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100 助け舟







ケイト達が来て夕食が始まった。


「そうだったのですね。そこまで想って貰えるなんて王女様が羨ましいですね」


「まるで物語に出てくるお話のようで凄いです。

頑張って下さいね」


ケイトやカーラにもトーマスが強くなりたい理由を話していた。


「王侯貴族様方は自由に結婚相手を選べないと聞きますが、お父上である国王様はどのようにお考えでしょうか?」


ネイトをわざわざ雇っている時点で賛成のようなので、ケイトは話しを盛り上げる為に聞いた。


「父上はもちろん賛成だ。ただ、向こうとは何代にも渡り確執がある。向こうの王妃もこちらに嫁げば何をされるかわからないなどと王女に話しているようだ。

私と父上は帝国がいなくとも力を合わせるべきだと考えているから、自国至上主義である隣国とは反りが合わない」


「和平派なのですね」


小国家連合王国内には帝国は関係なく手を取り合うべきだと考える和平派と、昔ながらの自国至上主義派に分かれている。


「ケイト嬢は小国家連合王国民ではないのに物知りだな。

いずれ父を小国家連合王国の代表にして、和平の道を歩む事を我々和平派は目指している。

うちは元々諸島連合国と仲良くしていたから、争うより和平の道の方が国が長期的に豊かになる事を知っていた。

ただ多くの小国は外交が盛んではない。その為、戦争で領地を増やす事しか知らない。知らないモノに物事を説くと言うのは難しい事だ」


王族として民を導く苦悩を、ネイト達が他国民であることから弱音を吐けた。


「いやいや、この様な楽しい晩餐で政治的なつまらない話しをしてしまったな」


「いえいえ。私は色々なお話が聞けて嬉しかったです」


「私も王族の恋愛話しなど一生耳にしないお話しを聞けて楽しかったです」


「王太子様は凄い」


「ライザは同じ姉弟弟子なのだから敬称はやめてくれ」


四人は仲良く談笑していた。

一方ネイトは王城の料理を心ゆくまで楽しんでいた。


「ちなみにその国の名前はなんと言うんだ?」


お腹が落ち着いたところでネイトが聞く。


「そこはサーティライト王国と言います。王女の名はウェンディ・アルバート・サーティライトです。

国王の名はアルバート・アトム・サーティライトです。

ウェンディは第二王女で私と同い年ですね」


トーマスが答えてくれた。カーラが答えたそうにしていたが、流石に王太子に譲ったようだ。


夕食を食べ終えた後、四人は帰宅した。





来賓館のネイトの部屋にみんな集まっていた。


「結局ここで寝るのか?」


ネイトの問いに


「寝るつもりはないのよ?ただみんなで集まっておしゃべりするにはこの部屋は広くていいのよ」


結局飲み過ぎてそのまま寝るタイプの人の発言をかますケイトに


「ネイトさんは私と一緒は嫌ですか?」


ネイトと一緒に寝る為の言い訳が思いつかなくてぶりっ子攻撃に入るカーラと


「先輩。先輩のベッドは実家のベッドより寝やすい」


純粋に思った事を話すライザだった。


「まぁ、俺はいいが…朝は起きろよ?」


常に大勢いる事に慣れたネイトは諦める事にした。






それからのひと月はあっという間だった。

ケイトとカーラは騎士の護衛がいる事でトラブルに巻き込まれる事がない上に、王侯貴族や騎士の信頼度が高いルーベルト王国では騎士が護衛に着くバザーの信頼度も高い為、ケイト&カーラ目当ての客以外にも客が多くついて繁盛した。


ネイトも二人とも頭が良く理解度が高い。トーマスは元々の基礎が出来ている。二人とも戦闘スタイルが確立されている為、教える事は楽で文句も出なかった。

ネイトの唯一の苦労は、ネイトが剣聖だと知った貴族達が娘の押し売りをし始めた事だった。

もちろんネイトは心に決めた女性(ひと)がいると断ったが、剣聖であれば二人や三人は妻をとれると効果はなかった。

困っている師匠にトーマスが助け舟を出した事で事態は漸く沈静化した。




「明日でひと月だな」


「そうね。それよりもちゃんと断ったのよね?

カーラが毎日死にそうな顔をしているわ」


「断ったさ。だけど無理だったからトーマスに頼んだ」


「良かったわ。あんな顔を四六時中されていたら商売上がったりよ。

それと口封じはどうなったの?」


「それも大丈夫だ。この国に剣聖(おれ)がいる事はレイカード王国の人に話さない様に国王にトーマス経由で頼んでもらった」


「全部王太子さまじゃない…」


ネイトは『困った時の王太子』と言わんばかりに困り事の度にトーマスに相談した。

ネイトの事を剣聖だと知っていた通り、この国は北にレイカード王国、東に諸島連合国がある。

両国と国交があり、その為小国家連合王国の外の情勢にも詳しい。


「でも、この国の王族はえらいわね。他は内戦…連合王国内での戦争に向かっているのに、帝国の動きをしっかりと把握して内戦を止めようとするなんてね」


「反発は大きいらしいがな。

良くして貰ったからこの国に何か恩返しをしたいが思いつかないな」


「…大丈夫。貴方ならその内巻き込まれるから…」


ケイトの言葉に腑に落ちないネイトだった。







翌日王城にて

「師匠。今日は父上が師匠に話しがあるようですので、向かって貰えませんか?

私とライザはその間鍛錬しておきます」


トーマスの言葉にネイトは


「ん?わかった。怪我の無いようにな」


二人はネイトに返事をして鍛錬に入った。ネイトは王の執務室を目指した。




コンコン


「ネイトです。お呼びと伺い参上しました」


「入れ」


ガチャ


「失礼します」


ネイトは執務室に入ると、ソファに座っている国王の前で立ち止まった。


「そこに座ってくれ。

お茶を二つ用意しろ」


ネイトを座るように促し、室内にいた侍女に飲み物を頼んだ。


「まずは、ひと月の指導ありがとう。本人曰く以前より格段に強くなれたそうだ。良くやった。

褒美として色々用意した。後で確認してくれ」


国王が話し終わるタイミングでお茶が二人の前に置かれた。


(さっき頼んだばかりなのにもう出てきた…)


ネイトは国王の話しより侍女の優秀さが思考を占めた。

お茶を一口飲んだ国王は続けて


「実は続けてで悪いが頼みがある。

もちろんネイトやネイトの仲間が反対したなら断って構わん。

答えが出るまでは非公式の頼みとする故な」


そんな事を言われてはネイトも身構えて聞くしか無い。そもそも王族の頼みは基本断れないモノなのだから。


「頼みとは、他国の王族を黙らせたいのだ。その為に、ネイトの力を奴らに見せつけて『外の国にはこの様な者もいる!争っている場合ではない!

力を団結せねば帝国にいいようにやられるぞ!』といいたいのだ」


「すみません。私が力を見せたところで団結するとは思えませんが…」


ネイトは意見を言うが


「あくまで説得の材料の一つに過ぎないから心配ない。

実は我が国の仕入れた情報によると、帝国が諜報組織を使い、小国家連合王国を内戦にと導いているようだ。

この話を信用させる為にネイトを使いたいのだ。

どうだ?」


帝国が暗躍している事を聞いて少し驚いたが帝国ならそれくらいするかと納得した。


「明日、必ず返事をします。宜しいでしょうか?」


「わかった。良い返事を期待している。

褒美は来賓館に運ぶ手筈だ。

では、時間をとらせたな」


「失礼します」


ネイトは退室して二人の元へ向かった。


(断る可能性がある以上、仲間以外には漏らせないな。トーマスに聞かれたらどうしよう…)






その後、指導を終えたネイトはライザと共に来賓館に帰った。

二人には結局最後まで国王との話しを聞かれる事はなかった。


(トーマスは流石だな。普通は気になるだろうに。どちらにしても答えを出すまで話せなかったから助かったな)


良く出来た弟子にネイトは感謝した。



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