12 Cランク冒険者
本日2話目です。
「おめでとうございます!」
尊敬の眼差しにも似た笑顔でそう祝福する受付嬢。
「ありがとう。じゃあ、また明日」
無事昇級を果たしたネイトは新しいカードと共にギルドを後にした。
宿にて
「おめでとうねぇ!」
豪華な食事と共に祝辞を述べてくれた女将。
「ありがとう!どれも美味しそうでもう我慢できないや!」
物凄い勢いでテーブルの料理を平らげるネイト。
それを見て笑みを深める女将。
「Cランクなんてベテラン冒険者じゃないか!
こんなに若いのに凄いねぇ!」
「あんまり褒めないでよ!調子に乗ったらまずいからね!」
「それがわかってるなら褒めても大丈夫さね!」
和気藹々とした食事はあっという間に終わる。
部屋にて
「あの女将さんは良い人だな…
過去の俺が悪い事をしたんだな…」
ジョンの時に辛く当たられた事は自分に非があったのではと思うネイトだが
「人って見た目も大事だもんな…
今の見た目だと殆どの人が好意的に接してくれる。
もちろん中には関係ない人もいるけどね」
過去の自分は人の目にはそれだけ不快に写っていたのだろう。
そう気付いたがそれでも中身も見て欲しかった
そう思うネイトだった。
「明日からはCランクの依頼をバンバン受けていつかSランクになるぞ!」
夢を見る前に夢を語ったネイトは眠りにつく。
どんな夢を見るのか誰にもわからない。
翌日
「まずはどんな依頼があるか確認だ!」
気合いと共にギルドの扉を開いたがいきなり空振りする事になる。
「ネイトさん。こんにちわ。待っていました」
受付嬢にそう言われたのでネイトは挨拶を返す。
「こんにちわ。待ってたって何を?」
「少々お待ち下さい」
受付嬢は席を立つと階段に消えていってしまった。
暫くすると
「どうぞこちらへ」
促されたのでついて行くことに。
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「何でこんなとこに連れてこられたんですか?」
「いいから座れ」
有無を言わせないのはギルドマスター。
座るのはギルドマスター室のソファー。
「これから選べ」
目の前のテーブルに広げられたのはCランクの依頼書だった。
「あれ?依頼は自由に選べるんじゃ?
それに何だか少ないような…」
素直に疑問を口にするが
「当たり前だ。俺が直々に選りすぐっておいた」
「なんと…」
あまりの職権濫用に二の句が告げられない。
「一人だと護衛依頼が殆ど受けられない。
その若さだと依頼人に舐められる。
以上の理由からネイトがやり易い依頼を選んだ」
よく目を通すと
「確かに討伐依頼ばかりですね。
出来たら全て受けたいですけど…」
「出来なくはないがその数をこなすとしたら案内人がいるな…」
初めて聞く言葉にネイトは反芻する。
「案内人…」
「ああ。野営の準備や目的地までの案内をしてくれる人の事だな」
便利な人も居たもんだと思うネイトだった。
「ネイトにも、いやネイトだからこそ隠し事や秘密にしておきたい事は沢山あるだろう。
それには不向きなんじゃないか?」
「確かに秘密はあるけど…
でも、絶対じゃないから案内人頼もうかな…」
初めての事はワクワクするネイトだ。未だに精神が不安定で言葉遣いも安定しない。
子供っぽさが無自覚に出てしまっている。
「どちらにしても1日や2日では終わらんぞ?」
よく見ると依頼書に2日とか3日の文字が
「その数字は依頼達成の目安の日数だ。
トラブルが起きればその限りではない」
「うーーん」
悩むネイトだが
「やっぱり頼むよ!案内人!」
「…そうか。なら俺が見繕っておく。
明日、旅に出られる用意で朝に来い」
「ありがとう。明日来ます!」
ギルドマスターに会釈して退室した
なぜネイトは案内人を頼んだのか。
これまで良い人に多く会ったから心境に変化があったからか。
それともただの気まぐれか。
翌日の為、町に買い出しに出ることにした。
何から揃えるべきか考えながら町を行く。
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