表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/101

98 キングサイズ






暫くすると、門番が帰ってきた。


「紹介状には諸島連合国議事会の書類もあると書いてあったが、待っているか?」


「ああ」


「では、ついてきて欲しい」


そう言って馬車を誘導する門番にネイトが聞いた。


「どこに行くんだ?」


「それは私にはわからない。迎えが来るからその人に聞いてくれ」


門番は誘導が終わると持ち場へと戻った。

ネイト達が暫く待つと蹄の音が聞こえた。


「其の方らが紹介状を持参した者か?」


騎士に問われたネイトは


「そうだ。どこへ連れて行く?」


「王城だ。ついて参れ」


そう言うと騎士は馬を返した。


「動くわよ?」


ケイトの言葉の後に馬車は騎馬を追う。




依頼主の大方の予想は出来たネイト達は王城の一室でその時を待っていた。


ガチャ


ノックもなしに扉が開いて騎士に先導されながら豪奢な服に身を包んだ壮年の男性が入ってくる。


「其方が諸島連合国議事会から礼状を授かった者か?」


ネイトを見ながら聞いてきた。

直答してもいいものか、周囲を窺うが誰も何も言わないのでネイトは答えた。


「冒険者故の無作法をお許しください。

礼状かどうかはわかりませんが、議事会からAランクに推薦していただいたのは私です」


「そうか!やはりAランクに推薦されるだけあって礼儀も出来ている!

いや、この場合は礼儀ではなく人が出来ているのか?

こちらこそ勝手な呼び付けをして済まなかったな。

私は小国家連合王国に所属しているルーベルト王国国王のヴガッディ3世だ。

今日は呼びかけに応じてくれて感謝する」


「Bランク冒険者のネイト・スクァードと申します」


ネイトの名乗りを聞いて国王が


「はて?どこかで聞いたことのある名前だな」


思案していた。

ネイトはまさか師匠の名前を知っているのか?と思ったが、まさか500年前の人物を知るわけがないかと思い直した。

国王が思案していると国王の後ろから着いて入室してきていた、国王よりやや年上の男性が


「陛下。もしやレイカード王国の剣聖では?」


その言葉に合点がいったとばかりに


「そうであった!ネイトよ。宰相の言うようにもしやレイカード王国の剣聖なのか?」


この国の最高権力者に聞かれて答えないばかりか嘘もつけないネイトは正直に答える。


「そうです。畏れ多くもレイカード王国国王陛下に剣聖の称号を賜りました」


「そうであったか!では、尚更この依頼を受けて貰いたい!話しを聞いてくれるな?」


「もちろんです。しかし、仲間との旅の途中です。場合によっては畏れ多くもお断りさせて頂く事もある事をご了承ください」


「もちろんかまわん!

依頼とはな、ウチの息子、王太子のトーマスを鍛えて欲しいのだ。

期間は長ければ長いほど有難いが、そちらにも予定がある事だろう。

なので、できる限りで構わんからレイカードの剣聖から指導してやって欲しい」


ケイト達と相談した結果、とりあえず一月ほど、という事で話しは纏まった。

依頼を受けるに際しネイトは二つの条件を出した。

一つはケイト達のバザーに国から護衛を出して欲しい事。

もう一つは指導の時にライザも一緒に指導したい事を伝えた。

国王は二つ返事で了承してくれた。





ネイト達は今、国王の計らいで他国からの来賓を泊める来賓館を借り受け、そこに宿泊する為に訪れたところだ。


「ここが来賓館か。デカイな」


「そうですね。流石ネイトさんです!」


とりあえず褒めておけば良いとカーラは思っていそうだとネイトはやっと気付いた。


「すでに連絡してあると聞いているからとりあえず入るわよ」


ケイトを先頭に一行は来賓館の玄関に向かった。




「「「ようこそ来賓館へ。ごゆっくりお寛ぎ下さい」」」


何人もの人に迎えられて尻込むネイトだが、他のメンバーは平気なようで中へ入って行く。

それぞれの部屋へと案内された一行に


「お食事、湯浴みなどなにかご要望がごさいましたら、お気軽に仰ってください」


所謂メイド服を着た女性がネイトにそう告げると一礼して退室した。


「こんなところにひと月も泊まるのか…」


ネイトの部屋は20畳以上でキングサイズのベッドに高級そうな応接セットが鎮座していた。


「今日はする事もないし、食事まで横になっていよう」


誰もいないが、部屋が広過ぎて独り言でも呟かないと静かで落ち着けなかったようだ。

断じて昼寝の言い訳ではない。…たぶん。






「ふぁあ。よく寝たな」


夕方目を覚ましたネイトは何故か窮屈を感じた。


「なんでカーラが寝てるんだ?」


疑問に思うネイトだったが普段宿や野営では同じ空間に寝ている事もあり慣れていた。


「腹が減ったし、可哀想だが起こすか」


普段からネイトの3大欲求は食欲に偏っている。


「カーラ。起きてくれ」


ネイトは優しく声を掛けるがカーラは起きない為、優しく揺すっていると


「ネイトさん?」


寝惚けたカーラが目を開いた。


「お腹が空いたから夕食を食べたいのだが、カーラはどうする?

もう少し休むか?」


勝手に部屋に入り、我慢できずに勝手にベッドに入った事を思い出したカーラは顔が熱くなるが、

それについて何も言わないネイトの優しさに嬉しくなり抱きついた。


「えっ!?ちょっと待って!?」


テンパるネイトが面白くて笑ったカーラは


「ふふふっ。私もお腹が空きました!ご一緒しますね!」


カーラはネイトの手を取り部屋を出た。






カーラに連れられてきたネイトはケイト達と合流した。


「あら?寝てたの?カーラ、寝癖を直してきなさい」


ケイトに指摘されたカーラは驚いて慌てて駆け出していった。


「勝手に入って悪いが、この部屋はそこまでだな」


ネイトの物言いに


「別にネイトに見られて今更恥ずかしい事なんてないわ。

それよりもどう言うことかしら?」


「俺の与えられた部屋は倍くらい大きい」


「そうなの?後で見させてね」


「先輩。流石剣聖様」


ネイトの答えにケイトは好奇心を出した。ライザはネイトがレイカード王国の剣聖だと初めて聞かされてから、元々先輩として慕っていた感情から尊敬の眼差しに変わっていた。


「もちろんいいぞ。ソファもたくさんあるから後で来たら良い。

ライザ…剣聖はやめてくれ…俺としては自分の師匠に手も足も出ないからその称号はむず痒いんだ」


ネイトは決して厨二病患者ではなかった。

ケイト達に与えられた部屋は元々は個室だったらしいが、一人で寝るよりみんなで寝ることに慣れている為、同じ部屋にしてもらった結果、来賓者の使用人などが泊まる用の部屋へとランクダウンしていた。


カーラが戻ってからネイト達は使用人に声をかけて食堂へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ