20 同棲?いえルームメイトです
翌朝
「…またこんなに狩ったのね」
「おはよう」
馬車から出てきたケイトに挨拶するネイト。
「いえ、急ぎの旅じゃないからいい、というか旅にかかる費用より村や町で売る素材の売り上げの方が多いのよね」
ケイトの言葉に
「良い事じゃ無いか」
ネイトは興味なさげに答える。
「はぁ。2割で既に黒字なのよ…ネイトはお金が貯まる一方ね」
ケイトの言葉に不満があるのかと思い、提案した。
「5割くらいにするか?」
「やめて!私を誘惑しないで!」
ネイトは誘惑?何の事だ?と思ったが最近のケイトはめんどくさいので言わない。
「人は楽を覚えてはダメね…」はぁ
ケイトはため息をついた。
道中
「次の街にはしばらく滞在したいのだけどネイトはどう?」
何故か旅の中でお金も貯まり、心にも懐にも余裕の出来たケイトが提案する。
「構わない。そういうって事はデカい街で高ランクの依頼も沢山あるんだろ?」
ケイトの提案にネイトが予想して先回る。
「そういう事よ。じゃあ決定ね!次の街はユーゴスの町の4倍の人口がいるわ」
「それは凄いな!都会じゃないか!初めていくな」
ケイトの情報に驚き、まだ見ぬ街に期待した。
「都会ではないけど田舎でもないくらいね。
街の名前は『パラディール』と言うわ」
「パラディールか…」
街が近づいた事で気分も上がる二人だった。
二人はユーゴスを出て最初の野営で話しを詰めた。
内容はネイト&ケイトのコンビはお互いに利益が多い為、暫くコンビを解消したくないと結論付けた。
何処かに長く滞在する時はお互いに利点がある事と、もし片方だけにあるならその時は話して解決する事、解決しなかった場合のみ解散かその場所を諦めるかにする事。
などである。
基本的にケイトは街やその周辺でしか見られないものが見たく、滞在時は商家で店番などをして小銭を稼ぐかそれまでの旅で得たものを売る行商をする。
ネイトは自身のランクの依頼を受けてランクアップを目指す。
ランクが上がれば必然的に依頼数が減る為選り好みは出来ない。その時はケイトに利点がなくともネイトがケイトの生活費を捻出する事で、ケイトはそれで不満はないと言った。
ケイトは旅が出来ればいいのだ。
ネイトも前回の依頼から初めての体験が多くある旅が好きになっていっている。
旅に出て数日が経過した。
「街が見えたぞ!」
「そうね!後少しよ!」
ユーゴスとは比べものにならないくらいの大きさの街が高い外壁に囲まれている。
「ネイトはギルドカードを用意しといてね」
「ああ。ケイトは?」
ケイトの指示に頷き、気になった事を聞いた。
「私は国が行商人に発行してくれる身分証があるのよ」
「へぇ。そんなのもあるんだな」
大きな街なのでユーゴスやそれ以下の村ではなかった入市税なるものが存在するが、どちらかの身分証を持っていれば免除される。
身分証目的だけで登録されてはいけない為に、身分証としての効果があるのはDランクからだ。
「ようこそ。パラディールへ」
衛兵にそう言われて街の門を潜る。
「とりあえず宿を押さえるわよ」
「わかった」
そう言って街を見渡す。
「聞いていたが…デカイな…」
「そうね。お金はネイトのお陰で沢山あるから良い宿に泊まれるわ」
ネイトは上の空で、辺りの見た事がない建物たちを見回す。
「ついたわ。話しを付けてくるからここで待っていて」
「ああ」
返事はしたもののこんな立派な建物で寝られるのか少し不安になる。
すぐにケイトは帰ってきて
「部屋は空いてたわ。宿の奥の厩舎を使えるから馬と馬車をそこに持って行ってから荷物を部屋に運ぶわよ」
「わかった。力仕事は任せてくれ」
ようやく出番が来たと返事をした。
荷物を運び終わるが
「部屋は一つか?」
「良い宿なんだから二つだと高いのよ。
野営で一緒なんだからいいでしょ?
ネイトと一緒の方が私は安全だし、それにベッドは二つあるからね」
向こうが良いならネイトに断る理由もない。
「わかった。宿代は…」
「今回は2割のお金で賄えたから大丈夫よ。
期間が長ければその時に請求するわ」
「わかった。とりあえずギルドに行ってくる」
旅の費用は獲物の2割の売り上げで賄っており、足りなくなれば割り勘である。
翌日
ネイトの足元に3人の男が倒れていた。