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49 痴情のもつれ







「ネイトさんこの後飲みに行きませんか?」


食事を終えた二人は店を出たところでカーラがネイトを誘う。


「構わない。明日に差し支えない程度なら」


「はい!先程の店の人に聞いたらいい店を教えてもらいましたのでそこでいいですか?」


「ああ。そこにしよう」


「カップルがよく行く店らしいです…」


消え入りそうな声でいうカーラに


「そうか」


と、だけ答えたネイトだが本心はどうなのかネイトにもわからない。










「ただいま!」「ただいま」


「おかえりなさい」


二人を出迎えたケイトは今日の事を報告した。


「そうだったの…」


「いいのか?」


ネイトの確認に


「もちろんよ。私は旅がしたいのよ。見た事のない景色や文化に触れたいの。

それに今は一人じゃなく三人だもの。二人が結婚して旅を辞めると言うまでは一緒よ」


サラッと爆弾発言をいったケイトを、目を見開いて驚くネイトと顔を真っ赤に染めたカーラが見つめている。


「私とネイトさんはまだ付き合ってもいないわよ!」


「まだって事は近々ってことね?」


そう揶揄うケイトに満更じゃないカーラが可愛く怒る。

そんな女子会の様相についていけないネイトは早々に布団に潜った。









翌朝食堂にて

「今日もよろしくね」


「お願いしますね」


「ああ。立ってるだけだかな」


「平和はいい事よ」


そんな事を喋りながら朝食を平らげた三人は宿を出る。









夕方

「今日も凄い売れ行きだったな…

そして俺は相変わらず立っているだけだったな」


「ネイトさんはいるだけで安心できるので何もしてない事はないですよ」


ナチュラルにいちゃつく二人に


「ネイト。片付けは手伝ってね。カーラは顔がニヤけてるわよ」


その指摘に真っ赤になって顔を覆うカーラ。

そこに


「ケイト嬢!皆さんもこんにちわ」


近衛騎士レイナードだ。


「レイナードさん」


「ケイト嬢、今日は君の護衛と話しがしたいんだ。いいかい?」


「それはネイトが良ければ構いませんが、正確には護衛ではなく仲間ですよ」


「それは済まない」


謝ったレイナードは敵意を隠さずネイトを見ると


「君は剣術大会に出るそうだね。トーナメント表を見たが決勝で当たる様だ。もちろん君が負けなければだが。

負けた方がケイト嬢を諦めるというのはどうだ?」


レイナードの言葉に真っ先に反応したのはカーラだった。


「待ってください!ネイトさんはケイトの仲間でそれ以上ではないです!

それにケイトが私たちと一緒にいるのは彼女の意思です。

ケイトやネイトさんを蔑ろにしないで下さい!」


「カーラ嬢。済まないと思うが今は彼と話している」


レイナードは冷たくいう。


「俺は仲間を賭け事に使うつもりはない。

それにケイトは大切な仲間だ。ケイトがいなければ旅はうまくいかない。

諦める必要も理由もないな」


ネイトが答える。


「私もケイト嬢を諦める事は出来ない。もし君が仲間を助けた恩義を感じているなら応じてほしい」


「恩義も感謝もしているが先程と答えは変わらない」


それを聞いたレイナードは


「ケイト嬢。頼む。君を諦めたくない。

ケイト嬢が話しを飲むなら君はどうなんだ?」


「ケイトがそれを望むなら応じるまでだ」


「聞いたかい?君にお願いだ。私にチャンスをくれないか?」


それを聞いたケイトは


「ネイト…」


「大丈夫だ」


二人が意思疎通を計り


「わかりました。ネイトに勝ったら考えますね」


ケイトが答えた。


「ありがとう!

私はやはり冒険者が嫌いだが…ネイト君、約束の為にも勝ち上がって来てくれ」


そう言われたネイトは


「ああ。話しは終わりでいいか?片付けがあるものでな」


「それはすまない。

私は近衛騎士の代表だから大会終了まで休みなんだ。ケイト嬢良かったらこの後…」


レイナードの誘いにケイトは


「すみません。昨日も二人に押し付けたのでまたの機会に…」


「そうか…。また会える時を楽しみにしているよ」


最後は笑顔でケイトに手を振り去っていった。

それを見届けたケイトは


「ネイト、ごめんなさい」


謝る。しかしネイトは


「俺は構わない。する事は変わらないからな」


淡々とした言葉を聞いて


「凄い自信ね。私の旅のためにも優勝してね!」


「俺達の気楽な旅の為に頑張るさ」


ケイトの激励に珍しく笑って応えたネイトだった。


「ネイトさん!私の為でも戦ってくれますか?」


「当たり前だ」


会話から離れて寂しそうにしていたカーラの問いにネイトは即答した。



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