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95 旅の道連れ






書類が出来る予定の前日の夜。ネイト達は晩餐をする為、食堂へと来ていた。


「ネイト君達は明日、書類を受け取り次第出ると言うことか」


ガウェインの言葉にネイトが答える。


「ああ。明日の朝、ギルドで受け取ったら行く予定だ」


「そうか。…ライザ。ネイト君達に話しがあるのだろう?」


ガウェインに促されたライザがネイト達を真剣に見つめて話しかけた。


「先輩。みんな。私も一緒に旅がしたい」


「「「えっ?」」」


3人の声が揃った。


「どう言う事だ?ガウェインさんは知っていたのか?」


「ああ。黙っていて悪かったが、昨日ライザはDランクに昇格した。

それで昨日話したんだ」


「Dランクになったら街を出てもいいって言ってた。

パーティは先輩達なら問題ないって父言った」


ネイトはその言葉に何故か納得した。

頭の片隅でライザとはいつかパーティを組むと思っていたのだ。


「ネイト?どうするのよ?」


考え事をしていたネイトにケイトが聞いてくる。


「ああ。悪い。考え事をしていた。

ライザ。何故俺たちなんだ?手段としては間違っていないが目的をみんなに教えてくれ」


ネイトはライザの目的、目標を知っているが二人は知らない。

それを二人に聞かせてくれとネイトはライザに伝えた。


「私は困ってる人達を助けながら、まだ見ぬ景色を見るために世界を放浪する冒険者を目指している。

お願い。私の夢をみんなと見させて」


始めに答えたのはケイトだった。


「私も貴女と同じ夢を持っているの。

ただ困っている人を助けるなんて大きなことは考えてないけどね。

私は同じ、世界中を見て回る夢を応援したいわ。

いいえ!一緒に同じ夢を追いかけたいわ!」


カーラは先日の事もあり、恋敵になりそうなライザを警戒していたが


「私は…ライザさんみたいな大きな夢はないです。

ネイトさんと…いえ、仲間と一緒にいたいだけです。

ただそれだけ。だけどそれは誰にも譲れないです!

それでもよければ私もいいです」


二人の意見を聞いたネイトは


「ライザ。ライザの夢に何の保証も出来ないが、俺達の力になって欲しい。俺達の仲間にならないか?」


ネイトの言葉に


「うん!よろしく先輩達!」


ライザのパーティ加入が決まった。

もちろん冒険者としてのパーティはネイトとしか組めないが、依頼を受けている時間よりも旅をしている時間の方が長い。

旅の仲間が増えた。


「くそっ!ネイト君なら断ると思っていたのに!」


ただ一人ガウェインだけが悪態をついた。


「父。先輩の事、わかってない」


ライザが得意げに言った。






ライザを仲間に迎えたネイト達は翌日にギルドに顔を出していた。


「えっ!?Dランクとパーティを組むのですか!?」


ネイトの言葉にカミラが仰天した。


「そうだ。問題があるのか?」


「いえ、問題はないですが私の中では前例もないですね…わかりました。パーティ登録します」


ギルドのパーティはあくまで身内登録のようなものだ。

パーティメンバーに何かあればギルドが教えてくれる。

報酬を均等割してくれる。

など、使えるシステムが増えるがもちろんリスクもある。

パーティ内の人がトラブルを起こした場合、パーティで責任を取らなければならない。

つまりライザの為人を知っているネイトにとってはリスクはない。

パーティ申請が終わったネイト達はシシーの元へ行く。


「あら?ガウェインさんのところのお嬢さんね。一緒に行くのね?」


「そう。先輩と一緒」


ライザの言い方にカーラがピクリと動くがなんとか堪えた。


「これが推薦状と必要な書類よ。後は以前話した通りになるわ。気をつけてね」


ネイトはまた何か余計な事を頼まれると思ったがすんなり話しが終わってホッとした。

四人は街の入り口を目指してギルドを後にした。






「ライザ!」「ライザちゃん!」


街の入り口にはライザの父であるガウェインとその妻が待っていた。


「気をつけるんだぞ?ネイト君達の言う事を聞いてわがままを言わないようにな」


「ライザちゃん。冒険者になった事はもう何も言わないわ。でも、ちゃんと女の子らしくもしなさい。

ネイトさん。ケイトさん。カーラさん。

娘をよろしくお願いしますね」


まるで幼な子を送り出すような事をいう両親に


「父、母。わたし、もう子供じゃない。

大丈夫。行ってくる」


相変わらず言葉少なく答えたライザを両親は優しく送り出した。







街道に出た馬車の中でリンク国までの道のりを確認する四人。


「ライザさんが新しく入ったからもう一度確認するわね」


馭者席で手綱を操りながらケイトが言う。


「ライザさんはやめて。私は仲間は家族だと思ってる」


ライザの言葉に


「じゃあ、ライザちゃんね」


「妹みたいで良いわね!ね!ライザちゃん!」


今まで家族で一番歳が小さかったカーラがケイトに乗っかった。


「じゃあ、私はケイトお姉ちゃん。カーラお姉ちゃんって呼ぶ」


「カーラお姉ちゃん…良いわ」


カーラは何かに目覚めた。

女性陣が脱線して盛り上がっている為、ネイトは相変わらず黙っていたがその心境は『まさか俺もライザちゃんって呼ばないといけないのか?』と慄いていた。


「次に目指す国はここから西にある小国家連合王国ね。

諸島連合国と同じ連合国家だけど体制はかなり違うわ。

小国家連合王国からみて北西にある帝国から自分達を守る為に出来た連合国家よ。

諸島連合国のように纏りがなく、地域によって法律も制度も違うわ。

あくまで対帝国戦の為の同盟国の集まりと言う方がわかりやすいかもしれないわ」


ケイトの説明にみんなが頷いた。ここまではネイトも事前に聞いていた為、なんとか理解していたが基本はケイト任せだ。


「私達が目指すリンク国に行くにはそこから帝国を通るのが最短だけど、帝国は言っていた通り通らないわ」


帝国はこの大陸では唯一の冒険者ギルドが存在しない国だ。なのでネイトの身分証は使えないし、そもそも入る事が難しく、出る事はさらに難しいと聞いた。


「つまり迂回しなくてはいけないの。先は長いから必要になった時に説明するわ」


「次の目的地は小国家連合王国ってところだろ?

とりあえずそこを目指すということだな。

どれくらいかかる?」


ネイトの質問に今度はカーラが喜んで答えようとしたが


「先輩。小国家連合王国の国境にはここから馬車で5日くらい。

この国と国交があるから入国も問題ない」


ライザが答えた。ネイトの疑問にはなるべく答えたいカーラだったが、妹に嫉妬してはお姉さん失格だと思い、ニコニコしていた。

しかし、カーラを揶揄いたいケイトがその思いをぶち壊す。


「ライザちゃん。ネイトの疑問にはなるべくカーラに答えさせてあげてね。じゃないと拗ねるから」


「もう!ケイト!余計な事を言わないでよ!」


「わかった。カーラお姉ちゃん。ごめんなさい」


素直なライザの言葉にカーラは顔を真っ赤にする事しか出来なかった。


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