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90 イカは食べずに貝を食う






あれから何事もなく船は翌朝には陸地に着いていた。

小船で桟橋につけて降りた3人は島の美しさに目を奪われていた。


「海が透き通っていて底まで見えます…」


「木が見たこともない形ね…」


「島と聞いていたが…大き過ぎて大陸にしか思えん」


桟橋の近くには沢山の小島があり波で削られたであろう岩肌を露出させていた。

本島はかなり大きく、島全体で10,000人ほどが住んでいると船乗りから聞いていた。


「船は3日後に来るみたいだからそれまでは島で暮らすわよ」


ケイトの言葉に二人は頷きを返した。


「この島にも冒険者ギルドがあると聞いているがどこだろうな」


ネイトの疑問に


「町があるみたいだからそこに行けばわかるのじゃないかしら?」


「あの馬車ね。行きましょう」


ケイトが答えてカーラが皆を促した。



馬車に揺られること20分。町に着いた3人は宿を取ることに


「じゃあこれで」


「確かに頂戴いたします。では、2階の奥の部屋をお使いください」


宿の従業員の言葉に3人が部屋を目指す。

部屋の中で


「ここも陸には魔物はいないから町に壁がないわね。ギルドの場所は宿の人が教えてくれるわ。聞いてみたら?」


「そうだな。とりあえず行ってみる。二人はどうする?」


ネイトの問いに


「私達もついていきます!もしいい依頼が無ければ一緒に行動しませんか?」


「ああ。そうだな」


「カーラはこう言っているけど、本当にいい依頼がない場合よ。

甘やかしちゃダメよ?」


ケイトはネイトがカーラに限らず甘い事を知っている為、釘を刺した。


「わかってるわよ!」


カーラは頬を膨らませて抗議した。






3人でギルドに来たがカーラの期待は壊される事となった。


「Bランクの方でしたか!!」


そう言った島のギルド受付嬢は


「Bランクの方が島にいないので依頼ばかり溜まってまして…。この二つを受けていただけたらありがたいのですが」


そう言って持ってきたのは護衛依頼だった。


「護衛依頼と書いてあるがこの島には魔物はいないだろ?」


ネイトの疑問に


「海の魔物からです。この島の周囲で養殖をしているのですが、この間から魔物の被害が出て来ました。

昨日も無理してそこまで船を出した漁師の方が犠牲になりました。

どうでしょうか?」


そう言われたネイトは


「受けよう。仲間に伝えてくるから少し待ってくれ」


ネイトはギルドの中にあるテーブルセットに座っているカーラ達の元へと向かった。


「依頼があり、受けることになった」


それを聞いたカーラは


「そうですか。気をつけて下さいね」


「どんな依頼だったの?」


二人に依頼内容を説明して別れたネイトは受付に戻った。


「それで、どうしたらいい?」


受付嬢に聞いた。


「依頼主はこの島の海運組合なので隣ですね。

今、声を掛けて来ますので少々お待ちください」


受付嬢がいなくなるとカウンターが空いてしまうが構わないみたいだ。


(ゆるい感じだな。嫌いではないが)


ネイトはそう思うと先ほどまでケイト達が座っていた席に移動した。





暫くすると海運組合の人を連れた受付嬢が現れた。


「こちらの方が依頼を受けていただく冒険者の方です」


そう紹介してカウンターの奥へと下がっていった。


「Bランク冒険者のネイトだ。依頼内容は護衛との事だが具体的には?」


「こんにちわ。依頼内容は護衛で間違いないです。

具体的には、漁師と一緒の船に乗って養殖場まで行って漁師の仕事が終わって帰ってくるまでですね」


ネイトの質問に20代の男性職員が答えた。


「倒しても良いのか?」


「もちろん!ですが、相手は強いみたいです。

前にCランクの冒険者四人の方に依頼を受けていただきましたが、誰も帰っては来れなかったです」


それを聞いたネイトは


「わかった。頑張るよ」


「お願いします」


職員の男性はそう言うと漁師の元へと案内して、3人で船着場に向かった。





船着場にて

「こいつで出るから乗ってくれ」


漁師が示した船に乗り込む。

船は長さ5メートル程の小型のものだ。


「ネイトさん。私はここまでですが気をつけてください」


そう言って職員の男はネイト達を見送った。





「何故危険だと分かっているのに向かうんだ?」


ネイトの疑問に


「俺たちはこれしか知らねぇ。漁師は漁師しか出来ないから危ないと分かっていてもやめねぇんだ」


60代の漁師がしゃがれた声で答えた。


「わかった。俺も冒険者しか出来ないから必ず守る」


ネイトはこの不器用な男を死なせたくないと思った。


「ここまで来たのは久しぶりだぁ」


「そうなのか?」


「ああ。あの組合の奴らが止めるから来れなかったんだ」


漁師達も組合の人達が心配している事は理解している為、無理はしなかったようだ。


「ここに来るまでに襲われる事もあったみてぇだ。まぁ、あんたは暫く船で見張っててくれぇ」


養殖場は波の影響が少ない入江にある。

材木を浮かべて作ってあるので縁を歩く事が出来て、漁師は船から移っている。




暫くするとネイトは異変に気付いた。


(魔物の気配が近づいてきている)


「魔物がやって来たようだから倒してくる」


ネイトはそう言うと下着だけになり海に飛び込んだ。

それをみた漁師は


「おい!やけになっちゃいけねぇ!」


漁師は止めたがすでに遅かった。

心配そうにネイトが潜ったあたりを漁師がみつめていると、20m程先で水飛沫が上がった。


「なんだありゃあ?」


驚いている漁師の元へネイトが帰ってきた。

もちろん魔物を引き連れて。


「倒してきた。こいつを持って帰りたいからロープか何かないか?」


ネイトに聞かれた漁師は驚くのをやめて船に戻りロープをネイトに渡した。


「ありがとう。こいつを岸まで運びたいから一度船に乗ってくれ。後、重たいだろうから俺が漕ぐ」


そう言ったネイトは船に乗り込むとオールを漕いだ。

一度岸に魔物を置いてから戻ったが、それからは魔物は現れなかった。


一度海運組合に戻り報告して、もう一度3人は馬車で向かった。

そこで職員の男は


「凄いですね…。こんな大物の魔物は見たことがないですよ」


男性の目の前には10本足に吸盤がついた白い全長20m以上の巨体があった。

イカの魔物を運んだ3人は冒険者ギルドに報告に来ていた。


「ホントですか!ありがとうございます!これで町にもまた活気が戻ってきます!」


受付嬢がそういい


「そうですね!これで漁師さん達に良い報告が出来ます!」


海運組合の職員がそういい


「これでこれからは気兼ねなく貝の養殖ができらぁ。ありがとな。あんちゃん」


それを聞いたネイトは


「依頼だから気にしないでくれ。それにお礼ならすでに貰っている」


ネイトは漁師からお礼に貝をたくさん貰っている。今は早く帰って貝を食べる事しか頭にない。





宿にて

「ただいま」


「おかえりなさい!ご無事なようで何よりです!」


「おかえり。どうだったの?」


二人に今日の出来事を話して夕食は貝尽くしだと伝えた。


「わぁ。貝が名産らしいとは聞いていたのですが、今は無いと聞いてがっかりしていた所だったのです!」


「私も食べたかったから嬉しいわ!ありがとう!」


二人からお礼も言われて頑張った甲斐があったが、夕食に出て来た貝料理の量が多すぎて次の日も朝は暫く動けなくなる3人だった。(二人は重症)


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