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71 リーダーって誰?






昨日お酒を飲んだケイトだったが、何とか朝食に間に合う様に起きることが出来た。


「おはよう」


「「おはよう」」


ネイトとカーラが食堂でケイトを待っていた。


カーラが問う。


「気分はどう?」


「量は飲んでいないから大丈夫よ」


3時間も飲み続けていて、量は飲んでいないと言ったケイトを、二人は未知のものを見るかの様にケイトが食事を終えるのを黙って見ていた。




いつも通り準備をして宿の前で


「行くわよ」


3人は馬車に乗り込み町を後にした。


暫く進むと

「速度を落とせ」


ネイトが警告を発した。


「どうしたの?」


「何かあったのですか?」


二人の問いに


「この先で5人が隠れている」


「「え!?」」


「多分あの時の冒険者じゃないか?」


ネイトは目視では無く気配察知で人の存在に気付いた。


「魔物や動物の気配ではないな。アイツらは人間と気配の殺し方が違う。

そして狩人なら固まらずにバラけて気配を消す。

新人の冒険者が獲物を待っている線も街道沿いでは考えられない。

つまりは賊だ」


ネイトの解説が終わる頃には馬車は人が歩く速度くらいまで速度を落とした。


「俺たちが獲物かわからないが、馬車を傷つけられたら困るからここで止まろう」


「わかったわ」


ケイトは手綱を引き寄せて馬車を完全に止める。





隠れている者達にネイトが近づき声を掛ける。


「俺たちに何か用か?」


暫く待つと返事が返ってきた。


ビュン


キンッ


「矢が返事代わりと言う事は死んでもいいと言う事だな」


明らかにネイトの頭を狙った矢を叩き落として、向こうに躊躇はない事を知ったネイトは行動に移る。


向こうから散発的ではあるが矢が飛んで来る。

そこに向かいネイトは剣を一閃した。


ヒュン


ザシュッ


「ぐあぁっ」


「何だ!?」


不可視の刃が飛んできて射手がやられた。


「魔法使いか!?剣士じゃなかったのか!?」


男達に動揺が走り、隠れていた茂みから飛び出して来た。





「ガキがっ!魔法使いと分かればもう怖くねぇ!」


「さっさとガキを()って女どもを攫うぞ!」


男達の言葉を聞いてやはりケイト達が狙いか、と分かったネイトは躊躇しない。


「二人に手を出そうとした事を、あの世で後悔しろ」


ネイトはそう言うと一瞬で男達に肉薄して


シュンッ

シュンッ

シュンッ


3人の命を絶った。


「ひっ!ひぇえ」


残った一人の脚の腱を切って逃げれなくしたところで詳しく話しを聞く事に。


「いでぇー。やめてくれぇ」


痛みと恐怖で喚いている男に


「お前達は弱い者を襲おうとしていたろ?

自分達が同じように襲われる覚悟もなかったのか?」


ネイトはまるで理解出来ない別の生き物を、見るかのようにしている。


「あの二人を攫ってどうするつもりだった?」


わかり切った事だが剣先を向けて一応尋ねる。


「ひっ。喋るから殺さないでくれ!」


男は懇願するようにネイトを見るがネイトは何も答えない。


「国境で見た時に仲間の一人が良い女達だから攫って手籠めにしようってなったんだ!

俺はやめようっ…」


男の言葉はそれ以上続かなかった。

身体から喋る器官とそれを考える器官が、切り離されたからだ。


ネイトは周りに他の気配が無いか確認すると5人を集めた。


『ファイア』


ネイトの願いを魔法が叶えて男達は灰となった。





馬車に乗り込んだネイトは二人に隠さずに理由を説明した。


「やっぱりあの時の奴らだったのね。あんな奴がいるからレイナードさんが冒険者の事を決めつけてしまったのよ!」


珍しくケイトの語気が荒い。


「ネイトさん。私達のせいですみません…」


カーラはネイトに殺人を負わせた事を悔やむが


「二人の所為じゃない。アイツらは他でもしている。むしろ向こうが仕掛けたのが俺と一緒にいる時で良かったと思っている」


「そうね。ネイトといないとどうしようもなかったわ。

それにネイトも男を狂わせるほどの美人二人と旅が出来て光栄よね?」


沈んだカーラを慰める為にケイトは冗談を含めて返した。


「そうだな」


ボソッと答えたネイトに伝わっているのかは不明だ。


「カーラ。俺が剣を振るうのは、いつだって自分と仲間の為だ。これからも守らせてくれ」


ネイトの言葉に


「はい!守られます!」


笑顔のカーラが答えて


「私の身を挺した冗談は?」


ケイトの呟きは諸島連合国の風に流された。



3人は馬車に揺られて旅路を行く。


「今日はあんな事があったけど野営よ。いいかしら?」


「いつも任せてすまないと思っているが、やはり任せる」


「リーダーに任せるわ」


遂に名実共に旅のリーダーは無事にケイトに決まった。

もちろん決めていなくても何も変わらないが。


「リーダーっていいわね!何だかキャラバン見たいね」


思いの外、ケイトに刺さった。


「キャラバンとは何だ?」


ネイトの疑問にここぞとばかりに


「キャラバンとはですね。

元々の由来は違いますが、この辺りでは沢山の馬車や人などが集団で行動する事を指します。

国同士での大きな取り引きなどは必ずキャラバンと護衛になりますね。

ようは、沢山の商人の集団だと思って頂いて、間違いないです」


カーラが説明した。


「そんなのがあるんだな。まぁ、この旅のリーダーは間違いなくケイトだと言うのは異論ない」


「はい!」


先程襲われた筈なのに終始和やかに賑やかに馬車は次の目的地まで街道を進む。

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