調査継続命令そして運動会
イジメ調査の報告書をリヒャルト弁護士に送ったら、もう少し初等部にいてほしいと返事が返って来た。
ハイディが父親に手紙を書いたそうな。その内容は、私のことがとても気に入ったのでもうしばらくクラスにいて欲しい。で、ハイディの父親が調査継続名目で追加料金を支払った。そう言う事で私を事務所に戻せない。頑張って調査を継続する様にって。私は一体何を調べたら良いのだろう? ハイディのお友だちになれば良いのだろうか?
よくわからないけれども、私は貴族院初等部にまだいないといけないらしい。私には、ハイディ以外誰も近寄って来ない。伯爵令嬢の取り巻きたちも私の近くには絶対に寄って来ない。
「エマの魔力量って桁外れよね」
「そんなことはないと思うわ」
古代ダンジョンに潜って生還できた程度の魔力量だと思う。
「私たちが土魔法勝負に勝てたのってなぜだかわかっている?」
「伯爵令嬢の取り巻きたちが自分たちの魔力量がわからずに、砂ゴーレムを作ったから」
「残念でした。誰かさんがとってもたくさんの砂ゴーレムを一人で作ったので、負けずに作ったからでした」
「私が大喜びで砂ゴーレムを作り過ぎたからなの?」
「エマは規格外だから」
「いえいえ、今は規格外かもだけど、大人になれば私は並みの並みです」
運動会と言う「儀式の日」が近づいて来た。「素晴らしい運動会」にするために、授業のほとんどを運動会の練習にあてている。
国の根幹をなす身分制度を崩すことはできない。今年は貴族院初等部に王族がいないため、貴族界のトップたる公爵家の嫡男のクラスが優勝するシナリオが運動会では用意されている。
私は目立ちたくはない。運動会に当然両親は来ない、出場種目は誰も走りたがらなかったグラウンドを4周をする「長距離走」になった。
「エマ、グラウンド4周は大変ね」
「うん、4周で終わりなんだね」
「ハイディはリレーが大変ね」
リレーは花形競技なので選手は家の身分で選手が決まる。いかに華麗に走る姿を見せるのか、その演技を競う競技がリレー競技だ。間違っても早く走ってはいけない。
リレーの勝者は公爵家の嫡男になっている。嫡男君はいかに華麗にテープを切るのかと言う練習を繰り返し行っていた。
ウチのクラスのアンカーは伯爵令嬢をハイディが推薦して決まった。最後に公爵家の嫡男に抜かれて悔しがる演技が必要な重要な役だったりする。
本当にくだらない。
運動会当日、満面の笑顔のミカサがいた。そして少しやつれた様なカオリさんもいた。両親の代わりに大変な人たちがやって来た。
私は思わずため息をついていた。
「エマ、どうしたの」
「ハイディ、私の知り合いが来てるの。かなり厄介な人なの。運動会が心配になっただけ」
「エマ、どう言う事なの」
「ハイディ、私たちにできる事はこの運動会が無事終わるのを祈る事だけよ」
「全然、お話が見えないわ」
言っても無駄だと思うけど、昼食の時に一応釘は刺しておこう。これ以上何もするなと。て言うかパーティでもするのか、ミカサ、あれだけたくさんの食材を積んだ荷車と料理人たちを引き連れて来るし、どういう神経をしているのか、まったく私には理解出来ない。めちゃくちゃ目立っているよ。
「あのお方は確かヒノモトの国の姫君だと思うが」と誰かの保護者が言っている。保護者、教職員の視線がミカサに集中している。