101 金塊
来賓館に帰ったネイトは一先ず汗を流した。
浴室を出て自室に戻るとそこにはライザ以外、全員いた。
「どうした?集まるのは夕食後だろ?」
「どうしたじゃないわよ!あれ何よ!?」
ケイトが興奮気味にネイトを問いただした。
「あれってなんだ?」
「まさか知らないの?じゃあライザの湯浴みが終わったら行きましょう」
ネイトは結局教えてもらえなかった。
ライザが湯浴みから戻り合流した四人はリビングを目指した。
ガチャ
「なんだあれは?」
リビングの扉を開いたネイトはあまりにも主張の激しい物に目を奪われた。
「先輩凄い。初めて見た」
「ネイトさん!まさかアレで貴族との婚姻を承諾したなんて事はないですよね!?」
二人が思い思いの事を言って、ケイトが答えを告げる。
「金塊ね。初めて見たわ。どうしたのよこれ?」
ネイトはリビングのテーブルに積まれている金塊を見て、これが褒美かと答えにたどり着いた。
「多分国王からの依頼の褒美だと思う。
ケイトは誰かに聞いたんだろ?」
「そうよ。使用人からネイトに届け物だと言われてみたら金塊がテーブルに鎮座していたのよ。
褒美ならそうかもね。凄く豪快だけど」
「じゃ、じゃあ、貴族のご息女との婚姻ではないのですね!?」
カーラはまだ病んでいた。
「カーラ。前にも言ったが貴族はトーマスが対応してくれたから大丈夫だ」
「それよりも、これどうするのよ?」
「それよりも!?」
ケイトの発言にカーラが慄いた。
「明日会う約束があるからその時に他の物に変えられないか聞いてみる」
「それがいいわね。たしかに金塊は高価だけれど旅には不向きね」
「先輩。明日は何の用?鍛錬は?」
鍛錬の予定が気になりネイトに問うが
「ホントね。何の用があるのよ?」
ケイトも気になりネイトに聞く。
「鍛錬は中止だ。明日の用だが、みんなにも関係がある。
実はあるお願いをされたんだが・・・」
ネイトは国王との話しをみんなにして、意見を聞いた。
「それは断りづらいわね。でも良かったんじゃない?
何か恩返しがしたかったのよね?私は構わないわ」
「私もネイトさんの決断に任せます」
「先輩。頑張って」
三人からの返事はネイトの背中を押した。
ライザは自身の行いでなくとも人助けに賛成だ。
翌日王城国王執務室にネイトの姿はあった。
「では、さっそく返事を聞かせてもらおうか」
「はい。お受けさせて頂きます」
ネイトの返事を聞いた国王は一つ頷いてから
「王族の依頼だから断れないとかではないな?」
「はい。気遣いありがとうございます。仲間も快く返事をしてくれました」
国王の気遣いに益々力にならねばと思うネイトだった。
「具体的な話しはもう少し先になる。
次の連合会議はひと月後だ。それまでまた指導の続きを頼めるか?もちろん褒美は出す」
「指導はかまいません。まだ教えたい事もありますので。
褒美の件でお話があります。
言い難いのですが、我々は旅をしています。金塊ですと、行く先々で持っている事がわかれば要らぬ争いを招く事になりかねません。
王家から出して頂いた褒美を換金する事も心苦しく思います。
頂いて誠に申し上げ難いのですが、何か別の物に変更出来ませんか?
もちろん高価なものでなくて構いません」
ネイトの言葉を聞いて
「それはそうか…いや、すまなかった。国内で渡す褒美が金ばかりで考えが足りなかったようだ」
「いえ、決してそのような事は…」
真摯な発言にネイトは慌てた。
「では、何を望む?聞けばネイト達は金にも困ってないと聞く。
武器とかはどうだ?」
「私にはこの剣があります。しかし仲間のライザに良い短剣を贈りたく思っています。どうでしょうか?」
「おお。トーマスと鍛錬をしている少女だな。流石師だな!
だが他の仲間は良いのか?」
ヴガッディ国王に了承は得たが新たな問題にネイトは
「何か私の方で贈りましょう」
「いや、褒美を渡すのはこちらだからな。
では、何か装飾品を贈ろう。こちらが用意するが良いか?」
「ありがとうございます。装飾品については門外漢なので助かります」
「では、2日後に仲間と来てくれ。用意して待っている。
鍛錬は明日からで構わないか?」
「はい。わかりました」
ネイトは一礼の後、部屋を後にした。
来賓館に帰ったネイトはこれからの予定を三人に話した。
「じゃあ、明後日一緒にお城に行くくらいかしら?」
「そうだな。ライザは明日からまた鍛錬だ」
「ネイトさん。何もしていない私達が頂いてもいいのでしょうか?宿代も食費もある意味でネイトさんに出して頂いているようなものなのに…」
「先輩。私も貰う理由がない」
「カーラ。気にしないでくれ。俺に欲しいモノがないから普段世話になっているみんなに贈り物をしたいんだ。
ライザは理由がある。ライザが強くなれば必然的にカーラやケイト、そしてライザ自身の安全度が格段に上がる。
すでに固定武器がある俺よりもライザに良い武器を持ってもらう方が効果的だしな」
こうなっては何を言ってもネイトは贈るだろうと思い、三人はそれぞれ頂く事にお礼を言った。
2日後、王城にて
「ネイト殿、陛下より伺っております。
こちらに用意してありますのでついて来てください」
城に行くと一人の騎士が現れて、案内をしてくれた。
コンコン
「ネイト殿達をお連れしました」
ガチャ
「どうぞお入りください」
騎士に促されたネイト達は部屋へと入る。
「ネイト殿。こちらから武器をお選び下さい」
中にいた身形の良い男性がたくさん並べられた短剣を前に促す。
「ありがとうございます。ライザ、気に入ったのを選べ」
「うん。たくさんある。迷う」
ケイトとカーラは門外漢なので壁際に寄り、ネイトとライザで短剣を選んだ。
20分程かけてライザは一つの短剣にした。
「これにする」
「わかった。
こちらにします。よろしいですか?」
部屋にいた身形の良い男性が受け取り
「わかりました。ではお次は隣の部屋になります」
男性に促されて隣の部屋へと向かう。
「先輩。ありがとう」
「ああ。これからも頼む」
「うん!」
新しい短剣を手にライザは満面の笑みを浮かべた。
「どうぞ、好きなものを選んでください」
「「ありがとうございます」」
ケイトとカーラが前に出るが
「そちらのお嬢さんもどうぞ」
「二人の予定では?」
ネイトが疑問を呈すが
「陛下より、女性にはやはり武器より装飾品を贈るべきだとの仰せで、三人分とのことでした」
「ありがとうございます。
ライザ。お言葉に甘えて頂いてきなさい」
「ありがとう」
やはりライザもキラキラ輝くアクセサリーは気になるようで二人に混じって選び出した。
しっかり選んだ三人を連れて、お礼の後に城を後にした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ここでストック切れです。
一旦中断させてください。
色々な事件、戦争、コロナなど暗いニュースが多いですが、そういう時代だからこそ楽しい話しをお届け出来る様に頑張ります。
他の小説は書き溜めがまだまだあるのでそちらをご覧頂ければ幸いです。