52 王都剣術大会開催
ネイトは無事に大会当日の朝を迎えた。
あの少女は貴族のコネを使いネイトを探していたがソロの冒険者だと思われていた為、一部屋に3人で泊まっているネイトは捜索の範囲外であった。
「おはよう」
「おはようございます!いよいよですね!私の方が緊張してきちゃいました!」
カーラが笑顔で挨拶をしてきた。
「二人ともおはよう。ネイトはいつも通りね。怪我には気をつけなさいよ」
ケイトがそう言ってくるがネイトは治癒魔法が使える。
これはネイトとカーラしかまだ知らない。ネイトも伝えようかと思ったが、必要になった時でいいかと思い直す。
カーラは二人だけの秘密だと今気付いた事で顔に出さまいと必死だが
「どうしたのカーラ?ネイトと何かあったの?」
すぐにバレた。
「なにも無いわ!」
誤魔化すのが下手である。
大会会場前にて
「じゃあここまでね」
「ああ」
「ネイトさん。応援してます。無事に帰ってきて下さいね」
カーラの心配そうな顔に
「大丈夫だ。安心して応援してくれ」
力強い言葉で返すネイト、そこに
「おはよう。みなさん」
レイナードが現れた。
「レイナードさんも気をつけて下さいね」
ケイトが声を掛けた。
「ケイト嬢。君には強引に迫ってしまって済まないと思っている。だが、どちらにしてもそれももうすぐ結果が出る」
レイナードは一呼吸置き
「ネイト君。明後日の決勝を楽しみにしているよ」
「ああ。期待している」
ネイトにしては少し挑発して返した。
「!ははっ!そうじゃないとね。それじゃあ決勝で。
ケイト嬢は決勝までは応援してくれると嬉しいね」
「もちろんです。怪我のない様に祈っておきます」
「ありがとう」
そう、一言を残してその場を去っていった。
「じゃあ俺も行ってくる」
そういい、ネイトも二人の元を去っていく。
開会式も滞りなく済み、剣術大会が開催された。
本戦と言えど王国中から128人出ているので、今日はこの試合会場に二つの試合場が設置されて3回戦までが行われる。
明日からは1つの試合場になる。
ネイトは後の方の順番なので呼ばれるのを控え室で静かに待っていた。
アナウンス
『パラディール代表、Bランク冒険者、ネイト・スクァード』
ネイトの名前がコールされたので試合場に向かう
相手の選手はすでに来ているようだ。
「えっ?Bランクなのに若くない!?」
「きゃーカッコいい!」
「えー私はレイナード様の方が断然いいわ」
「おいおいガキじゃねーか。お漏らしするなよー」
様々なヤジが飛ぶ。
審判
「これより第一回戦、56試合を開始します。お二人ともルールは把握していますね?
では、始め!」
開始の合図とともに相手は飛び出してきてネイトに肉薄する。
「きぇいっ」
気迫とともに剣が振り下ろされる。
ひゅんっ
空を斬る相手の剣をしっかりと目で捉えながら、カウンターを相手の鎧の上から脇腹に当てる。
ガインッ
「ぐえっ」
相手は脇腹を押さえたまま伏せっていた。
「勝負あり!勝者ネイト・スクァード!」
審判の判定の後
「うぉおお!小さいのにやるなぁ!!」
「きゃあーこっちに手を振ったわ!!」
騒ぐ観客、ネイトはもちろんケイト達に手を振ったのだがそれは他の人達にはわからない。
ネイトは控え室で今日選んだ武器を眺めていた。
(重心が近いものを選んだが次は違うのにしよう)
お気に召さなかったようだ。
その後の二試合も同様の結末だった。
その二試合で剣の選択のコツを掴んだネイトは明日には自分に合ったものを選べそうだと考えていた。
宿の食堂にて
「お疲れ様!圧勝だったわね」
お酒も入ってご機嫌なケイトだ。
「怪我がなくて本当に良かったですが応援のしがいはなかったですね」
こちらは何故か自分の事のように得意げなカーラだ。
「二人ともありがとう。明日もこの調子で準決勝に進めるように頑張るよ」
剣の事になると油断も驕りもなく隙がないネイトだ。
「頼もしいねケイト!」
「そうね。ただ彼も順調だったわね」
やはりレイナードの事が気がかりなようだ。
「試合を見ていたが一撃も貰っていなかったな。
あの重そうな鎧を着てあの身のこなしは称賛に値する。武器以外は自由なルールだからあの鎧の防御力を超える攻撃が繰り出せるかが勝負の鍵になると思う。
が、問題ない」
冷静な分析の後、揺るがない自信を見せてケイトを安心させる。
二人はそんなネイトを見ながら話しを剣術大会の盛り上がりやネイトのファン?に焦点を当てて話しを咲かせる。
「あの少女に見つからなければいいな…」
誰にも聞かれなかったその呟きを残してネイトは部屋へと戻った。