22 食道楽の2人
ギルド前
「お待たせしました」
そこには青色の髪を下ろした少し幼く見えるカーラがいた。
「雰囲気が違うな」
同い年くらいの少年に言われて、カーラは少し恥ずかしそうにする。
「ああ、すまない。家はどちらだ?着いていくから案内を頼む」
「はい。よろしくお願いします」
暫くして気になっていたことをネイトは尋ねる。
「聞いてもいいか?
今日みたいな事が多かったんだろ?
その時は誰が送って行ってたんだ?
まさか、あの人の話しを聞かないドレイクさんか?」
カーラは俯いていた。
暫く待つと
「そのまさかです」
「え?」
ネイトは驚いて言葉が続かない。
「ギルドマスターは心配症であの怖い見た目や有無を言わせない口調は、それを隠す為のものなんです」
ネイトは開いた口が塞がらなかった。
「すみません。ギルドマスターは人の心配ばかりなんです。
私の事でもいつも申し訳ないって…
何かあってからしか動けない事を、ずっと謝っていました」
「そうなのか…まぁ大変だよなギルドマスターは」
他人事なので他人事で返す。
「ご理解いただきありがとうございます」
カーラは深々と頭を下げた。
(確かにカーラは凄く可愛いが…と思っていたが、ギルドマスターの性格だったか…
カーラもドレイクさんの為に頭を下げているから良い娘だし、ドレイクさんを慕っているのだろうな)
暫く進むと一つの建物の前でカーラが立ち止まると
「ここです」
そう言ってきた家は
「ここか…」
そこは宮殿であった。
「え?これ家?」
ネイトの驚きにカーラは
「はい。我が家です」
「これが話しに聞いたお貴族様の家?」
ネイトの疑問に
「いえ、うちは代々商家を営んでおり今は兄が商会の会頭をしています。」
「大金持ち…」
「家が少々裕福なだけですよ。私は16歳のただの小娘ですしね」
(最近自分が金持ちだと思っていたが
ただの勘違いで金持ちは遠いな…)
「ありがとうございました」
送ったお礼をネイトに言ってネイトは
「ああ。また明日な」
「はい。よろしくお願いします」
ネイトはペコリと頭を下げたカーラを見て、踵をかえした。
「いいわよ。まだ行商の予定は決めてないから」
宿の食堂で夕食を食べながらケイトに今日の話しをした。
「おう。頼む。
それにしてもここの料理は美味いな…量が足りないけど」
「私達の完璧な旅には料理人が足りないのはわかってたわ…」
ネイトが隙をついて
「これ、貰っていいか?」
「ダメに決まってるでしょ!
足りないなら追加注文しなさいよ」
「…それもそうだな」
この後、動けないくらい食べて後悔した二人。
翌日、ケイトを伴いギルドを訪ねたネイトは受付にいたカーラに向かう。
「おはようございます」
「おはよう」
カーラの挨拶にネイトが返すと
「着いてきてください」
「ああ」「ええ」
3人はすぐにギルドマスターに会いに行く事になった。
ギルドマスター室にて
「ひと月ね…」
「ケイトさんには長いか?」
依頼の期間を聞いたケイトが答える。
「いえ、構わないわ。
ただ働き口をどうするか、ね」
新たな悩みがケイトを襲う。
「確かに長くも短くもないな」
ネイトはよく分かっていないが口を出す。
「あの〜」
「なんだカーラ?」
カーラの声にギルドマスターが応えた。
「うちで良ければ仕事はあります。
もちろんいつ辞めていただいても困りません」
カーラの提案にケイトは
「ホント?それなら有難いんだけど」
「ケイトさんはお綺麗なので店員としてずっと働いて欲しいくらいなので、どうですか?」
カーラのヨイショにケイトは
「美人のカーラさんに言われてもね…でも、お話しは嬉しいのでお願いします」
「はい!お願いしますね!」
タイプの違う美女達が微笑み合うがネイトの向かいはおっさんだ。
「じゃあ、この依頼を受けてくれるな?」
話が纏まったのならネイトに憂はない。
「ああ、受けよう」
「ネイトさん。ギルドマスター。私はケイトさんを連れて兄に紹介して来ますね」
「よろしく頼む」「あぁ」
ギルドマスターとネイトの返事の後、二人が仲良く退室した。
「それで依頼の細かい内容だが
まず、この街を治める貴族『リガール』家の末の子供に剣術を教えるということだ」
話しを聞いたネイトはすぐ様待ったをかける。
「ちょっと待て!
貴族の依頼としか聞いていなくて内容は受けてからと言われたが剣術を教えた事はないぞ?」
「大丈夫だ。そもそも受けれるかはその子供に勝てるかどうかに掛かっている」
「え?どういうことだ?」
頭に?が浮かんだネイト、この依頼は一筋縄ではいかないようだ。




