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山頂にて、バイエルン家に神の降臨が決まる

 神様に道案内させるとは私も良い度胸をしていると思う。エミル様は踊るように軽やかに舞うように歩いている。舞の見本になるのでしっかり見ておく。


 霧が晴れてきて、国中が一望できる。ウエルテルは茫然としている。ギンムガンプ山の霧が晴れるなんてとブツブツ言っていた。


 ヴィクターは絵を描いている。ニコラとマリアは手を繋いで踊っている。



「綺麗だろう、この国は」とエミル様が嬉しそうに言う。


「とても美しいです」


「これで争いがなければさらに美しくなる」


「エマ、この内乱止めてくれないかな」


「木々が燃やされ、動物たちが逃げまどうのを早く終わらせたい」


「僕がやれば良いのだけれど、それをすると僕と天界の人たちとの戦争が始まって世界が滅んでしまう」


「私も内乱は止めたいのですが、政治がどうこうって言われてハンニバルと父上の許可が下りません」


「じゃあ、僕がご実家に行ってお願いしてみようか?」


「はい? ウチにエミル様が来られる?」


「ダメかなあ」


「光栄の極みですけど、イアソーさんはご承知でしょうか?」


「イアソーは僕のすることを止めたりしないから」


 そう言う成り行きでエミル様がうちを訪問することになったと山を下りてから父上に手紙を書いた。


 神様同伴なのでずっと私たちの周りだけお天気が良い。周りは猛吹雪なのに私たちは日の光を浴びながらハイキング気分で下山している。


 ニコラとマリアがエミル様にくっついて離れない。不敬なことをしないか心配だ。初代校長先生の石像はずっと私が背負っている。たぶん、みんな私の事なんて忘れたに違いない。


「エマさん、そろそろ僕が石像当番だと思うのだけど」と相変わらず私のことをエマさんと呼ぶヴィクターだった。忘れられてなかった。私はついニマニマしてしまった。


「みんな、お疲れ様でした。みんなに会えて楽しかったよ。しばらくは北の旧魔王城にいるので遊びに来てくれると嬉しい」


 今、何気に神様が魔王城っておかしな発言があった。


「エミル様、今は魔王城に滞在されているのですか?」

「そうだよ、彼らも僕の子どもたちだからね」


「この世界は僕が作ったのだから、困っている子どもたちを助けるのは当たり前だと思う」


 エミル様って童神なので、子どもたちと言われると違和感があるのだけれど。


「天界の人たちも魔族は苦手みたいで、ちょっかいを掛けてこないので丁度良いしね」


「じゃあエマ、ご実家の都合がついたら僕を呼んでよね」とエミル様は言って消えてしまった。


「まだ、下山してないのに行っちゃった、吹雪なのに」とウエルテルがブツクサ言っていた。


 今日はここで天候が収まるまで、岩陰にテントを張って、男子と女子で二手に分かれて、私たち女子もヴィクターの手伝いなしでちゃんとテントが張れた。マリアとニコラが登山って良いねと言い出した。


「山を舐めてはいけません。山に行くならウエルテルをリーダーにして行きましょう」って言ったらウエルテルが苦い顔をしていた。


 3日間そこで足止めされたけど、無事ギンムガンプ山から初代校長先生の石像を持ち帰った。初代校長先生の石像はけっこうあちこち削れていた。私のせいではない。


「エマ、ヴィクター、ウエルテル、マリア、ニコラお帰り」とローレンス先生が出迎えてくれた。予定より早く戻って来たので少し驚かれた。


「3年生の課題はすべて達成したので卒業は決定しました。そこでみんなさんを助教に任命しますので、後輩たちの指導をお願いしますね」そう言うとそそくさとローレンスさんは校長室に引っ込んでしまった。


 ユング君に尋ねると「僕は魔法が使えないのに助教でクラス担任にもさせられた」と嘆いていた。ユング君のクラスは学級崩壊中なので私が一緒にクラスを担当することになった。


 演習を一回したら学級崩壊はぴったりと止まった。ただその後生徒たちが私の後ろをぞろぞろ歩くので、迷惑している。昔悪役令嬢をやっていた頃を思い出してしまう。

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