48 紳士なのかどうなのか
ケイトたちのバザーが終わる頃、近衛騎士のレイナードが現れた。
「来てくださったのですね」
ケイトが初めて見せる顔を見て驚くネイト。
「ああ。君に会いたくてね。仕事が終わったと同時に飛び出したから同僚はびっくりしているだろうね」
白い歯を見せて笑う。
「なんて爽やかなの…」
カーラが慄く。
「あっ!そうです。私の仲間達を紹介させてください」
ケイトがそういうとレイナードという騎士がネイト達に向く。
「こちらは先日も会ったとおもいますが改めて…」
ケイトに促されて
「カーラです。昨日は助けて頂いてありがとうございました。美貌の騎士様にお礼が言えて光栄です」
「いや、ケイト嬢にも伝えたが悪い思い出は忘れてくれ。しかしお礼は受け取ったよ」
爽やか過ぎてカーラには響かない。
「それでこちらが私たちの仲間であり護衛の…」
「冒険者のネイトだ。仲間が世話になった。感謝する」
頭を下げて礼をしたネイトを見て固まるレイナード。
「どうかされましたか?」
ケイトが訝しげに問うと
「い、いや。何でもない。ところでケイト嬢。今日も夕食をご一緒したいのだが…」
気がきくカーラが
「ここはネイトさんと片付けるから行ってきなさい」
急に振られたネイトは面を喰らうが
「わかったわ。ありがとう!
レイナードさん。行きましょう」
「ああ」
二人を見送る二人だった。
片付けを終えた二人は
「ネイトさん!宿に帰ったら夕食をキャンセルして私と二人で街で食事しませんか?」
カーラが意を決してネイトを誘う。
「そうだな。宿以外の飯も食べてみたい」
カーラの意図とは違うが結果良ければである。
宿の前
「では、行きましょう!」
「ああ」
ネイトの腕を取りご満悦のカーラ。
「何処に行く?」
「実は行ってみたいお店がありまして…」
「わかった。任せる」
ネイトの返答に顔を綻ばせて
「はい!」
笑顔でネイトの腕をとるカーラを見てドキドキしているネイトは
『これは…もしやデートというものでは!?』
と思ったのだが
もちろん正解だ。
夕食を食べ終えたケイト達は話しをしていた。
「今、なんておっしゃいましたか?」
ケイトはレイナードに聞き返す。
「冒険者との付き合いはやめて欲しいと頼んだんだ」
「なぜでしょうか?」
レイナードの言葉に疑問を投げる。
「冒険者は嘘をつく、卑怯な事をする、すぐに犯罪に手を染めるからだ」
いつもと違うレイナードの様子にケイトは困惑する。
「それは偏見ではないでしょうか?」
ケイトの言葉を受けたレイナードは
「これまで沢山の犯罪者を捕まえて来たが冒険者崩れのものは圧倒的に多かった。
私の友人の妹は結婚が決まっていたのに酔っ払った冒険者に襲われてそれを苦に自害した。
こんな話しはごまんとある」
「そうでしたか。そのお嬢さんとご家族にはお悔やみ申し上げます。
ですがネイトは違います。仲間の為に身を犠牲にします。強いですがそれを笠にきません。
確かに冒険者の素行が悪い話しは沢山聞きましたが、ネイトは当てはまりません」
ケイトはキッパリと言った。
「君は…あの男の事が…
いや、これも自分の弱さか」
一人ぶつぶつと言っていたレイナードが
「確かにそれで人は測れないね。悪かった」
「いえ、レイナードさんならわかって頂けると…」
ケイトの言葉を遮り
「だが!男として逃げられない事もある!
ケイト嬢!その男に勝ったら結婚してほしい!
もちろん君は物じゃないからこの様な決め方は良くない。
だが、私はそれでも君を譲りたくない!
もちろん負けたら潔く身を引くよ」
「あの…勘違いされています…ネイトの事は仲間として大切ではありますが男性としてはレイナードさんがタイプというか…」
ケイトは段々と恥ずかしくなり顔を赤くして最後は言葉に出来なかった。
「ありがとう。じゃあ改めて、私と結婚して欲しい」
暫くの沈黙の後
「ごめんなさい。私はまだ旅を辞めれないの…」
「では、約束してくれ。剣術大会で優勝したら考え直してくれると」
結婚しろと言うのではなくあくまで考え直してほしいと言うところがレイナードが紳士たる所以か。
「一人の事ではないのでみんなと相談させてください…」
悲しそうなケイトの表情を見て
「済まない。しかし、君を諦められないんだ」
この二人の恋の行方がどうなるのかはまだ誰も知らない。