母上の三つの願い
「一つ目はこの塔から出すこと、二つ目はすぐに発動する強力な魔法を教えること。三つ目は多数の動物を移動させることの三つでございました」
「私は母上様の願いをすべて叶えましたので、母上様が亡くなればその魂は私のものでございます」
「すぐに私のものになると思っていたのですが、残念です」
「ディアブロさん、私が母上に倒されるとは考えなかったのですか?」
「死者の国に行き黄泉の国の主人に会えるエマ様が倒されるはずがないでしょう。肩に治癒の化身イアソーがくっついているのに」
「ディアブロさん、イアソーさんが見えるの」
「見えると言うよりその存在を感じる」
「コイツ、私を見ないんだよ、初対面の時から私を見ない」
「今回はディアブロと言う設定かい? お前の厨二病は相変わらずだね」
「厨二病って言うなバカカラスが」
「確かに君には世話になった。ただ私はバカではない。勉強をしなかっただけだ」
「試験前になると三べん回ってカーとよく鳴いていたよな」
「ディアブロさんとイアソーさんは幼なじみ?」
「同級生」
「私とイアソーはクラスメイトでした」
「ディアブロは優等生で私は落ちこぼれだった」
そんなに誇らしく言うのはどうかと思いますけど。
「悪魔と神の化身がクラスメイトだとおかしいと思うのか? どちらも神の御使い、悪魔は人間の欲望を刺激してその心根を試す役割、外向的なものが好む役割だな。神の化身は神の代行者でいつ役目が来るのかわからないくらい仕事が来ないので、ボッチが好きなものが好む役割」
「イアソーは山籠りをしたり、滝に打たれているのが好きでした。御使いの作法とかの勉強よりも。試験前になると、私にノートを貸してくれと頼ってきました」
「三べん回ってカーと鳴くと、ディアブロがノートを作ってくれたので助かった」
「イアソーは私と真逆のタイプでしたの気が合いました」
私は何と言って良いのかわからない。
「ディアブロがダンジョンマスターに任命された時は本当に気の毒だった。それでダンジョンには凄い悪魔がいると言って回った。ディアブロが寂しい思いをしない様に」
「イアソー、君のお陰で数千年ほど寂しい思いをしたよ。怖がって誰も来なかったから」
「イアソー、君の考えなしは相変わらずで嬉しいよ」
「そうかディアブロ、嬉しいか? 私も嬉しい」
イアソーさんてド天然だ。
「イアソー、エマ様のことは頼むよ」
「任せておけ、心配するな」
心配で仕方がない。ディアブロさんは消えた。
「エマ、灰色熊の所に戻るぞ、そろそろゆき以外は限界だと思う」
カオリさんは休んでいた、ミカサも休憩している。現在無双しているのはゆきちゃんだった。灰色熊をぶん投げている。
「どうなっているのでしょうか? ゆきちゃんが無双してますけど。」
「ゆきの服を灰色熊が爪で破ったら、ゆきが怒り出してああなった。お陰で休憩させてもらっている」
「エマ様、あの灰色熊は反則だと思います。切断してもすぐに再生してしまい、数を増やしてしまい、ミカサお嬢様の足を引っ張ってしまいました」
「エマの方は母親と話せたのか?」
「はい、何とか今回は引いていただけました」
「残りの灰色熊は私が対応します」
「それは助かる、数が多すぎて私も魔力切れ寸前だ。初めての体験でワクワクしてる」
「ゆきちゃん、休憩して後は私がやるから」
「エマさん、このアホな熊が私の大切な絹の服を破りました、許せません」
「でも、今のあなたの姿は、乙女としてどうかだと思うよ」
ゆきちゃんは顔を真っ赤にしてカオリさんの所に走って行った。ほぼ下着姿だったから。
灰色熊は私に触れると消えて行った。私は今、生命と死を司る者として熊たちに対峙している。熊たちは前足で頭を抱えた、私に降伏したと伝えたいみたい。
私は灰色熊たちの飼い主になった。今はそれをとっても後悔している。餌代がバカ高い。この子たちってほどほどって言葉を知らないのか?
メンゲレ男爵の気持ちがよくわかったよ。何とかして、この子たちの面倒をバイエルン家でみてもらおう。個人ではこの子たちは飼えない。餌代で破産してしまう。




