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89 古の魔女カレン・スクァード






ネイト達が食後自室で談笑していた時


コンコン


「誰かしら?」


「とりあえず出てみる」


ケイトの疑問にネイトが立ち上がりドアへと向かう。


ガチャ


「おやすみの所済まない。私はこの船の船長をしているゴモック・ハーディーという者だが、少し話しをいいかな?」


ネイトの前には50代くらいの男性がいた。

ネイトは振り返るとケイトとカーラを見る。二人が頷いたので


「入ってくれ」


そう言うとゴモックを通した。


席に座ったネイトとゴモック。2段ベッドの下の段に腰掛けたケイトとカーラ。


「自己紹介をしよう。俺はBランク冒険者のネイト・スクァードだ。こっちの二人は…」


「ケイトよ。よろしく船長さん」


「カーラです。よろしくお願いします」


3人が自己紹介をして


「今日伺ったのはグリードさんの事だ。3人はグリードさんの恩人だと聞いたのだが…」


聞き淀むゴモックに


「恩人かどうかはわからないが困っていたのを助けたのは事実だ。これがその時に貰ったものだ」


ネイトが経緯を伝えながら紹介状を見せた。

それを見たゴモックは


「ありがとう。グリードさんは船乗り達みんなの恩人だ。何かあればいつでも言ってくれ。船員達みんなで力になる」


それだけ伝えるとゴモックは、3人に礼をして退室した。

ここでもグリードの影響力を目の当たりにして


「世の中には知らない凄い人たちが沢山いるんだろうな」


ネイトは二人の師匠を思い浮かべながら呟いた。






〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



「ここまでにします」


「え?」


ネイトの言葉にジョンは止まった。


「あの人がジョン殿の後ろから睨んでくるものですから…」


ネイトからそう聞いてジョンは後ろを振り返ると


「やっと私の順番のようね」


そう言い古の魔女が木陰から姿を現した。


「ははは…」


ネイトは乾いた笑みを浮かべた。

最近タイミングを見計らってしょっちゅうジョンに魔法を教えたがる人だ。


「カレンさん。今日はどんな魔法を教えてくれるんだい?」


そう言ったジョンに無属性魔法が飛んでくる。


ゴツッ


「いてっ」


痛がるジョンに


「何が『いてっ』ですか。楽園に痛みはありませんよ。それに私の事は先生か師匠と呼ぶように言いましたよ?」


押しかけ教師のクセに…と思いながらも実際習ったら魔法も楽しかったので、ジョンは姿勢を正した。


「それにまだまだ魔法は教えれません。今日も基礎です。

ジョンさんみたいに覚えが悪い生徒は教えがいがあるので指導者冥利に尽きますね」


そう微笑むと無詠唱でジョンの身体を持ち上げて剣聖ネイトの前から遠ざかる。






「さぁ、前回の続きですよ?まずは身体の中の魔力を十全に使いこなせるように頑張りましょうね」


この世界の魔法は身体の中にある魔力と呼ばれる力を使い行使する。

身体の中の魔力量は個人差があり、鍛錬で伸びる事もあるがそこは才能による。

では、何故鍛錬をするのかだが、量は少ししか伸びなくとも身体のうちに潜む魔力の質が上がる為だ。

お酒のアルコール度数と同じように量は同じ1リットルのお酒だとしても中身のアルコールは度数によって変わるように。

度数が高ければ少しの量で酔えるように、魔力の質が高ければ少しの魔力で魔法を行使出来る。

ただアルコールと違うところは、100%を魔力の質は超えられることだ。

もちろんそんな人は人に在らず、この古の魔女『カレン・スクァード』のみ。


現世の世界で一番の魔法使いの魔力濃度ですら50%以下だ。

平均で10%前後。今のジョンは数%だ。


この鍛錬を続けること2年


「そろそろいいかしらね。魔法を教えるわ」


カレンの言葉に時間の概念がない楽園(エデン)でもジョンはやっとか…と思った。


「まず魔法とは、身体の内から外の世界へ干渉する事の名前よ」


カレンの説明に頷くジョン。


「剣聖さんが使っている氣とは似て非なるわ。

私の魔法は他の魔法使いと違い、独自の詠唱から世界に干渉するわ。

まずは一般的な魔法は、イメージを具現化すると言えばいいでしょう。

その為、常に同じイメージをしないとせっかく覚えた(具現化出来た)魔法が少しイメージが違うだけで使えなくなる(発動しなくなる)の。

だから、詠唱が出来たのだけど。

これは私からしたらお粗末なものよ。イメージばかりに偏った詠唱で、干渉が上手くなく、威力も燃費も悪いわ」


カレンの説明を聞いたネイトは大した事が出来ないなら剣だけでいいなと思うが、目の前のカレンを見て思い直す。

カレンはネイトの剣の鍛錬にも時々参加していて、カレンの放つ魔法をネイトが剣で捌いたりする鍛錬だが、一度も前に足を進められた事がないのだ。

それほど魔法が速く、発動も速く、威力も狙いも一定していた。

それをカレンは本を読みながら行っていたのだ。

その本自体も魔法で浮かせながら。


そんなネイトを現実に戻すようにカレンは話しを再開させた。


「私の編み出した詠唱はイメージではなくて干渉に重きを置いたものよ。

火魔法で言えば、イメージでそこにない火を一から作る従来の魔法とは違い。

そこに見えない火の元になるものに干渉して火を付けるのよ。

水魔法であればイメージで水を生み出さずにそこにある水や空気に含まれている水分などに干渉するわね。

細かいところは私の長い研究あってのものだから説明は省くわ。もし聞きたかったら150年ほど時間を空けてから来なさいな」


まだまだ剣術の修行がしたいジョンは当分無いと考えた。



さらに2年後


「これで殆どの戦闘に関する魔法の詠唱や使い方は教えたわ。後は詠唱を短くしても干渉出来る様に訓練を続けることね。簡単な干渉ならすでに無詠唱で出来ているのですから、あと30年くらい頑張れば短く出来ると思うわ。

間違っても私がいない所で広範囲魔法は使わないように。ジョンさんが一人で使ったら、制御不足で楽園を傷つけて追放されてしまうわ。

今のジョンさんの実力は元の世界では一流以上の魔法使いね。私の居た時代と大差ないならですけどね」


その言葉にジョンは


「カレン師匠のような便利魔法は教えて頂けないのでしょうか?」


「それはダメね。魔法は便利なものだけれど、それにいつも頼っては人はダメになるわ。

もし使いたいならご自身で習得されることですね」


自身の事を棚にあげた発言にネイトは白い目で見つめる。




それから先はご存知の通り、ジョンは食べ物を探す旅に出る。

この無限の世界で剣と魔法を学んだジョンは、ネイトになり元の世界で何を成すのか。

この先はまだ誰も知らない。


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