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奴隷商人の養子になって  作者: うたり
4/20

(04)国際問題だったりして


 『どうだ、旨いだろう』

 『あぁ、凄く美味しいね。これが常時採れるなら 果物屋も出来そうだよ』

 『あーっ、それはちょっと無理だな。ここは人里から離れてるし、結構 魔物が多い』

 『ぶっ。ま、魔物が多いって』

 『大丈夫だって、探知で周りは確認しているから』

 ――やばい。今回は 魔物の素材を送らない方が良さそうだ。ここを出るまで収納(無生物)に保存しておこう。


 『うん。あれは……』

 『どうした』

 『……いや、ちょっと珍しいモノだと思ったんだが、何か 勘違いだったみたいだ』

 『この果実、20個ほど送ってくれないかい』

 『良いけど、売るの』

 『珍しいのでね』

 『オーケイ。じゃあ また明日』

 ――これ、収納の中で育ててみようか。種も採れそうだし。


 カイムは 熟れた実を探して収納に、形の良いモノを収納袋と入れながら、さっきのモノを探知で追う。

 野盗と思しき集団だ。

 ――3,6,9……全部で18人か、何をする積りだろう。何処かを襲撃するのか。だとすると、近くにアジトがある筈……。

 あそこか。留守番は5人。


 距離がある上に、相手が騎乗しているので 本体を追うのは不可能。彼はアジトを潰す事にした。

 ――それに、どのみち 帰って来るのは間違いないし。


 留守番の野盗を始末し、数多あまたの戦利品を収納に放り込む。金品や食料も予想以上の備蓄量だ。

 ――たった23人を賄うには、多過ぎるように思える。


 武器類が多いし、品質も高い。そして、しっかり手入れされている。

 金庫がある、これだけでも違和感が満載だ。卓の引出しには 封蝋をしてある書簡が入っている、これも怪しい。

 ――どう見ても、普通の野盗とは雰囲気が違うな。


 最低でも18人が相手だ。荷物から推するに、人数は もっと多い可能性が高い。

 ――どう考えても 正面からだと不利だな。


 アジト内の物品、死体以外は全てを回収し、『罠』を仕掛けて ゆっくり待機する事にした。

 『隠密(認識疎外付き)』を発動し、更に自身を洗浄して気配を消す。アジトからは かなり離れた位置にある、高木の上から 緩く、広く、探知を掛けて、それを持続させる。

 ――『臆病くらいが丁度良い』でしたね、先生。


 落ち着くと、さっき手に入れた書簡を確認する。

 封筒の表には 幾つか並べて模様のようなモノが書かれている。そっと 封蝋を壊さないよう、慎重に開封して中身を取り出す。

 ――うーん、読めない。

 他言語か暗号、暗号じゃないな。サインらしいモノがある。封筒のも文字だったのか。

 はぁ、俺の知らない言語かぁ。面倒だな、戻しておこうか。


 気付くと、野盗集団が すぐ近くまで戻って来ていた。

 ――取敢えず、書簡は収納に保管だ。

 あれ……。7人か、人数が全然違う。別動隊だな。


 見ると、空馬が5頭。それに、人が拘束された状態で乗せられている。服装から見て 女性が2人と男性が3人、加えて死体が5つ。


 ――戦利品、いや(様子を見ていると)意識が無いようだ、拉致か。これつ等だけでも先に仕留めようか。

 いや、さっきの集団が戻って来た時、足手纏あしでまといが存在するのは不利だ。

 それに、仲間の死体を持ち帰ったという事は、やはり普通の野盗じゃないようだな。


 やはり騒ぎになったが、それは当然だ。

 留守番役の死体が 装備を剥がれて転がっており、最も大切な物、金庫と書簡が無くなっているからだ。盗聴していると その慌てぶりが分かる。

 あの金庫、重量がかなりある。運搬するのは大変だったろうが、カイムには関係ない。

 ――解錠して中身を確認するのは、全て片付けた後だ。


 暫くして、本体(カイムが勝手に決めた)が帰って来た。こちらにも拉致された者達がいる、男女3人づつ。野盗の人数も減っている、生存者10人と死体8つ。

 ――さて 合計17人だ。しかも訓練されているようだから、元軍人と見て良いだろう。罠を仕掛けて正解だった。


 被害者は 成人だろうが、若い。服装からして富裕層、貴族かもしれない。面倒だが、見付けた以上 放置も出来ない。

 別に放置しても問題ないのだが、気になって仕方がないのだ。

 ――俺、その内 好奇心で身を滅ぼしそう。


 犯罪者集団(仮)は、さっきより もっと盛り上がって、騒がしくなった。会話の内容が集音器を通して聞こえて来る。

 「見張りが何者かに殺されていただと」「この場所が知られていたのか」「金庫が……」「あの書簡もか」「食料も空っぽだ」「あの国から送られた来た物、全部か」「どうする、首班に連絡するか」「野盗の仕業じゃないか」「くそっ。周囲を探せ、まだ居るかもしれない」「無理だ、時間が経ち過ぎてる」

 ――あーぁ、最悪だ。国家間の問題かぁ、貴族も関係してそうだし。

 手を出すんじゃなかったな。一層の事 全員殺して、無かった事にしてしまおうか。


 国家間や貴族間の問題は 善悪が分からない。助けた相手が、領民からすれば 凶悪な独裁者だったという可能性もあり得るのだ。

 そして それが、政治的には正義だったりする。

 ――うんざりだ。


 その時、また誰かが近付いて来たのを感じ取ったカイムは、もう少し静観する事にした。追加が7人(・・)

 騎乗した 太った中年男と、5人の徒士かち。5人は槍を持っている。

 ――うわっ、馬が可哀そう。


 しかし、来たのは彼等だけではなかった。

 彼等を尾行しているている者がいる。身を隠しているのは、本拠地アジトを確認するためだろう。

 ――尾行に気付かないとは。この6人は 魔法の訓練を受けていないのか。それとも 尾行者が手練れなのか。

 装飾過多な衣装を着て 赤毛の馬に乗った人物が主犯だろう。


 尾行者は 敵対者のアジトを確認した後、報告に戻った。

 すぐ討伐隊が動く筈だ。


 尾行者が、もう かなり離れている事と、討伐隊の本体が見えないのは、かなり距離があるからだろうと カイムは判断した。

 ――討伐隊が来る前に ボスを残して全部仕留めてしまうのが最適解だ。どうせ不要になる物品だ、纏めて有難く頂こう。


 カイムは風魔法を使って 全員に、仕掛けていた睡眠薬を吸引させた。そして主犯を除く、他の賊 全員の止めを差し(勿論、自身の武器は使わない)、元から死体だった者の物も含め、全ての装備を剥がし 収納へ放り込んだ。金品や装飾品、武具 そして馬も全部頂く。

 ボスだけは裸で拘束し、放置した。

 拉致された者達は拘束を解き、その持ち物は全て奪う。この方が 何かあった時、野盗の仕業で済むからだ。

 ――彼等は被害者なんだよな、どうしようか……。


 被害者を 裸で放置するのは気が引けるので、バスタオルくらいの布を各人に被せてやろうかとの思いが浮かぶ。

 ――いや。それは あまりに不自然だ。野盗は そんな事をしない。


 被害者も再度拘束して、賊とは 別に纏めておく。

 ――思ったより時間を食ってしまった。

 そろそろ 討伐隊の気配も近付いて来たし、さっさと消えよう。


 少し離れた町で、馬 2頭を売却した。馬車が壊れたからと理由を付けると、簡単に買い取ってくれた。町に寄る度に 同じ方法で売却し、完売した。


 今、カイムが騎乗しているのは馬ではない。

 あの主犯が乗っていたモノを洗浄すると 赤く染められた色が落ちて、青銀色の皮毛が表れた。これは魔物、『銀馬』である。

 施行してあった従魔術を1度解除し、再度施行して自身で使う事にした(カイムは自覚していないが、実は この術工程、難易度が高い)。

 鞍は町で購入した物を使っている。


 ■■■


 『あの 教えて欲しいんだけど、表立って売れない物品を 買い取ってくれる店を知らないかな。結構な量が あるんだけど』

 『何をしたんだい』

 『野盗狩りをしてたら、何だかヤバい物を拾ってね。それを処分したいんだけど、何とかならないかな』

 アインスは 少し考えて答える。

 『ちゃんと こちらで処分するので、私に任せてくれないか』

 『助かる。今から送るので、準備を頼みます』

 カイムは 武器・防具、衣類、馬具、装飾品(自身で使えそうなものは除く)等、書簡と未解錠金庫以外の物 殆どを送った。


 『……これは。貴族の衣類だぞ。女性用の下着まである。みんな上等だが、どうやって手に入れたんだ』

 『全部 ちゃんと洗浄してるから問題ないよ。

 さっきも言ったけど、野盗が持っていたんだ。それ等は 流石に、簡単には処分出来ないと思ったんだよね』

 『良く私を頼ってくれた。確かに これは普通には処分出来ない物が多いな』

 『えっ、使える物もあるの』

 『宝石類は石だけを抜いて そちらに戻す。宝石は錬金術に使えるのだろう。他にも そちらに送った方が良いモノがありそうですね』

 『あぁ、確かにそうだった。宜しく頼みます』

 『任せて下さい』


 カイムは すっかり忘れていたが、確かに宝石類は錬金術の素材として使える、と教わった。高価なので、実際に使った事は無かったけれど。他にも 確かに、理論上は使えるが 入手が面倒だったり、困難だったりして使った事が無いモノは多い。

 ――それにしても、錬金術用素材の事を良く知ってるなぁ。


 それは、アインスがカイムのために 錬金術用素材について勉強したからである。

 誰にも知らせてはいないが、彼は 息子に対し、とても甘いのだ。



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