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亡命生活

 私はヒノモトで暮らしている。表向きは儀式の練習すると言う名目で。実際は母上の手の届きにくい国に逃げて来ただけ。灰色熊対策と母上の「ディスペル」に対抗出来るまで私の亡命生活は続く。


 母上の居所はまったくつかめない。名探偵のレクターが幽閉塔に入った。レクターは「この世のものではないものが母上の逃亡を手助けをした、おそらく、母上は悪魔と契約を交わした」と断言した。


 私って死ぬかもしれない。私にも悪魔に知り合いはいる。平和を愛する善良な悪魔のヘヴィモスさんと、お茶を淹れてくれるだけの悪魔で執事のディアブロさん、どちらも戦力外の悪魔さんだったりする。


 私が、格上の母上の「ディスペル」を格下の私が「ディスペル」で無効化する事は無理。母上の魔法の欠点が克服された今、私に残された手段は逃げ回ることだけだ。


 ミカサにヒノモトに必ず母上が来るので、ヒノモトには迷惑はかけられない。ここから別の国に逃げると提案したところ、灰色熊については対策は立てられると言う。マア、しばらくは舞のお稽古でもすれば良いと、涙が出るくらい有り難い言葉を貰った。


 絶対に逃げようとその時、私は固く決心をした。


 今日も私は枕を涙で濡らしている。前回にも増して舞のお稽古が厳しい。頭の中はグチャグチャ、足はパンパンで腰は痛い。


 普段着から「キモノ」を着ることになった。動きにくい。襲われたらすぐに逃げられない。と言う事で、淑女のする事ではないが、カオリさんにお願いして「ニンジャスーツ」を用意してもらい常時「キモノ」の下に着用している。襲われた時には「キモノ」を脱いで「ニンジャスーツ」で逃げる。今の私に出来る事は逃げ回ることだけ。


 灰色熊対策の結果が出た。ウインドミルの七連射で致命傷にはならないがかなりのダメージを与えられる。ただ再生能力も有しているので、特大のファイアボルトを放って一気に灰色熊を燃やさないといけない。


 灰色熊三体で私は確実に死ぬと思う。魔力が持たないから。


「エマ、お前に母親の生命を奪える覚悟があるか?」

「ありません」と即答した。


「お前は死ぬぞ」


「でしょうね」


 私は母上に一番似ていると思っている。なので母上の気持ちも一番理解出来る。侯爵家から公爵家に陞爵しょうしゃくした今、母上には生きる目的がない。あるとすれば、私や父上やハンニバル、母上に逆らった者を殺害することくらいしかない。


 そう、母上が狙うのは最初に逆らった私からだ。どうしてって私ならそうするから。


 カオリさんが、神殿に行くようにと行って来た。途中まではカオリさんが付いて来てくれたけれど、この扉の向こうにはカオリさんは入れないと言う。私一人で入る様に言われた。


 扉を開けると冷たい空気が肌に当たる。扉の中に入ると薄灯うすあかりが着いた。振り返ると扉は消えていた。私の全身は冷気をまとっている。体温が奪われる。私は薄いシールドを張って体温が奪われない様にした。


 ここって「黄泉よみの国」かしら。生きものがいると言う感じがしない。私は薄灯の中歩いている。後ろを振り返ると歩いて来た通路はなく壁になっていた。前だけを向いて私は歩いた。


 前方に壁が見えた。後ろも壁。閉じ込められた。もしかしたら抜け道があるのかもと、精神を集中すると、私は私を見ていた。私って幽体離脱しているのかしら。それとも死んじゃったのかなぁ。


 私の体の前には壁があるけど、私の前には壁はない。自分の体を放置して前に進むのは心配だったりする。戻って来たらネズミにかじられていたら嫌だなぁとか思った。


 私は体を置いて前に進むことにした。ここってGもネズミもいないことを祈って、前に進んだ。奇妙な植物が生えている。枯れてる様でいて枯れていない。触ると砂になってしまった。振り返ると元に戻っている。

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