エマの初陣
私は軍人になってしまった。部下はアンデットのゆきちゃんと灰色熊の子たち。軍団名は第七特殊軍団。軍団長は私、副官はゆきちゃん。ゆきちゃんに話したら、熊の世話係に大層な名前を付けてと笑い飛ばしていた。
ここはサーダン領、国内一反乱規模が大きい領で、叛徒の士気も高く独立運動も盛んな領に、私と灰色熊一頭だけがポツンといる。これで軍団と名乗るとはって、叛徒のみなさんに笑われた。見栄を張って熊10数頭を連れて行くと餌の補給が間に合わない。第一、熊一頭で十分な作戦だし、ハンニバルが問題なしって判断したのでこうなった。
私の仕事は軍団長なのに熊の餌係をしている。熊君は、私と「二人」だけなのが嬉しい様で私の顔を盛んに舐める。私は自分の香りがわからなくなった。
叛徒の数およそ1万人が私たちを包囲殲滅しようとしてやって来た。私はシールドで守られているし、灰色熊君は無双なので叛徒の数がガンガン減ってあっと言う間に数千人になった時点で叛徒のみなさんは撤退してしまった。
私に付いた二つ名は灰色のグリムリーパー、灰色の死神。ちょっとカッコいいかも。
イアソーさんがケガをしている叛徒の兵士は治療してやれと言うので、一人で歩ける程度には治してあげた。後は自由にしてほしい。
兵士のみなさんから拝まれた。「聖女様、ありがとうございます」って感謝してくれた。肩に乗っているイアソーさんのドヤ顔がウザい。
困ったことになっている。治療してあげた元叛徒の兵士のみなさんが付いて来る。
「みなさんは自由です。どうぞ故郷にお帰りくださいませ」
「この生命終わるまで聖女様のお供を致します」とまた拝まれた。困った。
使い魔にハンニバルにどうにかしてくれと伝言したら、返事は全員第七特殊軍団の兵士にする。補給部隊をすぐに送る。補給が終われば、オーディオと言う町を占領する様にとの命令書を使い魔が持って帰って来た。
「みなさん、私、軍事のことは疎いのでどなたかに指揮を任せたいのですが」
「それならハーベスト大尉が良い、大尉は公平だよな」
「ハーベスト大尉なら文句は言わないぜ」
「ハーベスト大尉さん、いかがでしょうか?」
「聖女様のご命令であれば断ることは出来ません」
跪かれた。肩に手を乗せてと
「ハーベスト大尉、あなたを指揮官に任命します」
「謹んで拝命致しました」
丸投げ完了しました。私はみんなに付いて行くだけ。
私は灰色熊に乗って、第七特殊軍団のみんなさんと一緒にオーディオの町に向かった。オーディオの町の門が開いている。これって私たちと戦う意思はないって事だよね。
「ハーベスト大尉、熊君と一緒に町の中を見てきます」
「偵察お願いします」とハーベスト大尉。ここは止める所ではないかとふと思った。
熊君に乗ってオーディオの町に入ったら、私たちが来る前に戦闘があったみたいで町の中は酷いことになっていた。
ケガをした人もいたので治癒のポーションで治療して回った。しばらくすると隠れていた町の代表がやって来て、食料が町の防衛隊に奪われたので、食料と多くの町の人が傷付いているので医薬品がほしいとお願いされた。
ハーベスト大尉からハンニバルに連絡して、補給隊をオーディオの町に寄越してもらう段取りをつけた。
私は町の空き家に診療所を開いて、ケガ人、病人の治療にあたって過ごした。
防衛隊が町の人を襲うっておかしくないか? と町の代表の人に尋ねると日頃から町の人に迷惑をかけていたので、バイエルン家の軍隊が来れば、町の人に裏切られると思ったらしい、町にあるほぼ全部の食料と医薬品を持って逃げた。
防衛隊と言う名の強盗ではないか。この町の叛徒の兵士の質は最悪だと思った。
ハンニバルが補給隊をオーディオの町に寄越した。補給部隊長から次の都市に向かう様にと命令書を渡された。叛徒の第二の首都、ハーデスと言う都市に向かえ、ただし、第一軍団、第三軍団と合流するまで動かない様にと書かれていた。
オーディオの町には、オーディオの町出身の兵士を中心に選んだ部隊を残して、本隊はハーデスの都に向かった。