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72 海の前に川だろ!







襲ってきた冒険者を撃退した後、そのまま馬車は進み野営地で朝を迎えた。


「これからどうするの?」


カーラがケイトに問う。


「確か海に行くのよね?」


「そうだ」


食い気味にネイトが答える。


「ふふっ。そう言う所は年相応ね」


ケイトに笑われて苦虫を噛んだ顔をした。


「情報では、海は東の方にあるわ。真東ではないけどこのまま行くと諸島連合国の連合議事会都市、つまり王都のようなものがあるわ。そこも海に面しているから向かおうと思うのだけど、異論はあるかしら?」


ケイトの解説に


「異議なーし」


「任せる」


二人が答えた。


「じゃあこのまま次の町を目指しましょう」


3人はまた馬車に揺られる。





次の町にて

「えっ?船に馬車を乗せられる?」


ケイトの驚き声に話していた町人が笑う。


「ははっ!美人さんは驚いた顔も美人だな」


ケイトは恥ずかしくなり顔を朱色に若干染める。


「ありがとうございました」


頭を下げてその場を後にした。

そのまま近くで買い物を楽しんでいる二人を捕まえると、宿へと向かった。




宿の自室にて

「と、言う事らしいわ。二人はこの話しを聞いてどう思ったのかしら?」


ケイトの話しに


「楽しそうね!経験した事がないから是非乗ってみたいわ!」


カーラが喜色を示し


「ふ、船に馬車が乗るだと…」


ネイトは絶句していた。


「どうやら決まりのようね」


3人はまだ見ぬ船を想像して夢の世界へ旅立った。





「こっちで合っているはずよ」


本街道からそれて暫く進んでいるが川がない。


「大丈夫だ。たとえ違っていても引き返せば良いし、野営もお手の物だ」


「そうよ。リーダーは自信を持ってね」


二人のエールにケイトは気が楽になった。その時


「河よ!それも向こう岸が見えないくらい大きいわ!」


ケイトの視線の先には大河があった。


「これは凄いな。話しに聞いていた海ではないよな?」


「そうです。海ではないですね。聞くところによると海は波があるらしいですから」


二人で会話をしているが視線は河を見ていてどこか上の空だ。


「あれは…。船着場ね!」


ケイトが船着場を見つけた。


それもかなり大きく、木ではなく石を積み上げて作ってあるものだ。





船着場に着いたがまだ肝心の船が来ていない。


「聞いた話しによると今日の昼過ぎにここへ着くそうよ。

まだお昼だからもう少し待ちましょう」


ケイトが予定を立てた。


「それにしてもデカイな。向こう岸が見えないなんて湖みたいだ」


「はい。これなら馬車を載せる船があっても不思議ではないですね」


3人が他愛の無い話しをしているとネイトが一番先に気付く。


「おい。来たんじゃないか?」


ネイトの視線の先を見るが何もない。


「ネイト。ホントに?揶揄ってるんじゃなくて?」


「ネイトさんは一体何が見えているんですか?」


何故かいまいち信用されていないネイトだが


「来た」


その一言で二人はまたネイトの視線の先を見る。


「デカイわね…」


「あれは船よね…?」


「…」


3人は言葉を見失う。



3人の目の前には巨船がある。見上げても甲板は見えない。

何本もの丈夫そうなロープと滑車を使って馬車が船に上げられる。

ネイト達はすでに船上だ。


「すごーい!」


「壮観ね」


「魚が跳ねた」


3人の語彙力はへし折れた。

ネイトに至っては現実逃避している。



船の客室にて

「ケイト。これでこのまま乗っているだけで首都に着くんだよな?」


「そうよ。もう何もする事はないわね。

大体3日くらいで着くそうよ。もちろん色んなところで停泊するみたいだから途中で下船も出来るみたいだけどね」


「そうか…素振りでもしてくる」


すでに暇を感じ始めたネイトは剣に生きる。





「あっ!ネイトさんここに居たのですね」


甲板で素振りを終えたネイトは手すりに前のめりにもたれ掛かって、河を眺めていた。


「カーラか。どうした?」


ネイトの言葉に首を振りながら横の手すりに同じようにもたれ掛かった。


「何にもないですよ。ネイトさんこそ何をされているんですか?」


「こうしてボーッと過ごした事が無かったからな。いま初めてしてみたがたまには良いものだ」


年寄りのような事をいうネイトに


「幸せって、そういうものではないですか?」


カーラの発言に驚愕した。

確かに今は船の上で二人を襲う人はいないから気も張っていない。剣も確認程度の素振りに留めている。

ジョンの時には無かった時間だ。ネイトはしたい事、なりたいモノ、見たいモノはあれど、幸せについては一度も考えた事はなかった。


「これが幸せか…」


ネイトが噛み締めるように呟いた言葉に


「まだまだたくさん幸せな事はありますよ。

ネイトさんは美味しい物を食べている時も幸せですよね?同じように、綺麗な景色、見たこともない物を見た時とかもじゃないですか?

私の幸せはみんなで仲良く旅が出来ている、今です」


よくよく思い出せばネイトも二人と旅をしているときは心からの喜びを感じていた。

幸せは常に側にあったのだ。ただ皆、気付かないだけで。


「俺も今、幸せだ」


ネイトは真っ直ぐカーラを見て言った。

その日のカーラはネイトを見る事が出来なかった。もちろん顔が赤くなるからだ。





翌日

「何だか騒がしいな」


何やら船内がざわついている。まだ日が登ってそんなに時は経っていない。

ネイトは眠たい目を擦り船室を出て甲板へ向かう。




「早く帆を張れ!」


船員が慌てて叫んでいる。

辺りは船員だらけだ。


「何があった?」


近くを通り掛かった一人の船員を捕まえて問う。


「乗客か?ここは危ないから暫く船室から出ないでくれ」


そう言われた矢先に


「賊が来たぞ!」


ネイトが手すりから身を乗り出して河を見たら、小さな船がこちらを目指してやって来ていた。

小さいといってもこちらがデカすぎるだけで、10mくらいある。


「このままでは追いつかれる…」


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