表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/101

23 弟子の態度はSランク





依頼の内容を聞いたネイトは


「勝てばってどういう事だ?」


疑問に思った事を聞いた。


「そのままの意味だな。

あそこのお坊ちゃんは天才らしくてな、まだ誰も勝っていないんだ。

だから領主様に息子の鼻を明かしてくれって事としっかり教育してくれって依頼だな」


「?いまいち要領得ないんだが。

息子が強すぎて調子乗ってるから倒して鼻を明かして、さらに指導して性格を直せってことか?」


ネイトは違うだろうと自分の解釈を披露した。


「ん?わかってんじゃねぇか!

そういう事だ。その歳でCランクならネイトも天才だろ?

今この街にいる一番強い冒険者でも勝てなかったから、ネイトに任せるしかないんだよ」


「わかったがさっきも言った事だが、俺は人に教えたこともないから教え方も間違うかもしれない。

そんなんでもひと月教えれば、依頼は達成になるのか?」


「そこは安心してくれ。教えた後に弱くなっていてもどうなっても、領主様は何も言わないと言ってくれている」


その言葉に胡散臭さは感じるが咎められないならと、覚悟を決めたネイトは


「わかった。受けよう。その代わり…」


ネイトの言葉を遮り


「わかっている。依頼を達成したら昇級試験はバッチリだ!」


その言葉で納得したネイトは詳細をギルドマスターから伺うことにした。









依頼を受ける事が決まった二人はギルドを出て領主邸を目指した。

領主邸の前で


「ここか…」


(カーラの家よりデカいな…)


「さっ。さっさと試験を終わらせるぞ」


ズカズカと先を行くギルドマスターの後をキョロキョロしながら着いていくネイトだった。




暫く歩くと漸く玄関前に辿り着いた。


「ようこそおいで下さいました。私はこの屋敷の執事でございます。

ご主人様とお坊ちゃんは奥でお待ちですのでどうぞ着いてきてください」


深々とお辞儀した燕尾服を着たギルドマスターより年上そうな人が案内してくれる。


「こちらでございます」


コンコン


「入りなさい」


ノックの後、中から返事があった。


「失礼します。お客様をお連れしました」


深々と頭を下げる執事。


促されて中に入ると、茶髪のビシッとした壮年の男性がいた。


「ご無沙汰しております。ギルドマスターのドレイクです。

この度はご依頼の試験を受ける冒険者を連れて参りました」


(ドレイクさんってこんな風にも喋れるんだなぁ)


と、あまりにも現実離れした屋敷で現実逃避した感想が出る。

そんな事を考えていたネイトに、ギルドマスターが目で合図をしてくる。


「Cランク冒険者のネイト・スクァードです。

よろしくお願いします」


ネイトも習ってお辞儀する。


「品の良さそうな青年だな。息子とも歳が近そうだし、何よりその若さでCランクとは…

優秀なのだな。頼んだぞ!」


何故か凄く威圧されてお願いされた。


「親父!なに勝手な事いってるんだよ!

俺はこんな弱そうな奴には負けないから今回も失敗だな!」


父親に似ず、短髪赤髪の少年が悪態をつく。


「何が嫌なんだ?」


(やばい!口が滑った)


素朴な疑問がつい口に出る。


「は?誰に向かって口を聞いてるんだ?

お前みたいな雑魚が俺様に口を聞いてくるんじゃねぇよ!」


「お前より強ければいいのか?」


(また間違えた…)

ナチュラルに煽ったネイトに少年が


「貴様ぁあ!良いだろう早く試験とやらを始めるぞ!!」


ズカズカと部屋を出ていく。

まずいと思い領主に謝る。


「すみません。領主様」


「いや。構わない。ただ勝って、今みたいに教育してくれ」


教育?と考えたがここで返事が一つな事くらいはネイトも知っている。


「わかりました」


頭を下げて後を追う。






敷地内の広場へ


(家の中に広場がある…それもかなり手入れのされた芝生だ…柔らかい…ここでなら外でも寝たい)

そんな事を考えていたネイトに少年が


「おい!お前の名前と歳を教えろ!」


「ん?俺はネイトだ。歳は15だ」


「俺の一つ上か」


二人の会話に間ができたところへ執事が


「こちらをお使い下さい」


と、それぞれに木剣をわたす。


「俺は天才だから今までも年上に勝ってきた。

だから年下に負けても悔しくて泣かなくて良いぞ!

俺は一度も負けた事がないからわからんがな!」


煽り耐性のない少年がネイトに食ってかかるが


「そうか。俺は負けてばかりだから慣れてる。安心しろ」


師匠との模擬戦を思い出しながら普通に答えたネイト。


「ギャハハッ!おい!誰だよこんな面白い雑魚を連れてきたのは!」


笑っている少年に何が面白いかわからないネイトは


「まだ始めないのか?」


試験の始まりを求めた。


「お前が面白いから時間を食ってしまったな。

審判早くしろ!」


執事が近寄り

「では、始め!」


(この人が審判だったのか)


と、また考え事をしてると


「よそ見するな雑魚が!」


斬り掛かってきた剣を受け流す。


「少しはやる様だな!」


またも受け流す。


「くそっ!」


受け流す。


「くっ」


受け


「なんで…」



「掛かり稽古はお終いだ。次はこっちから行くぞ」


次の瞬間踏み込みからの斬り上げで相手の木剣を木剣で半ばから斬った。


「嘘だろ…」


斬撃すら見えなかったその事に心底驚き、半ばから鋭利なもので斬ったような切り口を残して落ちた剣先を見つめる。


ネイトは相手の無防備な首に木剣を添えて審判を見る。


「勝者ネイト」


審判の判定に喜んだのは


「良くやった!きつく指導してくれよ!」


実の父親だった。


「わかりました。依頼の1ヶ月間鍛えます」


言葉と共に礼を取る。


「良くやったネイト!これで俺の肩の荷がおりたぞ!」


バシバシ背中を叩くギルドマスター。


そこに先程の相手が来た。


「ど、どーやった!?教えろ!」


ネイトはそれを聞いて手に持ったままだった木剣で少年の頭を叩く。


「いてー!!何だよいきなり!」


「人に教えを乞う態度じゃないな?やり直しだ」


すでに依頼は始まっているので、教育を開始した。


「…くそ」ボソ


ビュン


「いてぇ!けつ叩くなよ!」


バシ


「まって、ちゃんとするから…」


ネイトは乞われたらちゃんと応える。


「早くしろ」


「剣を教えてください…」


頭を下げた少年をみて。


「良いだろう。まずは名を名乗れ」


「俺はジャック・ド・リガール…です」


名前を聞いたネイトは


「ジャックか。明日から1ヶ月間ジャックの師になったネイト・スクァードだ。

よろしく頼む」


改めて名乗り、師弟関係を築く。


「よろしくお願いします」


「明日の朝から訓練をするがいいな?」


「はい!」


自分より強者には素直なジャックだった。










宿の食堂にて

「よくそんな依頼を受けたわね…」


ネイトの今日の出来事を聞いたケイトの感想がこれだ。


「まぁ、完全に報酬に釣られたな」


もぐもぐ


「そっちは順調そうだな」


ネイトの確認にケイトは食い気味に答える。


「ええ!聞いてよ!カーラのお兄さんが私の商品も店で売ってくれるって!

しかもこちらが指定した金額で売って、売れ残ったら8割で買い取ってもくれるのよ!」


嬉しそうに今日の出来事を話すケイト。

対照的な会話になってしまった二人だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ