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プロローグ・昔話
むかしむかし、神という者が身近に感じられ、誰でも神になることができた時代。突然だが、その時代にこの世界は終わった。いや、死んだとでも言うべきだろうか。とにかく、今までの機能を果たさなくなり、この天体に生きている生物や無機物も含めた全てのモノが死に絶えていった。
隕石衝突や世界大戦あるいは生物災害
そんな、直接的に世界の終わりを想像させるようなことではない。
神が仕事をすることをサボったのだ
それだけの事で、世界は虚無空間に侵食されていった。世界中が絶望して、次々と自害や心中をする中、一人だけ諦めない者がいた。後に奇跡の魔術師と呼ばれた男……。
最後に残った島で、死に絶えて行く仲間の前で、奇跡の魔術師はこう言った。
「世界を救う、希望がある限り、俺が奇跡を起こしてやる!っー訳で、神のとこ行って一発殴ってくるわ。待ってろよ、みんな……!」
ふざけた調子で、神殺しを宣言したその奇跡の魔術師は、二度と虚無空間に包まれた世界に、姿を現すことはなかった。
奇跡などなかった。奇跡など起こらなかった。
それだけの話である。