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奴隷商人の養子になって  作者: うたり
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(02)冒険者への道


 カイムは 今まで通り、実父が紹介してくれた 元冒険者達に教育を受けた。何せ年齢が足りていないので、これ以外では技術・技能を習得する方法が無かったからである。

 彼等への授業料は 実父が先払いしていたようだ。

 アインスは「とても残念です」と呟いた。


 この訓練は 今まで通り週に4日(月曜から木曜)、午前5時に始まり 午後6時に終了する。追加事項として、その夜は 午後10時まで商業の勉強だ。


 あるヒトの教師は 勉強開始に際し(カイム、5歳の時)「生活魔法以外は、卒業するまで使ってはならない」と訓戒した。

 「剣や弓くらいは良いのでは」

 「剣はダメだ。そうだな……、自衛用の短剣なら認めよう。

 弓は、魔法を併用しないなら使って良いが、直接攻撃は控えろ。あくまでも緊急時の、それも防御にだけ許可する」


 そして2日(土曜と日曜)は 冒険の実地訓練。

 これも実父からの継続だが、依頼料は、都度相手が変わるので 個別に払っていたようだ。

 これは組合を通していなかったようだ。

 「カイムです、宜しく お願いします」

 「こちらこそ、仲良くやって行きましょう」

 これからは 義父アインスが、冒険者組合を通し、低ランク冒険者に彼が随行する事を依頼したのだ。これは『冒険者見習い』という正式な立場となる。


 残りの1日(金曜)は 自由時間である。

 カイムは これを、冒険者には必要と思えないが、自身が興味のある勉強時間に充てた。

 教師により受講した内容を、より深く身に付けるために使う 自習時間も、それに含まれる。


 ■■■


 カイムの教師は ヒトだけではない。エルフやドワーフも複数いる。

 彼等は 素直な向上心に満ち、何にでも興味を示す 好奇心全開なカイムを大層可愛がり、依頼以外の技術や技能、知識を与えた。


 エルフは、本来なら同族以外には教えない秘術まで教えた。

 「この方が 普通の魔法より効率が良いからね、しっかり覚えておくと良い。こうすれば普通の魔法との区別も出来なくなる」

 「これ、本当に 僕が使っても良いモノなんですか」

 「構わないさ。今時いまどきの若いエルフは この魔法を知らないようだから問題ないさ。但し、ここを卒業してから使うんだよ」

 「分かってます。練習も ここでしかしないから、心配ないよ」

 「フフフ、良い子だねぇ。じゃ今度は弓術を教えてあげよう」

 「お願いします」

 「ほほう、普通の弓術は使えるんだね」

 「はい、初歩は 父から習いました」

 「じゃあ、魔法を絡めた弓術と、それが済んだら『従魔術』を教えてあげよう」

 「は、はい」


 ドワーフの教師も、本来の教育内容以外の技術を 惜しげなく彼に教えた。

 「これを知っておれば武器の修復に魔法は要らぬ。それに これも便利な技能スキルじゃ、知っておいて損はないぞい」

 「これって専門職の技術・技能だよね。本当に 僕が教えて貰って良いのかな」

 「まぁ、問題ないじゃろう。本物の錬金窯を使うわけでもないし、小物しか対処出来んからの」

 「問題が無いのなら、とっても興味ある技術だから 是非とも教えてほしい」

 「じゃが、あまり目立つ場所では使わんようにせいよ。一応 これでも専門技術じゃからのう」

 「分かってる。その辺りは しっかり配慮するさ」

 「よしよし。では『付与術』なんじゃが……」


 勿論、ヒトの冒険者も色々教えた。それこそ カイムに自覚はないけれど、秘伝や奥義に関する事まで。

 「中々筋が良いな。では こんな攻撃は どう対処する」

 「こう躱して……」

 「ダメだな、そこは この技が一番効率的なんだ。風魔法と併用すれば もっと素早く動けるだろ。短剣を併用すると もっと良い」

 「こう……、ですか」

 「そうそう、良いねえ。じゃ、こんな場合はどうする」

 「えっ、それは無理なんじゃ。

 いや、この前 習ったアレと同時に……」

 「おっ、やるねぇ。それじゃ この場合はどうだ」

 「ちょっと待って下さい。暗器と魔法を併用するなんて、普通の冒険者は使うのですか」

 「さぁ、俺が現役の頃には、はて……。まぁ、何人かは いたと思うぞ」

 「……分かりました、頑張ります」

 「おう、頑張れ。次、行くぞ」

 「はい」


 ■■■


 カイムの実地訓練には Eランクの冒険者が当たる。

 担当した冒険者は カイムから、大きな恩恵に預かっている。

 彼は、アインスから貰った 大容量の収納袋(技能の『収納』ではなく、魔法具である)を持っているため、採取依頼には とても便利であった。

 そして カイム自身も『冒険者見習い』になって、存外な利益を得た。


 冒険者組合には 関係者以外閲覧禁止の書庫がある。

 そこには各種薬草や鉱物、その他 多種多様な採取物。そして魔物や、脅威となる一般生物に至るまでの生態を網羅する、膨大な資料があった。

 そこを 冒険者見習いとなった事で、閲覧可能になったのである。

 勿論、エルフから習った高速・完全記憶術や複写記録用魔法具を用いて保存し、個人で いつでも使えるようにした。


 時には カイムも、Eランクだが ベテランの冒険者に同行して、魔物討伐を経験する事もある。

 殆どの討伐相手は、比較的 弱い魔物であった。だが 彼には、思ったより容易に対処出来そうに見えた(実際は、手出し出来ない)。

 それは カイムが、該当する魔物の生態を知っていた、少なくとも知識として しっかり理解していたからに他ならない。


 ある日、採取依頼(随行)中に魔物と遭遇した。

 この日 同行したEランク冒険者は、魔物に付いて調べていなかったようで、出会でくわしたスライムとゴブリンの小集団(ゴブリン8頭、スライムは22頭)に苦戦していた。

 カイムは見学なので、基本的に手を貸してはいけない事になっている。だが、同行者が危険な場合は、時々 生活魔法や弓で助勢した。

 実は 冒険者より多くの魔物を討伐していたりする。


 ゴブリンは、スライムより強いが、ある意味 戦い易い。スライムは戦闘力こそ低いが 柔軟性が高く、姿を眩ますのが得意なので、ゴブリンより面倒だ。

 カイムは 同行者に気付かれないよう注意して、スライムを中心に対処した。


 「ハァハァ、やっと終わった。参ったな、魔物が出るなんて思ってもいなかったよ」

 「これをどうぞ。軽回復薬ポーションです。体力が少しは回復しますよ」

 「ありがとう。君は、随分 準備が良いんだね」

 「収納袋がありますので、念のため 色々詰め込んでいます」

 「そうだったな。君の援護、とても助かったよ」

 「いえ、僕の弓では 足止めにしかなりませんでした」

 「やっぱり、俺 程度じゃ、魔物討伐は難しいか。薬草採取も終わっているし、さっさと帰ろうか」

 「それが良いですね」


 冒険者が帰る準備をしている。どうも魔石は回収しないようなので、カイムが全部貰っておく事にした。

 スライムの魔石も ゴブリンのモノも、品質は中程度だし 大きさも小振りだ。彼は これを錬金術練習用の素材(の一部)にする積りだ。

 倒した魔物を 冒険者が火魔法で焼却し終えたのを確認し、帰路に付く。


 町へ向かう途次みちすがら 緊張が解けた冒険者の口は、かなり軽くなった。

 聞くと『Eランク』には 細かい分類があるそうだ。E1からE5まであり、次がDになると言う。

 E1は町中まちなかの仕事で、本当に簡単な作業らしい。

 E2は、その難度が上がったモノだ。

 E3からは、町の外に出て採取する事が認められている。

 だが、町の周辺から離れるのは認められておらず、当日内に対処可能な仕事に限られる。

 E4が 彼のランクで、泊り掛けの採取が認められている。しかし、突発的な遭遇を除いては、魔物との戦闘は禁止だ。

 E5で、初めて本格的な魔物討伐が認められる。何でも このランクには、Dランクより腕の立つ冒険者も 結構いるらしい。

 Dは 野盗など、ヒトを討伐する事が出来る者の 最低ランクだ。E5との違いは 本当にそれだけで、護衛任務をするには(名目上は)最低でも このランクが必要となる。

 CからAランクについては 良く知らないそうだ。


 教師聞くと、Cランク以上には義務(断れない依頼)が生じる。『強制依頼』と『指名依頼』だ。その代わり収入は格段に増えるそうだ。そして 1番の違いは、Bランク以上になると、大商人や貴族からの依頼が多くなる。との事だった。


 町に戻り、組合に向かう先輩冒険者に、収納袋に入れていた 彼が採取したモノを渡す。

 それだけで依頼達成には十分 足りているらしい。

 現金化は しないが、カイムの取り分は 彼のモノより遥かに多い。これは アインスへの土産だ。



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