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64 合流のその後に






宿舎にて仮眠をしているネイトの元に、騎士が扉越しに声をかけてきた。


「ネイト殿、お仲間が領都に着かれるそうです」


扉の向こうに


「わかった。今出る」


そう答えたネイトは支度をして部屋を出た。






領都の門前にて

「何か物々しい集団が来たが?」


ネイトが側にいた騎士に問う。


「あれは…近衛騎士団ではないでしょうか?」


ネイト達の前には街道をこちらに向かってくる200人以上の騎馬がいた。

それに守られるように馬車が2台いる。片方は馴染みのあるモノだった。


「あれは俺達の馬車か?何故この集団に?」


ネイトの疑問の声は領都の空に広がり誰にも届かなかった。





「ネイトさーん!」


「ネイト様ー!」


二人の少女が馬車から身をのり出し、手を降ってきた。

馬車が2台ともネイトの前で止まる。


「ネイトさん!ご無事で何よりです!」


「ネイト様!お怪我はありませんか!?」


二人の勢いに下がりそうになる身体を、何とかその場に留めて


「大丈夫だ。そちらも変わりないか?」


「大丈夫よ。レイナードさん達が護衛してくれたからね」


ケイトが答えた。


「私達の命と街を救ってくれた事、礼の言葉もない…だが、一先ず言わせてくれ。ありがとう」


そう言うと領主は頭を下げた。


「父上が頭を…?なぜ?一介の冒険者ではないのか?」


領主の馬車が見え、こちらに来ていた青年が呟く。

それを拾った領主は


「無礼は働いておらぬな?」


慌てた青年は


「も、勿論です」


青年はそう言うがまだ名乗ってすらいない事に気付き、慌てて名乗りを上げた。


「ゆ、ゆっくり休めたかな?

それでバタバタしていて名乗りが遅れて申し訳ないが私はユリウス・ド・ヴァロワと申す」


「ネイトだ。改めてよろしく」


ネイトは全く気にしていない。どころか名前を聞いたら覚えなくてはならず、逆に表情が曇りそうになる。


「クロード殿。俺達は街の宿を利用したい。その為にこの場を後にするがいいか?」


「相分かった。こちらの騎士に案内させよう」


そう言うと一人の騎士が案内をかって出た。


「ありがとう」


「「ありがとうございます」」


3人は感謝の言葉と共に馬車に乗り込みその場を後にしようとしたが


「ネイト君!」


その声にネイトが振り向くとそこにはレイナードがいた。


「王都に連絡が入り第一部隊として近衛騎士200とこのスタンピードの騒ぎに駆けつけたんだけど。君に借りが増えたね。

ありがとう。疲れているところ引き留めて済まない。ゆっくり休んでくれ。また後日話そう」


「わかった。感謝も謝罪も要らないがまた後日な」


ネイトがそう言うと馬車は騎士に先導されて街に入る。








「こちらが領都にて1番の宿になります」


そう聞いて3人が見上げたのは王都の宿に勝るとも劣らない立派な建物だった。


「立派ね」


「ちゃんとお風呂に入れそうね」


「飯も期待できそうだな」


上からケイト、カーラ、ネイトの三者三様の感想が出た。


少ししたら宿の人と騎士が出てきた。


「いらっしゃいませ。この度は英雄様をおもてなし出来る栄誉を承り、従業員一同誉れに思います。

ごゆっくりくつろげるように尽力致しますので、至らない点がありましたら何なりと申し付け下さいませ」


それを聞いた3人はネイトを代表にして


「そんなに畏まらないでくれ。普通の接客と普通の食事が食べたい。

こちらこそ世話になる。よろしく頼む」


「はい。ではお部屋にご案内させて頂きます。

馬車は店の者が裏の厩舎に持っていくので手持ちの入り用の物だけこちらの者に運ばさせて下さい」


そう言われて3人は馬車から貴重品などをおろす。


「では、私はこれにて。何かありましたら領主の館か騎士団詰所までお願いします」


そう伝えて騎士は踵を返した。







宿の部屋にて

「部屋の広さは王都の宿で取った部屋の3倍くらいあるわね」


「見て下さい!ベッドルームが2部屋あります!

一部屋は荷物置き場にしましょう!必ず」


ケイトは部屋の広さに落ち着かず、カーラはネイトと一緒の部屋で過ごしたいが為に多くない荷物を片方のベットルームに入れようとするが


「俺がこの部屋で寝るよ。みんなの荷物は入れて構わない」


ネイトによってカーラの浅はかな考えは水泡に帰す。


ショックを隠せないカーラを置いてケイトが


「あの後、領都の近くの村で騒動が終結するまで待つ事になったのだけれど、夜になって村に近衛騎士団が来たのよ。

それで私たちがネイトも向かった事を伝えたらレイナードさんが護衛も兼ねて一緒に向かう事にされたのよ」


「なるほど。ケイト達をどうやって呼ぼうか悩んでいたから助かったな」


ケイトは話しを続けて


「それにこんな事になったのだから明日は大変ね」


えっ?なんでだ?と思っているネイトに


「ふふっ。なにその顔。

街の英雄を放って置くわけないじゃない。

頑張って褒められてきなさい」


頑張ることではないがネイトにとっては頑張る事なのだ。


「とりあえず今は休ませてもらう…」


意気消沈したネイトは寝室に向かった。

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