4 若返りの代償
『ルールを破りましたね。
罰則により…あれ?貴方何をしたのですか?』
そこには若返っているジョンがいた。
「何の事だ?ルール?そこの赤い果実を食べただけだが?」
『…』
「あれ?さっきのは幻聴だったか?」
『幻聴ではありません。貴方が食べたのは、
ここ楽園にある若返りの果実です。
普通の方はお腹が空かないので食べる事は無いのですが…
想定外の事ですし、貴方は若返った事により生き返ってしまいました。
ですので元の世界へ送還します。さようなら』
「えっ?元の世界?ちょっと待ってくれ!?」
ジョンの叫びも虚しく視界が光で埋め尽くされた。
「こ、こは?」
そこはジョンが一度死んだ場所であった。
「そうか…戻って来た…のか?」
さっきまでいた楽園が、夢か幻ではないかと思ってしまう。
「あれが夢じゃないなら魔法が使える筈だが…」
剣はもっていないので試す事は出来ないが、魔法なら杖などの触媒が無くとも使える。
「火の理に倣いここへ示」
『ファイアー』
ゴォウ
「うん。夢じゃなさそうだな」
詠唱を破棄しない魔法は威力が強い。
森が燃えない様に水魔法で辺りに移ってしまった火を消した。
「はじめから水魔法使えば良かった…」
ジョンは自分の焦り具合に溜息が出そうになる。
「とりあえず町に戻るか。
楽園での時間がそのままなら5年以上あれから経っている筈だ。
それに若返っているって言ってたし…」
見た目がどれほど違うのか水魔法で水を出して鏡の代わりにする。
「こ、これは…中々のイケメンだな!
15歳くらいかな?」
あちらのジョンの栄養状態、健康状態は最高でそのまま若返った事で見た目にも違いが出た。
「これなら誰にもわからないな…待てよ。
それなら別人として人生をやり直さないか?
よし!そうしよう!」
ジョンは産まれて初めて意気揚々と町へと向かう。
「ここは俺の家だったが…」
そこには何も無く、ただ更地になっていた。
「まぁ、どうせ何もなかったからな!
とりあえず冒険者ギルドに行くか!」
若返った事で小さな事は気にせず、前向きに捉えるようになっていた。
「初めまして。冒険者として働きたいのだけど、ここでいいのかな?」
ここが冒険者ギルドである事をジョンはわかっているが初心者のフリをする。
「はい!ここでいいですよ!」
ジョンが知らない若い受付嬢が、とびきりの笑顔で答える。
(見た目が少し違うだけでここまで違うのか…)
ジョンは何故か胸がチクリと痛んだ。
「こちらの項目をわかる範囲で構いませんので、ご記入下さいね」
(名前…何にするかな)
悩んでいるジョンに勘違いした受付嬢が
「代筆が必要でしたら気軽に言って下さいね」
と、気を使う。
「大丈夫だよ。ありがとう」
現世で人に気を使われたことがないジョンは、少し戸惑うが無難に答えれた。
(そうだ!師匠二人の名前を貰おう!)
『ネイト・スクァード』
『15歳』
『剣が使える』
(別に書かなくてもいいなら魔法と他の項目はいいや)
「これで良いかな?」
「はい!ネイトさんですね。よろしくお願いします。
登録料ですがひと月だけ猶予があるのですがどうしますか?」
新人冒険者はお金がなく焦りから無茶な行動を取ることがあるため、登録料の後払いができる様になっている。
「今は手持ちが乏しいから稼いだら払うね」
「わかりました。ギルドの使い方はご存知ですか?」
(知っているけどそれは不自然か…)
「教えてくれる?」
「はい。ギルドとは
1依頼を仲介する
2冒険者の利益を守る
3冒険者を管理する
ところです。
依頼はあちらのボードから取って来て貰ってそれをここで受領すれば受けた事になります。
失敗すれば罰則が色々とありますがそれはあちらの冊子で確認してください。
依頼料はギルドが管理しているので依頼を達成したらギルドで受け取れます。
冒険者は冒険者カードで管理されています。
これは身分証ですので無くさない様にして下さい。
再発行にはお金が必要です。
そして、皆さんが頑張るのはランクがあるからです。
ランクが高いとより高額な報酬の依頼が受けれます。
ランクを上げる方法は依頼を達成していく事です。
最初は最低ランクのFランクです。
EDCBASの順番でランクが上がります。
依頼は適正ランクがあるので受けれる依頼は限られますが下の依頼は受けられます。
魔物や素材の売却はランクに関わらずいつでも受け付けますので魔物を狩れたら持って帰って下さいね!
以上になります」
「ありがとう!とりあえずFランクの依頼を受けるよ」
ネイトは適当な依頼をいくつか受けてギルドを後にするが、精神(40歳)が肉体(15歳)に引っ張られている事にまだ気付いていない。