のミドルネームは国王の名になる様だ。王太子の挨拶を聞いて、ライザを紹介したネイトは


「剣聖と言う二つ名は俺には過ぎた名です。あまりそう呼ばないで下さい。

後、指導中は師匠と呼んでください。それと指導中は恐れ多いですが、言葉は悪くなります。

後、この依頼を受けるに当たって一つ殿下に伺いたいことがあります。

殿下は文武両道で剣に関してはとてもお強いと伺っています。

王太子という地位にありながらなぜそれ以上の強さをお求めですか?」


「重ね重ねすべて了承した。いや、しました。

教えを乞う立場ですからこちらがまず言葉遣いに気を配るべきでした。

どうぞ普段通りに接して下さい。

それと理由ですが、好きな女性の為です。

私と将来を誓った女性がいるのですが、その女性は同じ小国家連合王国の人ですが、我が国の方ではないです」


トーマスは一つ呼吸を整えて、言葉を続けた。


「隣国の王女殿下です。その国の国王と我が父は折り合いが悪く、そう言った理由もあって王女との婚姻を中々承諾頂けません。

単純に嫌がらせもありますがほとんど不可能な条件を出してきます。

最後の条件として出してきたのはその国最強の騎士に勝つことです。その為に私にはどうしても今以上の強さが必要なのです。

師匠に頼む事になったのは、我が国の騎士ではすでに私以上の剣の使い手がいないからです。

ご理解いただけますか?」


好きな女性の為に、また添い遂げる為に強さが必要だと言ったトーマスにネイトは好感を抱いた。さらにトーマスはこれまでの噂や実際に会った本人の印象も抜群に良かった。


「わかった。俺で良ければ最善を尽くそう」


「ありがとうございます!」


トーマスは年相応の笑顔で褐色の顔を破顔させた。


「まずは今の技量を確認したい。ライザと模擬戦をしてもらう。

二人とも構えてくれ」


そう言われて二人は向かい合うと


「始めっ!」


二人の戦いがはじまった。

初手はスピード重視のライザだ。

トーマスは迎え撃つ作戦のようだ。


「しっ!」


一撃必殺ではないライザは相手の攻撃を潰す為にトーマスの手元に木刀を振るう。


「くっ!」


ライザの予想以上の踏み込みと剣の速さに体勢を崩すが持ち前の才覚でなんとかいなす事に成功した。


「やっ!」


相手が体勢を崩した事で勝機をみたライザは軽やかなフットワークでトーマスに迫ると胴に木刀を振るう。


「はっ!」


トーマスはライザがさらに深く踏み込むと読んでいた。


「それまで!二人とも良かった。ライザは自分の剣をちゃんと振れている。

トーマスは初めて見るライザの動きをしっかり読んでいたな。

次は俺とだ」


ライザは敗れはしたもののネイトに褒められて、間違っていなかったと安堵した。


「わかりました。合図はどうしますか?審判に騎士を呼んできましょうか?」


「合図も審判もいらない。それにトーマスは真剣で構わない。いつでもいい。自分のタイミングでかかって来るんだ」


ネイトの言葉に普段は冷静だと王城で話題のトーマスも


「素晴らしい剣技を持つ剣聖だと聞いていましたが、相手を揺さぶって得た名前でしょうか?」


ムキになりネイトに斬りかかった。


ネイトはトーマスの乱斬りを全て紙一重で躱した。

そしてトーマスが仕切り直そうと離れようとした瞬間にトーマスが下がる速さより速く踏み込みトーマスの剣を弾き飛ばして首に剣を添えた。


「す、凄い…」


座学でも優秀なトーマスの語彙力を失わせる程の衝撃だった。


「ライザとの組み打ちで守りの技術を見たが、攻めもいいな。

重みのある斬撃に、それを連撃しても崩れない足腰。さらに引き際も良かった。

一つ挙げるなら、冷静すぎる為、気迫が足りない。

気迫が篭ればそれをフェイントに使ったり出来る。少し正直過ぎたな。

基礎はしっかりしているからそれを応用したものを教えて行く」


ネイトの言葉を聞いたトーマスは


「はい!よろしくお願いします」


しっかりと頷いて返事をした。




その後、夕方まで稽古をした三人は夕食を共にする事になった。


「ケイトさん達には連絡をしましたのでじきに来る事でしょう」


「悪いな。俺は15だが、トーマスは何歳なんだ?」


「私は16です。師匠は若いとは思いましたがその若さでその強さとは恐れ入りました」


ちなみにトーマスの身長は175cm程だ。


「強さに歳は関係ないな。それにトーマスには俺にはない学がある。勉強をしながら王族としての政務もこなしその若さで剣も凄い。

俺はトーマスのほうが凄いと思う」


ネイトは敬語で話したが、トーマスが師はいつまでも敬うものだからと口調は指導後も変わらない。

やはり出来た男…


「しかし、話しを聞けば聞くほど、その国の王はロクな奴じゃないな」


トーマスから隣国の王の話しを聞いていたネイトはその王に悪い印象しかないが


「そうですね。今となっては同盟国のようなものですが、昔は隣国と言え覇権を奪い合っていた国ですから仕方ないのかもしれません」


「そうか。それでもこれからも付き合って行かなくてはいけないのは大変だな」


「ええ。ですが、彼女のことは譲りません」


文武両方とも優秀でいて、人の気持ちを考える事もできるトーマスだが熱い想いもある。

主人公を間違えていないと思いたい。

ネイトが勝っているところは名前が某乗りものではないところくらいか…


暫く談笑しているとケイト達がやってきた。

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