バイエルン家は大騒ぎ
「神様がウチに降臨される、どうやって迎えれば良いのか」と父上が慌てまくっていた。ハンニバルは神様が訪問する用件を聞いて、思い切り渋い顔になっていた。
「神の願いを断るわけもいかないか」とポツリ言った。
よし、許可が下りた。私は内心でニマニマしてしまった。
エリザベートの部屋の近くに来たら、母上が前に立ち塞がった。「エマ、離れなさい」と言う。これ以上私が近づくと部屋の中にいるエリザベートが大泣きする。
「私ってエリザベートには会えないのでしょうか?」
「エリザベートが自分の感情をコントロールできるまでは、近寄らないでくれるかしら」
「そんなーー」
「彼女」のところに行ったら「姉上の死神のオーラが出ている限りエリザベートには近づけないので、頑張って修行して下さい」と言われた。山籠りをする、滝に毎日打たれて精神を鍛えると良いらしい。私はイアソーさんかってつっこんでみた。
「母上の未来も変わりました、確実なのは姉上のことが大嫌いなのは永遠に不変です」と言われた。良いよそれで。マア良くないけど。
父上がエミル様をお迎えする用意ができたと言って来た。父上の顔色がめちゃくちゃ悪い。様々な文献を読み漁って、あまり眠っていないよう。
「父上の顔色が良くなったらエミル様をお呼びしますので、父上は寝て下さいませ」
「そうか、それは有り難い」その後2日ほど父上は起きて来なかった。
エミル様がやって来た。護衛としてイアソーさんが、バイエルン家の屋敷の上には天空船が浮かんでいて間違いなく目立っています。
ハンニバルが天空船を見て海軍がほしいなあと言っていた。バイエルン家は内陸なので海がある領地ってたいていホーエル・バッハ系の貴族なのだけど、小さな内乱が終結して動乱が起こりそう。
「エミル様のご用件は存じておりますので、どうぞご自由にエマをお使い下さい」
「ハンニバル、バイエルン家は?」
「ハンニバル家は内乱が終わった後の復興に全力を尽くします」
「姉上でこの程度の内乱ならすぐに止められるでしょう」
「姉上は今や大聖女に成られていますから」
「私はそんなたいそうな者ではありませんよ」
「魔王を討伐した姉上が何を言っても世の中は納得しません。王家から第五王子とエリザベートの婚約披露の儀式を姉上がする様にと王命が下りました」
「あれは王家の神殿長の役割ではありませんか」
「エマ、天界の人たちは大して気にしないからやったら良いよ」と気軽に言ってくれるエミル君です。
「私は成り行きで聖女の称号をもらっただけで、神殿とかの儀式はまったくわからないです」
「じゃあ、エマと僕が一緒に婚約披露の儀式とやれば良い」
「王家のご先祖はエミル様を、その裏切った方ですけど」
「僕の子どもには変わりないし、子どもには反抗期ってあるでしょう、気にすることはないと思うよ」
そう言う問題ではなくて、現在ただいま信仰している神々とエミル君は対決してるので、王家としても困るのではと思ったりもするけど、私に儀式を行えと言う王家の責任だし、私は考えるのを止めた。
「第五王子がこれで次の国王に決定になった」とハンニバルが笑い出した。
「軍事力は最強のバイエルン家と大聖女と神の祝福された王子に国王さえ逆らえない、これは愉快だ」
私には政治の話は無理だ。
「ハンニバル、私はどうやって内乱を鎮めれば良いのかしら」
「姉上の軍が国中を巡れば内乱は鎮圧すれば、たぶん戦闘にはならないから」
「良かったら、僕も天空船で国中を周りたい」
エミル君は観光気分で言っているのがよくわかる。
「交渉とかはどうすれば」
「都に来て国王陛下の指示に従え、従えなければ従う者を領主にするとでも言えば普通は黙ると思うよ」
「姉上には文官がいないのか。それでは僕が信頼しているグレイを書記として姉上に同行させるので、交渉はグレイに任せれば良いよ」