84 お前はあの時の!
宿に帰ったネイトはギルドマスター(シシー)に言われたことを部屋にいた二人に伝えた。
「そうだったのね。ここはナンパ野郎はいるけど治安は良いから私は大丈夫よ」
ケイトの答えにカーラは
「私も大丈夫です。基本はケイトと行動しますし、都内であれば危険な所はないと聞いています。
もちろん出掛けても、日が落ちる前に帰ってきてネイトさんを待ってます」
二人の答えを聞いたネイトは
「二人ともありがとう。じゃあ、暫くここにいると言うことでいいな?
そうとなれば手紙をジャック達に出さないとな…」
ネイトの言葉を聞いたカーラは
「私もお兄様に…はぁ」
「ちょっと、二人とも!手紙を出すところがあるだけいいじゃないの」
テンションが下がった二人を見て手紙を待ってくれる相手がいる事の有り難さをケイトは説く。
「ケイトにはいないのか?」
「ネイトさん。いるじゃないですか…近衛騎士様が…」
カーラの答えにネイトは『ああ!』と気付いたが
「何故レイナードに送らないんだ?」
あまり聞いてはいけない事を簡単に聞けるのがネイトクオリティ。
「貴方も聞きづらい事を聞いてくるわね」
呆れたケイトだが
「色々理由はあるけど一番は負担になりたくないのよ。
レイナードさんは実家のゴタゴタと近衛騎士を直ぐには辞められないという事で板挟みになっているのよ。
本人は実家は継がずに妹である長女とその旦那様に継がせたいみたいよ。
近衛騎士は辞めても騎士年金が結構貰えるみたいで、早く何も気にせずに剣のことだけ考えたいって言っていたわ」
ケイトの答えを聞いた二人は『大人って大変だな』と思った。
「そろそろ魚肉の料理が届くかもしれないから下で待っている」
ネイトは逃げた。
宿の食堂にて
「こちらにネイト・スクァードさんと言う人はいますか?」
冒険者の格好をしたネイトと同い年くらいの少年3人が訪ねてきた。
食堂で待っていたネイトは
「俺がネイトだ」
応えると
「ネイトさんにお届け物です。後伝言を預かれと言われたんですがわかりますか?」
荷物を受け取ったネイトは
「ありがとう。伝言は明日の朝から伺うと伝えてくれ」
ネイトがそう言うと3人は宿を出ていった。
「美味そうな匂いだな。宿の人にこれを晩御飯にしてもらおう」
そう呟くとネイトは荷物を持って厨房へと向かった。
ガチャ
「荷物は無事届いた。宿の人に夕飯で出してもらうように頼んだ」
部屋に入ってきたネイトはすぐに伝えた。
「そう。そろそろお腹空いたし食べに行かないかしら?」
「賛成よ。ネイトさんはどうですか?」
「もちろん行く!」
匂いを嗅いだネイトはすでに腹ペコだ。
「こちらが頂いた料理になります」
従業員がそう言うと白い切り身に黒っぽいタレが掛かった料理がテーブルの上に置かれた。
「あの〜。本当に残りを頂いてもよかったのですか?」
従業員の言葉にネイトが
「予想以上に貰ってしまったから温かい内に食べてくれ。いつも世話になっている礼だ」
従業員はお辞儀をして下がったが、ネイトは言うが早いかフォークを持ってその料理を口に運んでいた。
「美味い!肉はボリュームがあるが口の中でホロホロになるし、肉が淡白な分このタレが甘辛くてクセになるな!」
「貴方そんなに詳しく説明出来る様になったのね…」
ネイトの解説にケイトが食の力は偉大だと感じた。
「ホントにその通りですね!これなら食の細い私でもたくさん食べれます!」
カーラがネイトに続いて
「あら…ネイトの言う通りというのが癪だけど…その通りで美味しいわ」
ケイトはネイトの食レポに白旗をあげた。
3人は和気藹々と食事を済ませてそのまま就寝した。
翌朝宿の入り口にて
「じゃあ、行ってくる。そっちは自由行動だが、気をつけてな」
ネイトの心配に
「わかってるわ。とりあえずの予定はカーラが手紙を書き終わったらネイトの分と合わせてギルドに行くわ」
「ネイトさんに見せていただいたあの夜景が中々文字に起こせません…」
カーラは難しい事に挑戦していた。
「そんなに難しいなら手紙は明日にして、今日は3人で見に行くか?」
ネイトの提案に
「ダメです!あっ、いえ、怒ってはいないです…。ただあの時の感動はあの時にしか味わえないので…」
徐々に尻すぼんでいくカーラの言葉の後、ケイトが
「はぁ。ネイトはこれだから」
首を振りながらネイトをディスった。
「いや、すまん。待たせたらうるさそうなギルドマスターだからとりあえず行く」
カーラの二人の想い出を大切にする気持ちは結局理解出来ず、逃げに徹した。
ギルドに行く途中にネイトは沢山の人に声を掛けられた。
(以下部分抜粋)
「おっ!魚を引いてた兄ちゃんだ!」
「お姫様抱っこ見ました!頑張って下さい!」
「みんな近寄るな!投げられるぞ!」
「海の魔物を狩るなんて凄いわ!」
「きゃー金髪の王子様よ!」
などなど中にはよくわからないものもあったが、ネイトが徐々にこの街で認知されてきている。
ギルドにて
「ネイトさんお待ちしていました。ギルドマスター室にいってもらっていいですか?」
カミラにそう言われたネイトは
「わかった」
一言返事をしてギルドマスター室に向かった。
コンコン
「ネイトだ」
中から
「どうぞ」
ガチャ
「早速ありがとうね。座ってちょうだい」
ギルドマスターに促され座るネイト。
「それで、どうなっている?」
主語のないネイトの言葉に
「昨日の海は海水浴客がいるから別の場所でして欲しいの。
それと荷運び人を用意したから受付に伝えてね。
場所はここよ」
ギルドマスターはそう言うと机に簡易な地図を置き場所を指さした。
「荷運び人に伝えたらすぐにわかるわ。頼めるかしら?」
「了解した」
ネイトは端的に応えると席を立った。
あまり長居をすると余計な事を聞かれるのを防ぐためだ。
部屋を出たネイトは受付に伝えて、荷運び人を呼んでもらう事になった。
暫くすると
「お待たせしました。今回の荷運びの仕事を請け負った、Eランク冒険者のルースです。こちらは仲間の」
言葉を受け取ったもう一人が
「同じくEランク冒険者のマイクです」
さらにもう一人
「同じくEランク冒険者のデュークです」
3人の顔を見て
「昨日ぶりだな。俺はBランクのネイトだ」
ネイトがそう言うと3人は顔を見て、声を揃えて『あっ!』と言った。
「今回もよろしく頼む。ギルドマスターから場所は聞いてるか?」
ネイトの言葉に3人の内のリーダー格のルースが
「はい!案内します!」
と、ハキハキ答えた。
「任せた」
3人はギルドを出て、目的地へと向かった。
道中
「それで気になっていたんだがそれはなんだ?」
ネイトが聞いた物とは…




