31 天才少年vs天才少女
少女の試合を観た3人は
「ホントに強かったわね…」
ケイトは素直に強さを褒めて
「はい…すごく可愛いのに…」
カーラは嫉妬の炎が
「どこにいたんだ?あんなに強いなら私に情報が来てもおかしくないはずだが…」
三者三様の感想が漏れる
「あの剣筋はこの辺りのものではないのではないですか?」
ネイトの感想に領主が食いつく。
「なに?」
「この辺りの騎士の剣筋ではなく異国の剣かと」
ネイトは領主の疑問に続けて答えた。
「そのような事をなぜ?
いや、大事なのは誰か、か…」
「私が知っているのは人から教えられたからです。
その人が言うには有名な剣ではないが極めて対人戦に特化した剣だとか」
もちろん剣聖である師匠の事だ。
「そうなのか…確かにこの辺りの騎士の剣は対人戦もだが、魔物との戦いに備えた剣だからな」
「はい。2人の実力は伯仲しています。どちらが勝つのかは私にもわかりません」
「そうか。ネイトが言うならそうなのであろう。
後は私達は応援あるのみだ!」
「そうですよ領主様!」
「はい!」
気を取り直した3人はこの後の試合もしっかり応援した。
決勝戦と3位決定戦は休憩を挟んで行われる。
4人が軽食を摘んでいると
「師匠!ケイトさん!カーラ!ついでに親父!
見ててくれたか!?」
騒々しいジャックが貴賓席にやってきた。
「ついでに応援してやったぞ」
領主が答えるが
「親父は公平平等じゃないといけないだろ!
何してんだよ!」
正論が返ってきて俯く。
「師匠どうだった?」
弟子の言葉に
「基本通りにやってるな。昨日より強くなっている。後ひと試合頑張れよ!」
激励を返す。
「ありがとうございます!!」
「ジャックくん、次の子はネイトが絶賛してたわ。女の子だとしても油断しないでね」
「ありがとうケイトさん!油断しないよ!それに師匠が絶賛したと聞いてやる気がヤバいくらいだ!」
「張り切り過ぎて殺さないでくださいね…」
消え入りそうな声でカーラがいう。
「はははっ!いくらやる気になっても師匠じゃないんだからそんな簡単に木剣では殺せないぞ!」
「おい!俺を殺人鬼みたいにいうな!」
4人がネイトを見て笑う。
「くそっ!こうなったら相手の少女を全力で応援してやる!」
拗ねたネイトは大人気ない事を言うと
「ダメですっ!!」
カーラが大声で制した。
「いや、冗談だ。勘違いさせてすまないカーラ」
そこで先程の自分を客観的に思い浮かべたカーラは顔を赤くして
「すみません…」
といって俯いてしまう
領主が小声で
「カーラはジャックが好きなのか?」
ケイトが小声で
「いえ。ネイトの方かと」
「なるほどなぁ」
生暖かい視線を感じたネイトは何もない会場に視線をやる事で視線を回避した。
『それでは決勝戦を開始いたします!」
アナウンスの声で注目が集まる。
「「「「頑張れジャック」」」」
試合が始まる。
お互いの手の内を探るようにいきなりの決着はなかった。
何合か剣を合わせるがどちらも攻めあぐねていた。
そこに変化が生まれたのはジャックの心境だった。
ネイトに褒められていた少女。
嫉妬心だった。
せっかくネイトが教えてくれたのに攻めあぐねていた自分も許せなかった。
攻め気になったところをあっさりいなされて勝負は決した。
『勝負アリ!!』
アナウンスの後、歓声が舞台を包む
「ま、まけた…?」
ショックを隠せないジャックに少女が近寄り告げた。
「仕方ないわ。私が強すぎるだけであなたはそこそこだったんだからめげないでね!
覚える剣が違えば結果ももしかしたら違っていたかもね!」
可愛い顔をしているが言う事は辛辣だ。
「貴様。今なんていった?」
二人の雰囲気を会場の皆んなが感じ取り静かになる。
「なに?私より弱いって事?」
「それじゃねぇ…」
「ああ。覚える剣を間違えたってとこね」
少女はくだらない言い訳が出ると呆れていた。