30 領都剣術大会本戦
「凄い人だな…」
「そうね」
「逸れないようにしなきゃ!」
翌日騎士団訓練施設に詰めかけた人は5000人を超えた。
3人は思い思いの感想を口にする。
「カーラさんは背が低い方だから移動も大変ね」
「ケイトさんは身長が高いのでいいですね…」
カーラは155、ケイトは170cmだ。
この世界の女性の平均身長は162cm男性は175cmだ。
「俺もまだ低いから見づらいな」
3人は領主のコネで貴賓席が用意されているが中々辿り着けない。
貴賓席にて
「よく来たな。息子の応援に来てくれて3人ともありがとう」
領主の言葉にネイトが
「いえ。弟子の晴れ舞台なので当然です」
「領主様。この度はお招きいただきありがとうございます。ネイトの仲間のケイトと申します」
「領主様。ご無沙汰しています。カーラです」
二人がそれぞれ挨拶をすると領主が
「3人とも席に座ってくれ」
「「「失礼します」」」
2人は少し緊張して、ネイトは最近毎日会っているのでいつも通りの対応で席に着く。
「ネイト。美人を2人も連れてくるとはやるじゃないか!」
「?知り合いが彼女達しかいないもので」
的外れな言葉を返すネイトを見て領主とケイトがため息をつく。
「どうだ?ジャックは優勝出来そうか?」
領主の期待の籠った疑問に
「昨日のような対戦相手しかいないのであれば間違いなく。
ただ他の出場者を知らないのでわからないのが答えです」
無難な言葉を返す。
「そうか。勝負は何があるかわからないからな。
私は家の名前の為よりジャックの為に応援するよ」
「それをジャックに伝えましたか?」
「…」
「そうですか」
何とも言えない空気が支配してしまいそうになるがカーラがこの空気を変えた。
「領主様には申し訳ないのですが、御子息様からご友人になったと言われています。
私としても友人は少なくまたこの2人とも仲が良いので…」
「そうか!これからも良き友人としてあいつをよろしく頼む!」
食い気味に領主が笑顔で答え、カーラは安堵する。
「始まるようですよ」
ケイトの言葉で皆が試合会場を見る。
試合のアナウンスと共にジャックが出てくる。
「「「頑張れー」」」
3人は声を出して応援するとジャックが右手を掲げて応える。
試合は特筆する事もなくジャックの圧勝であった。
「やっぱり強いわね!」
「はい!流石ネイトさんの弟子ですね!」
領主は嬉しそうに頷いている。
「確かに教える前より剣筋にキレがあるがまだまだだな」
ネイトは冷静に分析している。
「後3試合で優勝ね!」
ケイトの言葉にカーラは
「はい!これは是非優勝するところが見たいですね!」
領主の顔はニヤニヤしている余程嬉しいようだ。
2日目の第一試合最後の試合でそれは現れた。
「あの人は強いですね」
そう呟いたネイトの言葉を拾ったのは領主だ。
「どれくらいだと思う?」
「まだ戦っていないので詳しくは…
しかし少なくとも今のジャックと同じくらいには強いはずです」
ネイトの気配察知にはそれだけの気配が感じられた。
「あの少女がか?
いやネイトを疑ってはいないが…俄には信じられなくてな」
「いえ、私もそう言われると自信がなくなってきました」
心にも無い事を伝える。
「私より年下よ?ほんとに強いの?」
「見たところ15歳くらいで私と変わらないくらいの身長と体格ですよ?」
二人の言葉に
「そうだな」
上の空の気のない言葉を返す。
すでにネイトの視線はその少女に釘付けだ。
(確かに可愛いけどそんなに見つめないでもいいのに…)
カーラは気付かないうちに嫉妬していた。