11 Dランクって何したっけ?
指定された時間になり、ネイトはギルドを訪ねていた。
「きたか」
「はい」
ネイトはギルドマスターの言葉に返事を返す。
「ついて来い」
ギルドマスターが進むのでついて行くネイトだが何処に行くのかと疑問に思う。
「こっちだ」
どうやらギルドの裏らしい。
「こんなガキが相手なのか?」
茶髪に顔に傷のある180cmくらいの男が居た。
「そうだ。ネイトに勝てば推薦状を書いてやる。
いいか二人とも?殺しは無しだ!怪我は仕方ないが殺したら負けと同じだ。
後、俺の判定に不服ならこの町から出ていけばいい。
判定は絶対だ。いいな?」
「はい」「ああ」
「では構えろ」
ギルドマスターの言葉に双方構える。
その時のネイトの心境は
『推薦状?相手は俺の昇級試験だと知らない上に自分の昇級が掛かっていると思っているのか?』
という、対戦とは関係ないことだった。
「始めっ!」
「くらえっ」
相手が格下だと思い真正面から素直な剣撃を仕掛ける。
ネイトはこれ幸いと迎え撃つ。
ヒュッ
パキンッ
相手の剣が真っ二つに折れる。
「どうするの?まだやる?」
「ま、まぐれだ!武器を用意するから待ってろ!」
ネイトの煽りに言い訳にもならない言葉を吐き、男は走り出した。
「どうしますか?何回やっても同じだけど…」
面倒くさくなりそうだと感じたネイトは、ギルドマスターに遠回しに終わらないかと聞くが
「まあ、相手があれじゃあ負けを認めないだろうからな…仕方ないがもう一度対戦してくれ。
次は出来れば少し怪我を負わせて負けを認めるくらいにしてくれ」
「また難しいことを…わかったよ」
そこへ先程の男が知らない人を連れて戻ってきた。
「なんだ?こんなガキに剣を折られたのか?」
「まぐれだよまぐれ!いいから剣を貸してくれ!」
「わかったよ!ほらよ」
茶髪の男が剣を受け取る。
「いいか?次はないぞ?」
ギルドマスターが再確認する。
「わかってるよ!」
「では構えて
…始めっ!」
その瞬間ネイトは相手の懐へ一瞬で入り込み
「おらららららっ!!」
拳で殴りつけた。
「ぶべぇばぁっ!」
茶髪の男は意味のない言葉を発して吹き飛んだ。
「やばっ!やりすぎた?」
静寂がこの場を支配した。
「勝者ネイト・スクァード!
丁度いいお前も証人だ!」
ギルドマスターに指名された男は、殴り飛ばされた茶髪とネイトを交互に見て、ギルドマスターに振り向き頭をガクガク上下させてこたえた。
「ネイト、これでお前はCランクだ。
受付に行って更新してこい」
ギルドマスターはこうなる事が分かっていたので受付嬢宛に手紙を懐に忍ばせていた。
「準備いいですね?それじゃあ行きます。
あなたも証人になってくれてありがとう」
少し疑惑を抱いたネイトだったが男に会釈してその場を去った。
ギルドマスターと目があった男は
「この事は誰にもいわねぇ」
反射的に答えたが
「いや、逆だ。広めていいぞ」
「何でだ?」
思っていたのと反対の答えが返ってきて、疑問に思いギルドマスターに問う。
「年下にいいようにやられた奴がいたら他のみんなの気も引き締まるだろ?
使えるものは使うのがギルドマスターだ」
にやりと笑ったギルドマスターを見て、後日男はギルドマスターは笑いながら人を殺してそうだと語ったとか語っていないとか。
「いや、おめーそれは話しを盛ってるだろ!?」
「マジだ。お前らも恥をかきたくなかったら、ネイトってガキには手を出すなよ」
男は夜、酒場で今日の出来事を話していた。別に男がギルドマスターの言う通りにしようとか、思っているわけではない。
喋ってしまわないと今日の出来事が自分でも信じられないからだ。
「後な、ギルドマスターは噂通りヤバい奴だから逆らうなよ…」
そう語った男の顔は憂いを帯びており、周りの冒険者を信じさせていた。