28 決戦?の後
それは静寂だった。
一気に襲いかかった男達の息は合っていた。
そこへ鞘へ納めたままの剣を一閃したネイト。
音もなく崩れ落ちる3人の冒険者。
唯一ネイトが行った事を理解出来たのはジャックだけだった。
静まり返る訓練施設。
静寂を破ったのはギルドマスター
ではなくジャックだった。
「すげぇ!流石師匠だな!!あの一瞬で3回も斬るなんて!それもどれも一連の動作に迷いもブレもなかった!鞘付きの剣は扱い辛いのに!!」
解説ありがとうジャック
と思うネイトだった。
「勝負有り!!」
決着の声が響いた。
「みんなもこの結末はしっかり広めろよ!
この3人が約束を破ったらみんなで報告してくれ!」
その声がやむと
「うぉおお!!」
「すげぇ!!」
「何もみえなかったぞ!!」
数々の感想が訓練施設を震わせた。
「しっかり見てたようだな」
そう告げたネイトはジャックをみた。
「ああ!流石だったよ!これからはさっきの師匠を目指して頑張るよ!」
よく出来た弟子だとネイトは感心していた。
ギルド前にて
「あの!ありがとうございました」
カーラが帰り際のネイトに頭を下げた。
「いや、ギルドマスターの思惑に乗っかっただけだ」
「それでもです。ネイトさんは凄いですね」
先程の決闘の事だろうかと思ったネイトだったが
「そうだ!俺の師匠はすげぇんだ!お前良い奴だな!」
答えたのはジャックだった。
余りの勢いにカーラは怯む
「師匠の剣筋は…!!」
はしゃぐジャックにネイトは鞘付きの剣を振り下ろす
「いてっ!何すんだよ!」
「カーラが困っている」
そこには少し怯えたカーラがいた。
「!!すまねぇ!師匠の素晴らしさがわかる人にあったからその気持ちを共有したくてあせっちまった!」
素直に謝罪するジャックに安心した顔を向けるカーラ。
「いえ。お気持ちはわかります。
改めて受付をしているカーラです」
そう言って美しい青髪を垂らすカーラに
「俺は領主の三男のジャックだ!よろしくな!」
同年代の知り合いが増えて喜ぶジャックだった。もちろんカーラはジャックが領主の息子だと晩餐会などで知っていたが、ジャックはそれまで人に興味が無かったため初対面だと思っている。
「カーラは今日は一人で帰宅か?」
「はい!あの3人が今日は間違いなくいないので…」
苦笑いで答えるカーラに
「そうか。送ろうか?」
これからも世話になるカーラに気を使ったが
「いえ。ジャックさんを送られるんですよね?
では、邪魔はさせられません」
依頼の内容を知っているので遠慮したカーラだった。そこにジャックが
「家はどっちだ?」
「家は…」
説明を聞いたジャックは
「ならどうせ近くだし一緒に帰ろうぜ!」
ジャックは意外に陽キャなのかもしれない。
「そう言う事だ」
ネイトも同意を示した。
「では、お言葉に甘えて」
3人は仲良く帰路につく。
カーラの家の前にて
「ありがとうございました」
「いや、ジャックの言うようにほとんど通り道だから気にするな」
「そうだぞ!友達なら遠慮するなよ!」
急に友達になっている事に驚く二人だがジャックにはそんなことは関係ない。
「じゃあな」
「また明日よろしくな!」
「はい。お気をつけて」
3人はわかれた。
領主邸にて
「と、言った感じです」
ネイトは領主に今日の事を報告していた。
「わかった。素行が悪い奴が多いとは聞いていたがそんな冒険者がいたんだな」
「奴らは特別悪いので。
他は普通の町人と変わりません」
「いや、気を悪くさせたかな?
他意はないんだ。すまない」
「親父!師匠を困らせるなよな!
それにしても師匠はすげぇんだぜ!」
それからジャックがネイトの代わりに脚色多めで報告していた。
「ありがとうネイト」
その言葉は今日の出来事ではない事をネイトもわかっていた。
「これからもこの様な形で続けます」
「ああ。よろしく頼む」
ネイトは領主邸を後にした。
「へぇ。大変だったわね。でもその3人がやられるところは見てみたかったわ」
今日も今日とて二人は食卓を囲む。
大量の夕食が乗っている事以外は周りと一緒だ。
「これでカーラとドレイクさんの気が休まるといいが」
「そうね。でも、もしかしたらカーラさんが貴方に惚れるかもね!」
「どこにそんな要素があるんだ?」
ケイトの予想外の予想にネイトは疑問を返した。
「ネイトはこういう事にはダメダメね。
いい?自分が怖い思いをしていたところを助けられたのよ?
ネイトは見た目も良いし何より強いから惚れる要素は目白押しよ!」
「感謝されるのはわかるが…
やっぱり俺ってかっこいいよな?」
アホな事を聞くネイトだった。
「今のでカッコ悪くなったわ」
冷めた目で見るケイトと理由がわからないネイトだった。