42 旅は道連れ
その夜
「盗賊はどうするんだ?」
ネイトの質問にケイトは
「もう用はないから殺しましょう」
女性達への仕打ちに憤りを感じていたようだ。
「いいのか?」
「王都に連れて行ってもよくて縛り首よ。
それなら苦労して運ぶ必要はないんじゃない?」
冷めた考え方に聞こえるが、ここでは普通の感覚だ。
特に旅人、行商人は盗賊の被害に悩まされている。
「わかった」
ネイトの返事に
「待ってください!」
「どうしたカーラ?」
カーラがネイトの予想していない言葉を言う。
「私が殺します」
それを聞いたケイトは何があったのか分からず、疑問を浮かべて名を呼ぶ。
「カーラ?」
「何故カーラが殺すんだ?」
ネイトは素直に理由が気になった。
「それは私も同じです!何故ネイトさんが人を殺さなきゃならないんですか?平気なわけないです!」
カーラは瞳に涙を溜めて訴えた。
「そうね。私達でも出来ることまで甘えてたわ」
ケイトは反省したがネイトの考えは
「いや、待て。俺は少なくとも冒険者で常に相手が人じゃなくても命のやり取りをしている。
それを守る対象の行商人の仲間二人にさせるわけにはいかない」
ネイトは争い事は自分の仕事だと訴えたが
「そうだとしてもネイトさんだけに背負わせたくないんです!
私に苦しみを分けてくれませんか?」
泣きながらカーラは訴える。
「ありがとう。その言葉だけで救われる」
ネイトが仲間達の想いに感謝を示した。
「じゃあ!」
「ダメだ。俺はカーラを助けるために初めて人を殺した。
始めは何か心境に変化があるかと思ったが何も無かった。
何故かはすぐにわかった。大切な人を守った事の方が大事だからだ。
俺はこれからも仲間の為なら、二人を守る為なら戦う。
だからこれは俺の役目だ。
一緒に背負ってくれるだけで十分だ」
そう告げるとネイトは盗賊を縛っていたところへ歩いていく。
残されたケイトはもう一人の残された人物へ
「カーラ…あなたは凄いわね。ホントにネイトの気持ちに寄り添っているわ。私は仲間失格ね」
「失格なわけないじゃない!旅の事は全部ケイトに任せているし何もしてなくて失格なのはわたしよ!」
「ふふっ。お互い頑張りましょうね」
「ふふっ。そうね」
お互いがフォローし合えている。
二人の元に帰ってきたネイトが言ったのは
「すでに事切れていた」
「「え!?」」
驚く二人に予想を言う
「多分女性達だろう」
それを聞いた二人はどこか納得して
「そう。じゃあ私達は寝るわね」
「おやすみなさいネイトさん」
「ああ」
三人の一抹の思いを知らず夜は更けていく。
「じゃあね」
「二人も元気でね」
3人のうち1人の里の村に着いていた。
「娘を助けていただきありがとうございました」
女性の親が生きて娘が帰ってきた事に泣いて感謝している。
「私達はいくわ」
「はい。2人をお願いします」
村に帰れた女性がケイト達に二人の事を頼む。
「ええ」
3人と女性2人は王都への道を行く。
王都まで後少しのところで
「前の馬車が何かに襲われているわ!」
「魔物だ。どうやらこの辺にはあいつだけのようだから行ってくる」
即座に目視と気配察知を使い周囲の状況を把握して、二人の安全が確保してある事に気付いたネイトは行動に移した。
「お気をつけて」
3人には日常茶飯事だが馬車の中の2人は魔物と聞いて怯えている。
「大丈夫よ。あの人めちゃくちゃ強いから」
「そうですよ!ネイトさんは無敵です!」
二人が笑顔で声を掛けたことで後ろの2人は安心した。
「終わったみたいよ。呼んでるみたいだから近づくわね」
遠くでネイトが手招きしているのが見えた。
「どうしたの?」
普段は人を助けてもすぐにその場を立ち去るネイトが留まっている。
「馬車の中の子供以外みんな死んでいた」
それを聞いたケイトは
「そう。じゃあその子を王都に送りましょうか」
続けてカーラが
「ネイトさん。子供なら女性の方が怖くないと思うので私とケイトで相手をしましょうか?」
納得の理由にネイトは
「そうだな。頼む」
ネイトは馬車から降りる二人の手を取ったら自分は馭者席に乗った。
二人は
「もう怖くないわ。怖い魔物はもういないから出てきてちょうだい。
お姉さん達と一緒に王都へ行きましょう」
「はい!向こうの馬車は楽しいですよ!行きましょう!」
怖いを強調するケイトと、まるで誘拐犯のようなセリフを言うカーラは、まだまだ子供を扱えないだろう。
ガチャ
扉が開いて出てきたのは
「お姉ちゃんたちは酷いことしない?」
8歳くらいの女の子と手を引かれて6歳くらいの男の子が出てきた。
「大丈夫よ!悪者はあそこにいるお兄ちゃんが倒してくれたから行きましょう」
笑顔で子供達に話しかけるケイトだった。