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死者の国

 私は今、古代ダンジョンでも経験した事のない世界にいる。この世界には時間がない。正確に言うと時間が巻き戻る。


 今、私の目の前で2人の剣士が決闘をしている。1人の剣士が相手の胸を剣で差し貫いた。勝った剣士はその剣を空に向けて勝者のポーズを取った。するとまた最初のシーンに巻き戻る。それを何度も繰り返している。


 ここでは何も終わらない。この2人は永遠に決闘を繰り返している。この世界はもしかしたら、私が本来いるべき世界なのではと思う。私は永遠に死に戻りをし、永遠にその呪縛から逃げることはできない。私は輪廻の輪から外れた存在なのだろう。


「おや、珍しいね。生者が死者の国にいるとはね」

「ここは死者の国なのですか?」

「あんた、知らずにやって来たのかい」

「はい、何となくですが黄泉よみの国だと思っていました」

「黄泉の国は神の領域だよ、神に招かれた者以外入れないよ」


「私って死んじゃったんですね」

「イイヤ、死んではいないが仮死状態っていうやつか」

「あなた様はどなたなのでしょうか?」

「私かい、ここの管理人ってとこだね」


「あの2人の剣士がいるだろう。何万回に一回、負けるべき剣士が勝つことがあるのさ。そうすると2人とも動かなくなってしまうので、リセットする係だね」


「私、何ですけど、この後どうすれば良いのでしょうか?」

「それを私に尋ねられても困るよ、マア死者の国を見て回れば良いと思う。それがあんたがこの国で果たす役目かも知れないし、もしあんたが動かなくなったら、私がリセットしてあげるよ」


 管理人さんはそう言って去ってしまった。


 私は前に進むしかないのか? 後ろを振り向くと景色が変わっていた。前は洞窟、はたまた遺跡なのに、後ろに王宮が見える。多くの貴族たちが楽しげに語らっている。一人の貴族が私に手招きをしている。


 私は貴族をやめて庭師になるんだから、あそこは私のいるべき世界じゃないんだよ! 私は洞窟に向かって進んだ。後ろを振り返るともう王宮は見えなくなっていた。


 一羽のカラスが私の所に飛んで来た。何とはなくついて来いって言っている気がしたので、カラスの後をついて行った。


 一人の男性だろうか女性だろうか見る角度によって姿が違って見える。


「イアソー、生者を連れて来てどうするつもりなのか?」

「気に入ったので連れて来た、珍しい事もあるものだな、一人をこのむお前が」


「おい、そこの娘、お前は人間界の覇者に成りたくないか? 望むなら私が成らせてやっても良いぞ。ただし条件がある。死者の国に、年間一万人程度を送り込むこと。最近死者達も新入りが来ないのでヤル気をなくしてミスが多い」


「恐れながら、あなた様はどなた様でしょうか?」


「私か、死者の国の統括者、黄泉の国を治めるものとでも思えば良い」


「私は世界の覇者は望みません。私はお花を育てたりしとうございます」


「イアソー、この者と一緒にいたい。それは困る。お前がここからいなくなると病で死ぬ者も減るではないか」


「この娘は聖女なのに人を治せない、それがイアソーの誇りを傷付けると言うのか?」


「おい、娘よ、お前は聖女なのか?」

「はい、聖女ですが治癒魔法は使えません」

「娘、よくそれで聖女をやっているな」


「申し訳ございません。成り行きで聖女になりましたので」

「イアソー、久しぶりに笑った。成り行き聖女とは面白い」

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